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原田マハ『リボルバー』

あらすじ

パリ大学で美術史の修士号を取得した高遠冴は、パリの小さなオークション会社CDCで勤務している。そのCDCに、ゴッホが自殺を図った時に使用したという拳銃が持ち込まれた。
真贋を確かめるため冴は、調査に乗り出す。
ゴーギャンとゴッホの間に何があったのか?リボルバーは何故今になって持ち込まれたのか?ゴッホの死は本当に自殺だったのか、それとも?
調査を進めていくと、そこにはゴーギャンの苦悩と彼に関わった人々の切ない想いが幾重にも重なっていた

感想

アートの舞台裏をフィクションで語る物語は、もはやマハさんの独壇場の感があります。

『たゆたえども沈まず』で書かれたゴッホが題材で、あれ、新作はまたゴッホなの?と思いはしたものの、発売直後から注目して、図書館予約したのが21年6月だから、それから、もう9か月も経ってしまいました・・・

リボルバー、というタイトル。狙いはとてもよく分かります。
過去にマハさんの美術シリーズを読んでいれば、今回マハさんが狙ったのは、そのリボルバーを題材にしたミステリー仕立てのストーリー。
本道がミステリー分野の僕には、その点でも注目していました。

でも本筋はやはりアートでした
二人の画家と彼らに関わった人々の切ない想い
フィンセントもポールも幸せな人生を送ったと信じたい、という冴の願いは、そのままマハさんの気持でしょう。
理由なんかなくたって強くそう願う、という気持が迸る文章に思わず涙してしまいました。

ただ、ほぼ全ての謎が関係者の告白で語られる、というのはミステリーとしては少し残念な感じです。

過去の当事者しか知らない出来事の真相、ですから仕方ないと言えば仕方ないし、冴もプロの調査員ではないし、マハさんもミステリーが本業ではないのだから、と自分に言い聞かせてました。

ついで、ですが・・・
同僚との会話に度々登場する「ウォーショースキー」というのは、サラ・パレツキーさんのシカゴの女探偵を主人公にしたハードボイルドシリーズの探偵の名前です
品物が美術品ではなくリボルバーだから、ハードボイルド探偵の名前を持ち出してきたのかな、でも、やっぱり唐突な感じがしますね。マハさんがVIシリーズを読んでいる、というイメージも想像できなかった・・・

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