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成長期のスポーツ選手に知って欲しい身体ケアの話03【疲労回復と食事】


普段は、スポーツ管理栄養士さんにお任せしている分野なのですが、成長期の皆さんには、優先的に知ってほしい基礎分野なのでこちらでご紹介します。



食事の構成

身体自体の調整を行いつつ、疲労を回復し新たな細胞を作っていくためには、材料となる食事のコントロールが大切になります。成長期のスポーツ選手にとっては、大人以上に食事での支援が大切です。

毎回の食事構成を考える上では、

主食
主菜
副菜
牛乳・乳製品
果物

を揃えられるのが理想です。
小中学生は、給食の献立表が一つのお手本になりますので、参考にしてみましょう。


栄養バランス

食事の中心は「何を食べるか?」になります。好きなものを好きなだけ食べるのが良いわけではなく、疲労の回復と、体つくりの両面に必要な食事を準備する事が大切です。

その際に私たちの理解を助けてくれるのが、「栄養素」です。食べ物を役割ごとに分類しているため、体が必要とする要素に合わせて、種類を選択し、量を整理して考える事ができます。

基本として押さえておきたい栄養素は、5つのグループに分けられます。

  • 炭水化物

  • タンパク質

  • 脂質

  • ビタミン

  • ミネラル

参考URL(ハイパフォーマンススポーツセンター)



炭水化物



お米や、パンに代表される主食として多く摂られる栄養素です。
体内に吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化吸収されずエネルギーにならない「食物繊維」とに分けることができます。

糖質は、体内で分解が進むと小さなブドウ糖にまで分解され、消化管から吸収されます。吸収された糖が各細胞に運ばれると、エネルギー源として活用されます。

特に、脳ではブドウ糖だけがエネルギー源として使われるため、糖の不足が集中力の低下や、記憶の働きへ大きく影響を与えます。

糖の補給は、筋肉組織でも必要で重要です。筋肉中には、グリコーゲンと呼ばれる形で貯蔵され(筋グリコーゲン)、強度の高い運動を実施する際に活用されます。

力強い接触プレーや、全力でのスプリント走を連続して実施するような局面で必要とされ、また筋疲労のリカバリーとして運動後にできるだけ時間をあけずに、補給する事が勧められます。

食物繊維は、小腸で消化・吸収されずに、大腸まで運ばれていく食品です。繊維と書かれるので、細い糸のように思えるかもしれませんが、実際はサラサラしているものや、ネバネバしたものもあります。

人の消化酵素で消化されない食物中の成分を食物繊維と呼ぶため、炭水化物に分類されますが、どちらかと言えば、腸内細菌に利用されて大腸内の環境を改善することを期待して食べられる栄養素だと言えます。



タンパク質



身体の細胞を構成する(修復する)材料として用いられるのが、タンパク質です。
食事から摂られたタンパク質は、消化され吸収される時にはアミノ酸と呼ばれる物質まで変化してから取り込まれます。

このアミノ酸が使われる事で、筋肉や骨、血管や臓器が作られます。さらに、免疫機能を司るホルモンや酵素といった反応物質の材料もアミノ酸から作られているのです。

アミノ酸の中には、体内では合成されない、または合成されても必要量に足りないアミノ酸があります。これらは、必ず、食事から補給する必要がある(必須アミノ酸)ため、食事におけるタンパク質の重要性は高いです。

タンパク質は、「プロテイン」とも呼ばれるため、サプリメントとして知っている人も多くいるかと思います。プロテインが社会的な知名度を上げたこともあり、タンパク質摂取は、プロテインでないと取れない、、かのような思い込みをされる方が見受けられます。

しかしながら、心配せずとも私たちの身の回りにある食材、日常の食事で出てくる食品群の中でタンパク質は十分補える量が備わっています。多くは肉類、魚類、植物性だと豆にも多く含まれていますので安心してください。

また、タンパク質も炭水化物のようにエネルギー源として使われる側面があります。

これは、本来なら炭水化物から補給されるはずのエネルギーが、空腹を続ける無理なダイエットや、糖質を極端に抜く食事を続けることで、エネルギー摂取不足が慢性化する際に発生します。

せっかく鍛えて大きくした筋肉の分解(異化)が発生するのは避けたいところです。


脂質



美容でのダイエットや減量を考える際に、真っ先に思いつくのが脂質(脂肪)ではないでしょうか。

否定的なイメージを持たれやすい脂質ですが、その役割は大切で、炭水化物やタンパク質と同じように、身体の中でエネルギー源として使われます。

また、細胞膜やホルモンの材料としても使われるほか、脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割もします。

体内で蓄積される際には、皮下脂肪として蓄えられて体を急激な温度差から守る働きをします。


ビタミン


ビタミンは、体の機能を調整し正常に保つのに必要な有機化合物のことを指します。上記のようなエネルギー産生を行う栄養素と比べると必要量は微量ですが、複数種類が存在し、そのほとんどが体内で合成することができないため、食物から摂取する必要があります。

特に水に溶ける水溶性のビタミン、油と共に吸収、活用される脂溶性のビタミンの区別があります。

複数種類あるビタミンですが、これらは相互に関わり合いながら反応に繋げていくため、「ビタミン群」として複数を一緒に摂取していく事が大切になります。

また、水溶性・脂溶性の違いがあることから、調理の仕方によって摂取しやすいタイプがあることも考慮しましょう。


ミネラル



ミネラルは、無機質ともいい、人の身体を構成する元素(酸素・炭素・水素・窒素)以外の総称です。ビタミンは、有機物であるのに対して、それ以外のカルシウム、鉄、ナトリウムなど16種類ほどをミネラル(無機質)と呼びます。 
主に、骨や神経伝達物質の材料として活用される栄養素です。

いずれも、体内で生成する事ができない物質のため、食事から摂取しなければなりません。


食事量と必要なエネルギー

栄養素の役割が理解できた上で、これを「どれぐらい食べるか?」といった量に着目していきます。ここで参考になるのは、「摂取カロリー」です。

人は、スポーツをする、しないに関わらず、日常の生活の中で、生きていくための基本的な生命活動をしなければなりません。

この生命活動自体を維持することにもエネルギーが必要となり、この活動の際に必要なエネルギー量を基礎代謝量と呼びます。

この最低限必要とするエネルギー量をまずは確保し、そこに加えて、スポーツ活動で消費し回復するために補うエネルギー量を求める必要があります。

スポーツ活動で消費するエネルギーは、年齢、性別、種目の違いによって変わります。さらに、競技レベル(初心者〜トップレベル)によっても異なるので、やや難しい部分もあります。

ここでは、「身体活動レベル(PAL)」を設定して、基礎代謝量の何倍のエネルギー消費になるか?と考えるのがやりやすいところです。

ご家庭にある体組成計(体脂肪計)からでも考えられるので参考にしていただければと思います。

1日の摂取エネルギーを考える



PFCバランス


さらに、必要エネルギー量の中身について、どの栄養素を?どの程度の割合で補うか?を考えると、必要な食品の選択と量の確保が決まってきます。

エネルギー産生を担ってくれる、タンパク質(Protein)、脂質(Fat)、炭水化物(Carbohydrate)の3種類に注目してバランスを考えるのが基本となります。

エネルギー産生栄養素の摂取比率のことをPFC比率といいます。

理想のバランスは
タンパク質:P 15%(13-20%)
脂 質 :F 25%(20-30%)
炭水化物 :C 60%(50-65%)

程度と言われています。


食事タイミング

食べ物は、口にしてから消化→吸収、その後に体内での反応に進みます。どんなに栄養バランスの良い食事を取ったとしても、この順序は変えられません。

疲労を回復し、新たな細胞を生成するためには、身体が回復反応をおこなうタイミングに、十分な栄養素が補完されている事が必要です。

十分な量と栄養バランスを整えた食事をタイミングよく摂れる様計画する事が鍵となります。

消化速度、吸収速度は、食品によって異なる、調理方法によって異なるので一概には言えませんが、油分の多い食品、調理をしたものは少し時間がかかります。

また、水溶液や咀嚼が不要の物の方が、消化、吸収については効率が良いことも多いでしょう。

運動によって消費したエネルギーや、疲労した筋肉組織にタイミングよく絵用を届けることを考えた場合、

運動(練習)の終了時から30分以内には、糖質とタンパク質を中心とした食事を多少なりとも摂取するのがおすすめです。

逆に、就寝直前に食事をしてしまうと、消化吸収の反応が行われるために、睡眠の質が下がる可能性があるため、お勧めできません。

食事と睡眠との間には、2時間程度あけてから休まれるのが良いでしょう。



(参考文献)
・公認アスレティックトレーナー 専門科目テキスト 3コンディショニング /公益財団法人日本スポーツ協会
・公認スポーツ指導者養成テキスト共通科目1/公益財団法人日本スポーツ協会
・リカバリーの科学・スポーツパフォーマンス向上のための最新情報/編集:Christophe Hausswirth, Iñigo Mujika 監訳:長谷川 博(広島大学大学院総合科学研究科)山本 利春(国際武道大学体育学部)
・日本トレーニング指導者協会トレーニング指導者テキスト(実践編・理論編)大修館書店
・NASM Essentials of Corrective Exercise Training: First Edition .2013
・NASM Essentials of Sports Performance Training .2018/1/22
・スポーツ医療従事者のための本格フロッシング/スヴェン・クルーゼ, 高平 尚伸他 | 2020/7/20


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