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三菱電機の中期経営計画の紐解き1

本日は、エレクロニクス業界の研究をやります。

研究の仕方としては中期経営計画の紐解きをやってみます。

中期経営計画とは毎年度の決算発表とは別に今後の(長期的な、と言うよりもまさに言葉そのものままですが)中期的な経営計画のことをさします。単年度だとどうしても、売上や利益の増減がメインとなりますので、もう少し先を見据えて、どのような方針で事業を伸ばしていくのかが書かれています。

ここで業界のリーディングカンパニーが訴えている内容が今後のその業界に与える影響が大きいわけです。重点投資される分野、新たな商機を目指す製品が書かれているわけなので、中期経営計画を読み解ければ、だいたいの世の中をおえられるかとおもいます。

今回は三菱電機の中期経営計画(略して中経)を見てみましょう。三菱電機は多岐にわたり事業を展開しており且つそれぞれの分野での合理化やバランスの良いポートフォリオとなっている点から、エレクトロニクス業界のあらましを掴む上では参考になると思います。もちろん、日立やソニーをみてみてもいいのですが、なかなかエッジが効いておりまして、業界を俯瞰する意味では偏りが激しいので、今回は三菱でいきます。パナは好業績とは言い難いし重電系が少ないのでやめときます。

それではみていきましょう。

まず中期計画のスライドはこちらです。


P2) 経営戦略
多様化する社会課題の解決に向け、100年培った経営基盤の強化に加え事業 モデルの変革により、ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティの4つの領域において、 グループ内外の力を結集した統合ソリューションを提供する。

解説
表現力がなくてすいませんが、良い意味でありきたりです。総合エレクトロニクスの経営戦略のお手本と言えるような記載です。無難といいますか、隙がないといいますか、質実剛健で堅実確実な印象ですね。

多様化と社会課題
みなさんも目にすることが多いと思います。これからのキーワードです。あとでまとめてやります。

ライフ、インダストリー、インフラ、モビリティ
ライフは暮らし→家電です。インダストリーは産業→工場用途です、ロボットとかですね。インフラはインフラストラクチャーの略で日本語だと社会基盤→重電・重工業系で電力や電車とかでっかいやつです、モビリティは移動体→自動車産業向け製品、というイメージです。大体他のエレクトロニクス業界も同じような言い方をします。横文字にする意味はあるのか?ないです、格好いいだけ。

ただモビリティだけ補足しておきますと、ここは言葉の定義は少し慎重に捉えた方がいいです。類義語にオートモーティブがあります。超絶雑に説明するとモビリティーの方が意味が広いです。オートモーティブの方がより「自動車」です。オートモーティブは現在と地続きの自動車です。モビリティはより未来をイメージしており、今の自動車の発展系以外も含む、という意味があったりします。


P3)1. 経営戦略
社会課題の解決に向けた価値創出を中心として、全ての企業活動を通じて持続的成長を追求することにより、世界共通の目標であるSDGsの17の目標達成にも貢献

解説
先ほどの社会課題についての詳細説明です。ホットワードです、SDGs。今後しばらくはトレンドとなる言葉です。これで一つ本が書けるくらい話題なので、ざっくりいいます。国連が設定した2030年に向けた世界が目指す目標です。

貧困をなくすとか、環境問題を考えるとかそのようなものです。従来もそういうものってありましたよね、環境問題なら京都議定書とかパリ協定とか、なんとなく言葉くらいは聞いたことがあると思います。こういった従来の環境目標は国単位で決めていました。日本はこれだけ、アメリカはこれだけCO2を減らしましょう、みたいな話だったわけです。

SDGsの決定的な特長は、従来の「国」だけでなく、「民間企業」に対しての具体的な取り組み内容を示している点です。より厳密に言えば企業だけでなくNPOやNGOなどの社会法人を含む民間での取り組みを重視しているところが画期的なのです。なので、企業はこぞってSDGsの取り組みを始めています。


P4)ESGトピック
CDP(*1)から「気候変動」「ウォーター」に おいて3年連続でAリストに選定(2019/1)、 サプライヤーエンゲージメントリーダーにも 選ばれ(2019/2)、各分野の最高評価を獲得

解説
ESG、これも重要ワードですね。ほぼSDGsと同じ文脈で語られます。ざっくり言えば「環境に良い会社、持続可能な社会に貢献している会社に投資したい」そういう考え方です。そういう投資の仕方が時代の流れとしてあり、それをESG投資と呼びます。どれだけESGな投資になっているかを示す上では、SDGsの達成具合が一つの指標となるわけです。

世の中は、投資家がお金を投資して→経営者がそのお金を事業に投資して→社員が事業を成長させて→売上や利益を得て→投資家にリターンする、となっています。

なので、最初の投資家の部分がESG志向を強めれば、会社もそれに適応しないとお金を集められないのです。逆に言えば投資家からESGな会社と認められればお金を集めやすくなります。そのため、経営陣は頑張ってESGやSDGsを重視していることをアピールするわけです。

人ごとじゃないんです。我々社員は投資家から「ESGに期待したお金」をお預かりするわけですから、それに見合った事業構成や収益の上げ方を考えて実施できないと価値のない組織と判断されてしまうのです。「とにかく稼げていれば投資家は文句ねぇだろ」、という時代は終わりつつあるのです。

逆説的かもしれませんが、裏を返すとESGを意識した事業は稼ぎやすいとも言えます。消費者や顧客もESG志向へ変われば、そういった取り組みをしている企業を優先的に使用してくれるわけです。

CDP
NPO法人のことです。さきほどSDGsの説明で書いた通り、これからは企業と社会法人はコラボする時代です。三菱電機もそれをちゃんとやっていることをPRしているわけです。

なぜNPOなどとコラボすると思いますか?

それは信用を高めるためです。例えば日本政府がCO2をどれだけ削減したかの報告やその実施方法を発表した場合、おそらくそこに嘘はないでしょうし、中立的な評価方法などがかなり議論された上で発表されることになります。

しかし、民間企業ではいくらでも自己満足的なPRができてしまいますし、営利目的である以上やり過ぎた広告に成り下がる可能性もあります。そこで営利目的でない団体からの第三者的な指摘や指導、評価結果をいれることで信用性を高めるわけです。このやり方はグローバルでスタンダートな内容となります。

毎回書き始めて気づくのですが、一回じゃとても終わりそうにないです。

今日はここまでです。次回はさらに続きをやっていきます。

それでは、また。



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