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『D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』(佐々木康裕・著)のレビュー

コロナウイルスが世界中で猛威を奮っている影響で外出する人が減り、経済が停滞している昨今ですが、尋常ではない影響を受けているのはリテール(小売)です。

もちろん、悪影響は時間差でほかの業種にも及ぶことが予想されますが、いかんせん、小売というのは店舗にお客さんがたくさん来てくれないと成り立たないメカニズムですから、仕方がない側面もあります。

そして、このコロナの一件は「リテール・アポカリプス(小売の終焉)」を早めることに繋がるかもしれません。

もともとAmazonや楽天といったECサイトの発達で、買い物事態をネットで済ませてしまう人も増えているほか、最近ではこの本で紹介されている「D2C」も増えているからです。

というわけで今回は、新たなブランド戦略としての「D2C(Direct to Consumer)」についてまとめられたこちらの本を紹介していきましょう。

D2Cという言葉から単純に受ける印象としては、単にメーカーが卸売会社や小売店を中抜して最終的な消費者と直接つながる業態のように感じるかもしれません。

ただ、それは間違いで、ただオウンドメディアをや自社ECサイトを作ればD2Cになれるというわけではないのです。

D2Cブランドが提供するのは「ライフスタイル(世界観)」であり、商品やサービスの機能価値ではありません。

そして、消費者との関係性も「お客様」ではなく、「仲間」として扱うのです。

たとえば、マットレスを販売するCasperを見てみよう。同社をより深く理解したければ、Casperを「マットレス屋」と捉えてはいけない。
CEOのフィリップ・クリムはこのように言っている。
"Nike make active lifestyles appealing and Whole Foods popularized bealthy eating, and we think the third piller of wellness is sleep."
「Nikeは、運動をするアクティブなライフスタイルを魅力的なものにし、Whole Foodsは健康的な食生活を誰もが手に届くものにした。運動、食事に加えて、睡眠がウェルネスの第3の柱になる」
Casperは、睡眠を通じて新しいライフスタイルの実現、さらに言うと、新しいカルチャーの創出を目指している。

彼らが提供しているのは単一の「モノ」でも「コト」でもなく、ライフスタイルそのものなのです。

ただ単に機能価値だけを提供すると、それはすぐに競合他社との争いになりますし、そもそもそうした機能価値の切実なニーズは、いまの社会にはほとんどないでしょう。

とはいえ、自分たちの提供するライフスタイルを人々に理解してもらうのは、商品の機能価値を説明するよりもずっと大変です。

そこでキーワードになるのが、本書のサブタイトルになっている「世界観」と言う言葉であるわけですね。

この「世界観」という言葉は、これからのビジネスでは欠くべからざる要素の一つになるだろうと思います。

先日読んだこちらの本も、同様です。

ちなみに、山口氏と水野氏の対談のなかで、豊かになるほど意図的に不便さを求めるようになるというところがありました。

これに関しては、やっぱり最近読んでいたらSF名作『虎よ、虎よ!』でも同様の表現があったのを思い出します。

『虎よ、虎よ!』の世界では「ジョウント」というテレポーテーションを人々が普通に使える世界で、通勤などはジョウントで行います。

ただ、本当に富裕層の人は「ジョウント」あえて行わず、前時代的な古い移動手段である「自動車」などを使ったりするのです。

これはなかなかおもしろいことです。

世の中があまりにも便利になりすぎると、逆に不便さが価値を持ってくるようになるということですね。

話をもとに戻しましょう。

D2Cブランドが対象としているのは、おもにミレニアル世代(1981~1997年生まれ)とZ世代(1998~2016年生まれ)です。

この世代では、次のような消費特性があります。

・古いブランド全般、マスメディアを信用しておらず、本物であるか、社会にとって意味があるかを重視する

・自分が所有しているものではなく、「自分の行動」こそが自分を表現すると考える

じつは私もミレニアル世代なのでわかるところが多いのですが、ある商品やサービスを購入して使うということは、その企業をサポートしているという意識が少なからずあるように思います。

つまり、どれだけ素晴らしい製品・サービスだったとしても、それを提供している企業がなんか胡散臭いとか、悪いことをしている感じがあると、使いたくないなあという感じになるわけですね。

世界観を伝えると、ブランディングするというと、なんだか小難しいことのように感じてしまうのですが、これは要するに「商品・サービスの良し悪し」と同じくらい「誰が、どんな目的でその商品・サービスを生み出したのか」ということを重視する人が増えてきたということなんだと思います。

これまでの企業はそこを伝えてこなかったことが多くて、そのために消費者がその企業を応援したいと思える材料がなかったのです。

それをもうちょっと作ったほうがいいよね、ということですね。

私も実用書をつくっている人間としてはなかなか考えさせられるものがあります。

一冊の本として役に立つ情報が乗っていることはもちろん、「なぜその著者はその本を書いたのか」「この本を人々が読むことでどういう世界を実現したいのか」ということを伝えたほうが、きっといいのでしょう。

この世界観をつくるという考え方は、個人にも当てはめることができると思います。

自分という人間が提供する機能価値よりも、自分の行動原理や行動哲学など(こういうのをキャラクターと称してもいいと思います)を確立して、それを相手に伝えられたほうが、協力してもらえるかもしれません。

とにもかくにも、世界はいま過渡期に入っています。

それぞれの時代、世相に合わせてしなやかに生きたいもんですね。


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ありがとうございます~!
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都内で働く書籍編集者。 読んだ本の備忘録的な解説的な何かを書いています。 基本的にブログと同じ内容の共有です。 ブログ http://ada-bana.hatenablog.com/ 読メ https://bookmeter.com/users/577113

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