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読書と散歩好きな会社員 / facebookグループ「読書を通してコミュを楽しむ会」管理人

最近の記事

本を読むということ、映画を観るということ

突然の雪には驚いた。 我が家の梅が咲く頃はなぜか毎年のように雪の日がある。 それも当たり前か。関東では梅の咲く2月が一番雪が多いのだから。 梅といえば先週末に小田原の梅林に行った。 この先も、あっちでこの花が見頃だと聞けば出かけ、 こっちで地元民おすすめのグルメがあると聞けば出かけていく。 それは一種のカミさん孝行のようなものだと思っている。 車を運転すること自体はあまり苦にならない。 むしろ最近になって以前より運転を楽しんでいる。 走り屋のようにドライブその

    • 『言語が違えば世界も違って見えるわけ』 ガイ・ドイッチャー

      最初にハードカバーで発行されたのが2010年というから、もう10年以上も前になるのか。当時新聞広告を見て、欲しいと思ったけれど、その時期は長期出張中のホテル暮らしをしていて、立ち回り先の書店にはなく、ネットで注文しようにも送付先をどう指定するか分からず、で結局買っても荷物になるから、と諦めたのだった。少し前にハヤカワで文庫化されたの機にふたたび話題になっていたので、図書館で借りてきた。 言葉が思考に影響を与えるか、という疑問は以前から持っていた。 デジャヴ、という言葉はフ

      • 年末年始に挑んだ原典読破の挑戦 #1 (The Complete Sherlock Holmes)

        Netflixでベネディクト・カンバーバッチ主演のBBCドラマ『SHERLOCk/シャーロック』を何話か観て、この年末年始に原文で読破しようと思い立った。 マルティン・ベックも5作目『消えた消防車』待ちで、他の図書館予約の本も来るのはまだまだ先になりそうで、この長い休み期間中に何を読もうかと迷っていたけど、ドラマに背中を押してもらった形だ。 Kindle版では幾つか全集が出ているが、原著者のサー・アーサー・コナン・ドイルは1930年没で既に著作権が切れてパブリック・ドメイ

        • ハインリヒ・ハラー『セブン・イヤーズ・イン・チベットーチベットの七年』

          ブラピ主演映画の原作本だが、映画の20倍は面白かった インドで戦争捕虜となったオーストリアの登山家は、収容所を脱走し、想像を絶する過酷な旅のはてに、世界の屋根チベット高原の禁断の都に漂着する。そこで、若き日の14代ダライ・ラマの個人教師を務め、数年を共に過ごす。 こう書くと、この冒険記の主眼が、ダライ・ラマとの邂逅にあると思うかもしれない。そこがチベットでの暮らしのハイライトであることは間違いないが、この本はハラーの物語であって、ダライ・ラマの物語ではない。 実際ラサで

        本を読むということ、映画を観るということ

        • 『言語が違えば世界も違って見えるわけ』 ガイ・ドイッチャー

        • 年末年始に挑んだ原典読破の挑戦 #1 (The Complete Sherlock Holmes)

        • ハインリヒ・ハラー『セブン・イヤーズ・イン・チベットーチベットの七年』

          アリス・マンロー『善き女の愛』

          ノーベル賞受賞の”短編の女王”による本作は、その名に恥じない傑作だった。 8編の短編が収められているが、分量以上の重みがある。それは登場人物達の人生がしっかり描かれているから。 どうしてこんな限られた記述で、その人の暮らしぶりや生活の重みがこんなにずっしりと鮮やかに描けるのだろう? 例えば、表題作”善き女の愛”。 訪問看護婦と彼女が担当する終末期の女性患者とその夫がメインの登場人物なのだが、それ以外の人物(例えば、冒頭で沼に沈んだ自動車を発見する三人の少年)にも、きち

          アリス・マンロー『善き女の愛』

          原田マハ『リボルバー』

          あらすじ パリ大学で美術史の修士号を取得した高遠冴は、パリの小さなオークション会社CDCで勤務している。そのCDCに、ゴッホが自殺を図った時に使用したという拳銃が持ち込まれた。 真贋を確かめるため冴は、調査に乗り出す。 ゴーギャンとゴッホの間に何があったのか?リボルバーは何故今になって持ち込まれたのか?ゴッホの死は本当に自殺だったのか、それとも? 調査を進めていくと、そこにはゴーギャンの苦悩と彼に関わった人々の切ない想いが幾重にも重なっていた 感想 アートの舞台裏をフィ

          原田マハ『リボルバー』

          北村英哉・唐沢穣編 『偏見や差別はなぜ起こる?』

          社会心理学者が偏見や差別が生まれる心理メカニズムを解説し、現実の諸問題に適用した最新の成果とアプローチを紹介する一冊 普段は小説やノンフィクションしか読まないのだけれど、最近自分が思っていることが、知らず知らずのうちに差別的な考えになっているんじゃないかと不安に感じることがあって、それならば、何が差別で何がそうででないのか専門家に聞いてみよう、と思いたって図書館から借りてきた 「ステレオタイプ」=集団によく見られる性質を、集団に属する個々のメンバーにも当てはめること

          北村英哉・唐沢穣編 『偏見や差別はなぜ起こる?』

          ジュンパ・ラヒリ 『その名にちなんで』

          静かに胸に染み入るような物語に、日曜の午後から真夜中まで浸りきってしまいました 主人公のゴーゴリは、青年時代にインドからアメリカへ移住した両親の元、アメリカで生まれたインド系(ベンガル系)移民の二世 「ゴーゴリ」は父アショケの好きな作家から取った愛称ですが、その裏には父がインドを去る決意をしたある事故の記憶があります 「ゴーゴリ」という愛称で表される、インド人としてのアイデンティティーと、彼が後から自分で付けた「ニキル」という正式な名前で表される、アメリカ人としてのアイ

          ジュンパ・ラヒリ 『その名にちなんで』

          デイヴィッド・ベニオフ 『卵をめぐる祖父の戦争』

          夕食後から読み始めて、真夜中まで450ページを一気に読み切ってしまった。それくらい面白かった。 あらすじ 作家デイヴィッドはコラムの題材にするため祖父レフの戦争体験を取材する。そして1942年の最初の一週間に祖父が祖母と出会い、親友ができ、ドイツ兵二人を殺した出来事を聞く。 ナチス包囲下のレニングラード。死んだドイツ兵からナイフを奪ったことで捕まった十七歳のレフは、ソヴィエト秘密警察の大佐に命じられ、娘の結婚式のための卵一ダースを調達してくることに。期限は一週間。包囲下

          デイヴィッド・ベニオフ 『卵をめぐる祖父の戦争』

          劉 慈欣(リウ・ツーシン) 『三体』

          ヒューゴー賞受賞の話題の中国発SF小説。 あらすじ 文化大革命で父を惨殺された科学者葉文潔が前半の主人公。反体制の烙印を押され大学の籍もなくし、失意の中、辺境の開拓事業に参加していた彼女は、ある日巨大なパラボラアンテナを備えた軍事基地での秘密プロジェクトに参加することに。 それから数十年後、ナノテク素材の研究者汪淼は、とある会議に呼ばれ、科学者が次々と自殺している事実を告げられる。裏に見え隠れする学術団体<科学フロンティア>への潜入を勢いで引き受けた彼は、その直後から謎

          劉 慈欣(リウ・ツーシン) 『三体』

          ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』

          自由を愛し戦争を憎んだ報道カメラマンの、第二次世界大戦従軍を中心に綴った手記。 表紙の写真"Omaha Beach. June 6th, 1944"はノルマンディー上陸作戦に参加し兵士と共に上陸用舟艇に乗り込み、海中で撮影した写真だ。 手記によれば、彼はドイツ軍の機関銃やライフルの弾丸が飛び交う中、大胆にも海を渡り砂浜まで辿り着き、周囲の撮影を行った後で、やって来た上陸用装甲艇に乗り込み母船に戻った。撮影したフイルムは直ぐに現像されたが、興奮した撮影助手がネガを乾かす際に

          ロバート・キャパ『ちょっとピンぼけ』

          ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー 『フライデー・ブラック』

          「シャープでダークでユーモラス。唸るほどポリティカル。恐れ知らずのアナキーな展開に笑いながらゾッとした。」ブレイディみかこ 帯の文句が傑作な、新人作家のデビュー短編集だが、これがもの凄い。 日常に潜む欲望、暴力を少し誇張して歪んだ形に引き伸ばした物語世界での出来事に、そんなバカな、誇張し過ぎだって、と笑って過ごせない何かがある。 そのシュールでストレンジな展開に、一度読み始めたら一気に引きずり込まれる。 この本をBLMムーブメントの流れの中に位置付けて読む向きも多いと

          ナナ・クワメ・アジェイ=ブレニヤー 『フライデー・ブラック』

          原田マハ 『キネマの神様』

          大手デベロッパーで初の女性課長としてシネコン開発を手掛けていた歩が、退職を余儀なくされ、思わぬきっかけから、経営の傾いた映画雑誌の編集者に。彼女が映画好きでギャンブル好きなダメ親父、かつて敏腕でならした女性編集長、ぶっきらぼうな編集者らと共に奇跡を起こす。 ダメ親父の映画日記を元に、雑誌のブログに記事をアップすると予想外に好評を呼ぶ。 かつての同僚でアメリカ在住の友人に手助けしてもらい、英語版の記事を掲載すると、そこに謎の人物からのコメントが付き、さらなる反響を呼び起こし、

          原田マハ 『キネマの神様』

          迷子の本の探し方

          蔵書検索システムで、館内に蔵書されていると表示された本が棚に見当たらないことがある。カウンターの人に言うと、見てきますのでちょっと待ってください、と。しばらくすると本を片手に現れて、別の棚にありました、と言う。 別の棚?ちょっと待って、それって一体・・・ 図書館の書架の本には決められた並べ方があるのをご存じだろうか? 大雑把にいえばジャンル別に分かれているのだが、その「ジャンル」はというと、多くの場合「日本十進分類法(NDC)」という分類の仕方を利用している。 この分類で

          迷子の本の探し方

          図書館で神様に出会った

          年が明けたある日。 返却期限が過ぎていた本を返しに図書館にいった。ついでに面白そうな本はないかと見ていた時、一人の老婦人が本を二冊抱え棚から棚へと顔を寄せながら何か探しているような様子に気が付いた。その方はしばらく棚を眺めていたけど、ふと隣に立っている僕に話しかけてきた。 「すみませんけど、この本を元の棚に戻して頂けませんか?目が見えずらくてどこに戻せばいいのか分からないんですよ」 「ええ、お安い御用です」 彼女が差し出した本を見ると、一冊は子供向けのファンタジー物語。も

          図書館で神様に出会った

          『ホテル・ネヴァーシンク』

          アダム・オファロン・プライス 『ホテル・ネヴァーシンク』 図書館本。 ポーランドから米国に渡ってきたユダヤ系移民のアッシャー・シコルスキー一家は、幾たびの失敗と苦難を経て、ニューヨーク州北部のキャッツキル山地の山間の小さな町リバティに辿り着く。そこで偶然始めた民泊業が評判となり、かつての大富豪が狂気に駆られるように建設したいわくつきの大邸宅を買取り、「ホテル・ネヴァーシンク」を開業する。ホテルは大統領も宿泊するほどの大成功を収めるが、アッシャーから経営を引き継いだ長女ジーニー

          『ホテル・ネヴァーシンク』