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[瀬戸芸2022] 直島[家プロジェクト]を巡る(撮影8/30)
瀬戸芸こと瀬戸内国際芸術祭2022、夏。気象情報をにらみつつ旅程を大幅変更したのが幸いし、晴天に恵まれた旅となった。
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本稿では、瀬戸芸の島々のなかで直島の「家プロジェクト」について、写真でまとめていきたい。
なぜ直島がアートの島になったのか
直島が「アートの島」になった歴史は、「仕掛け人」である秋元雄史氏の著作『直島誕生』に詳しい。秋元氏は1991年ベネッセに中途入社し、直島プロジェクトを担当、「現在の直島」の基礎を創り上げた中心人物だ(2006年退社、その後金沢21世紀美術館館長に就任し、現在は東京藝術大学大学美術館長・教授、および練馬区立美術館館長)。
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家プロジェクトとは?
同書によると、直島をアートの島にするにあたり、尖った現代アートを展示するという方向から、より島の歴史や人々の暮らしに融合する形の方向転換があった。アーティストが島の古民家を活かして作品化する「家プロジェクト」も、その一環だ。
全部を網羅はできていないのだけど、5件の「家プロジェクト」(+おまけ2)を写真で紹介していく(「きんざ」はクローズド、「南寺」は要予約のため断念→秋のお楽しみとした)。
家プロジェクトは「本村」に集中
作品群は「本村(ほんむら)に集中している。村営バスでは「直島港(本村)」「農協前」「役場前」の停留所を拠点にすると回りやすい。
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「角屋」
1998年、最初の「家プロジェクト」。受付をしているボランティアサポーター「こえび隊」の方による「水に落ちないでくださいね~」という声とともに靴を脱いで民家の中へ。そこは水に満たされた薄暗い空間で、宮島達男アートでおなじみのデジタルカウンターが水の中で点滅している。
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「角屋」は家プロジェクトの第1弾として完成しました。200年ほど前に建てられた家屋を、漆喰仕上げ、焼板、本瓦を使った元の姿に修復しました。 宮島達男の作品のうち「Sea of Time '98」では、直島町の人々が制作に参加しています。現代アートが地域や島民の生活に介在する契機にもなった作品です。
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床の間には腰掛けられるようになっていて、暗闇の中で点滅する光を観る。外の明るさに反して、戸を閉め切っただけでいかに室内の暗いことか。あっという間に異世界にひきこまれる。
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「護王神社」
息を切らして山道を登り切った丘の上に、その神社はある。
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「護王神社」は家プロジェクトの一つとして、2002年に公開されました。直島・本村地区の氏神が祀られている同神社の改築にあわせて、本殿と拝殿、また拝殿の地下の石室がアーティスト・杉本博司によって設計されています。本殿と石室はガラスの階段で結ばれており、地下と地上とが一つの世界を形成しています。本殿と拝殿は伊勢神宮など古代の神社建築の様式を念頭に、作家自身の美意識に基づくものになっています。
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この神社の「ガラスの階段」が観たかった。
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周囲は静寂に満ちていて、セミの鳴き声だけが響く。風がざっと音をたてる。ガラスの階段には青空と周囲の緑が映り込み、世界を閉じ込めたかのように見えた。
「石橋」
地元の年配の方も多い「こえび隊」の方に道を聞いたとき、「ここから一番近いのは『石橋』だから、先に行ってみなさい、千住先生の大きな絵があるよ」と教えていただいた。こんなふうに、訊ねた以上の情報をくださるところが素晴らしい。
「石橋」には大きな作品が2点展示されている。1作目は、芝生の庭を臨む屏風絵。
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明治時代、製塩業で栄えていた石橋家の家屋は、2001年4月まで個人宅として使われていました。直島では古くから製塩業が人々の生活を支えており、直島の歴史や文化をとらえるという観点からも、家そのものの再建に重点がおかれました。千住博が着想から5年の歳月を費やして「場のもつ記憶」を空間ごと作品化しています。
奥まった場所には離れを一棟使った、滝の絵が描かれていた。静かな空間に反して、脳内では滝の水音が流れはじめた。
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「碁会所」
「碁会所」という名称は、昔、碁を打つ場所として島の人々が集まっていたことに由来します。建物全体を作品空間として須田悦弘が手がけ、内部には 速水御舟の「名樹散椿」から着想を得てつくられた作品「椿」が展示されています。庭には本物の五色椿が植えられており、室内の須田の椿と対比的な効果をつくりだしています。
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「はいしゃ」
直島銭湯「I♥︎︎湯」、女木島の「女根/めこん」の作家、大竹伸朗の作品ということで楽しみにしていた。そして期待通りだった。
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「なんで『はいしゃ』なの?」「元歯医者だったんだって」という会話は、気の遠くなるくらいの回数、繰り返されていることだろう。
かつて歯科医院兼住居であった建物を、大竹伸朗がまるごと作品化しています。家のあるところは彫刻的であり、または絵画的であり、あるいはさまざまなものがスクラップされているなど、多様なスタイルが盛り込まれています。作品タイトルの「舌上夢」という言葉は、何かを口にしている時、味や匂いなどの感覚からたどる夢の記憶のプロセスを表現しています。
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ここはもう、はじけた世界を楽しめばいいのだなと割り切って、二階の床が部分的に取り払われた天井の高い空間を活かした作品を味わった。
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大竹伸朗作品は観ていてクセになる。参考までに、2作品を以下に。
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おまけ①「The Naoshima Plan 水」
家プロジェクトには含まれていないようなのだけど、印象的かつ「助かった」のが「The Naoshima Plan 水」。ここは、パスポートなしでも入れる無料スポットの一つだ。
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靴を脱いで家に上がると、「角屋」のように家の中は水で満たされている。ここでは、足湯のように冷たい水に足を浸して休憩することができる。足を拭くタオルがない人には、200円で販売もされていた。
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その日の午後、直島は「嵐」の予報だった。天気予報は目まぐるしく変わっていたけれど、島で雨に遭うのは避けたかったので14時台のフェリーで高松に戻るつもりだった。しかし予報は再び変わって、まさかの快晴に。
それは本当にラッキーだったけれど、雨のことしか考えていなかったので、不意打ちでもあった。「家プロジェクト」巡りは必然的に歩くことになるし、道に迷うのもお約束。歩き疲れたところで思わぬ休憩ができ、身体から熱を出すこともできた。ありがとう!
おまけ②「宮浦ギャラリー六区」
高松行のフェリーが発着する宮浦港から歩ける距離にある「宮浦ギャラリー六区」は、船の待ち時間に散策するのにほどよい。
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展示は不定期で、奥には資料館。島に関する貴重な資料が展示され、閲覧している人も多くみられた。
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家プロジェクトを楽しむには
既述のように「家プロジェクト」は、島の「本村(ほんむら)エリアに集中している。地中美術館、李禹煥美術館、ベネッセハウスミュージアムのあるエリア(ベネッセハウス周辺)とは少々離れているので(位置関係は下記)、1日過ごせるのなら、午前は美術館、午後は家プロジェクトと分けるなどして回るのがいいかもしれない。ちなみに、原則として月曜は休館。
村営バスは1回100円、ベネッセアートサイト直島場内バスは無料。宮浦港からの出発はフェリーの時間に連動している。そのほかは、バス停やパンフレット等の時刻表を確認のうえ、バスを利用すると効率的に移動できる。
最新情報は、フェリーの発着所の前の、海の駅「なおしま」に掲示されている。
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では、よい旅を!
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