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#12. 「なんでも自由にしていいよ」と言われて戸惑うのは、なぜ? 〜目標を立てるチカラ〜

「人生の目標は?」と問われた時。やりたくないことは山ほどあるのに、やりたいことがすぐに見つけられないのは何故? というお話です。

死人の目標

「やけ食いをやめたい」「タバコをやめたい」「厄介な人間関係を断ち切りたい」。いろいろ悩みのある方は、こんな目標を立てることはありませんか?

ある感情を抑えたり、行動を取らないようにすることも、立派な目標かもしれません。でも、何か、後ろ向きな感じがしますよね。すごく「生き生きした人生の目標」ではないですね・・ どうしてでしょう?

この手の目標は、「死んでからの方が達成しやすい、死人の目標」だから、という考え方があります(Harris, 2007)。確かに、死んでしまったら、ご飯は食べないし、タバコは吸えません。周りとの人間関係も、強制的に立ち切れますね・・・

生きているうちに、死人の方が達成しやすい目標に取り組むのは、ちょっとどうかなあ・・という感じでしょうか。

生きている人間の目標

では、どうすればいいのでしょうか? 「やけ食いをやめたい」「タバコをやめたい」「周囲との関係性をよくしたい」という訴えが切実な場合もありますよね。

そこで登場するのが、魔法の杖。 え? ハリーポッター??

少し騙されたと思って、こんな想像をしてみてください。

「ここに魔法の杖があって、この杖を振ると、今まであなたをずっと苦しめてきた考えや気持ちから解放されます。すっかり自由になって、何でもできる魔法の杖です。何をしても、無条件で周りの人たちは、あなたに賛成してくれます。そうしたら、何を始めますか? 今よりもっとやりたいことは何ですか? 他人への接し方はどう変わりますか?」

この「魔法の杖」のエクササイズは、やけ食い、タバコ、面倒な人間関係にまつわるあれこれは置いておいて、その先の目標を探す手助けをしてくれます。例えば、「やけ食いやタバコでストレス発散するのではなく、趣味のゴルフを楽しんで、友達と楽しい時間を過ごしたい」など、生き生きした目標に置き換えられるかもしれません。

自由のパラドックス 

「魔法の杖」のエクササイズは、私たちが、自由を謳歌できるように導いてくれます。でも、「魔法の杖」のような発想がないと、つい、現実的な制約や悩みばかり考えて、自由な目標が出てこないこともありますね。どうしてでしょう?

人間は、もともと自由なはずなのに、知らない間に、自らの「自由の権利」を放棄しているようです。エンリッヒ・フロムという心理学者が「自由からの逃走」という著書の中で、次のように主張しています(Fromm, 1941)。

・ 現代人は、何かと社会的制約や世間の評判に縛られ、不自由を感じる。その「束縛から逃げたい(Freedom from 〜)」と思い、それが自由と思い込んでいる。

・ でも本当に、なんの制約もなくなると、かえって不安になる。結局、国や強い権威の力に従って安心しようとして、自由を放棄している。

・ 本当の自由は、人目や制約に関係なく、何かを「希求する(Freedom to 〜)」ポジティブな性質のもの。これを自分の意志で判断し、行動に移し、責任をとることで、自由になれる。

どうでしょうか? 自由(Freedom to)を手に入れることは、個人の自律性に関係しているようですね。

あなたは、魔法の杖で何をしたいですか?

PS. 記事に関連する個人的なエピソード、ご意見・ご感想をお待ちしています。

--本記事のイラストは、freepikよりライセンスを取得済みのものです--

Fromm, E. (1941). Escape from freedom. New York: Farrah & Rinehart

Harris, R. (2008). The happiness trap based on ACT: A revolutionary mindfulness-based program for overcoming stress, anxiety and depression. London: Robinson.

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