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DAY 68:「鉄仮面の裏の顔」 HANK MOBLEY BLUE NOTE 1568

家族で、妻の実家へ出かけ、
近くのテーマパークで遊んだ、帰り道。

私の前を行く妻の車の、
赤いテールランプを眺めながら、

「HANK MOBLEY  BLUE NOTE 1568」

について何を書こうか、
私は思いを巡らせていました。

その日、前日に妻と子どもたちは、
妻の車で実家に泊まっていたので、

私は自分の車でその日の朝向かい、
家族と合流し、
近くのテーマパークへ向かいました。

9月も半ばを過ぎているというのに、
外は真夏のような暑さ。

6歳の息子は動きたい盛りです。体力も無尽蔵。
その上、自身の欲望に忠実。
体を動かしたい、走りたい。

ゲームをしたい、テレビをみたい、
勉強したくない、などなど…

如何せん妻と私には、
手に余るほどの鉄砲玉ぶりを
毎日のように見せてきます。

この日も車を降りるやいなや、
真っ先にテーマパークの入り口に向かって
走り出しました。追いつけないよ…。

まあ、元気なことはいいことです。

基本、息子のやりたいことを基準に、
家族の動きが決まってきます。

この日はまず
「カヌーにおとうさんと乗りたい」
と笑顔で言ってきました。

その笑顔には思わずこちらも
「いいよ!」
と言わざるを得ません。

息子にとって初めてのカヌー。
顔が期待で満ち溢れています。

目がキラキラしてる。

その新鮮な感動。
そういや自分にも昔あったなあ。

息子のいい思い出になるといいな。
そう思ってカヌーに乗りました。

初めて乗るカヌーは舵取りが難しく、
桟橋を離れたはずなのに、
5分くらいして一回転し、
また桟橋に戻ってきてしまいました。
係の人に
「もう上がるんですか?」
なんて言われる始末。

精一杯の強がった笑顔を見せて
「いえ、まだやります」
と答えます。

息子は人気のない方をオールで指し示し
「あっちへ行こう!冒険だ!!」
と先頭から船長のように指示してきます。
一介の船員である私は船長の指示のもと、
炎天下の中でひたすらオールを漕ぎ続けたのでした。

それでもしばらくすると、
なんとか漕ぎ方のコツもわかり、
日かげになっているちょっとした入江に
たどり着くことができました。

そこでは木々が、緑の洞窟を形作っていました。

「綺麗だね」「うん」

自然と、親子の間でそんな会話が交わされました。

そこからさらに、冒険を進める息子。
その背中はもう既に、逞しい男の背中です。


息子よ、櫂たれよ。

大海原、
時に自らを櫂とし、道を切り開き、
時に誰かの櫂となり、支えとなれるように。

父はその息子の背中に、
願いを込めて、オールを漕ぎました。

昼食は息子の希望でラーメン。
いつもは取り皿に一度移して、
冷ましてから食べていた息子が、
「今日はそのまま食べる」と言って、
初めてどんぶりから直にラーメンを食べました。
こんな小さな成長でも、
親としてはとても嬉しい。

そして、私は、それを、
忘れたくないなと思ったのです。

昼食後は妻と息子は別のアトラクションへ。

私は1歳の娘と2人で、
ベビーカーを押しながら、
テーマパークを散策しました。

娘とのデート。
途中で水を飲ませたり、葉っぱを見せたり、
花を取って見せたり、
ベビーカーから下ろして、
ふたりで写真を撮ったりしました。

きっと娘は覚えていないでしょう。
でも感じたことはきっと、
娘の中には残るはずです。

そして、私は、それを、
忘れたくないなと思ったのです。

さて、その帰り道。

私の前を行く妻の車の、
赤いテールランプを眺めながら、

「HANK MOBLEY  BLUE NOTE 1568」

について何を書こうか、
私は思いを巡らせていました。

はじめは、このレコードを
初めて見たときのことと、
そのレアリティについて
ちょっと書こうかなと思っていました。

その「1568」ー通称「鉄仮面」ー

15年前、東京のレコード屋で
アメリカのオリジナル盤を見た時に、
壁にかかっていて、
確か40万円を超えていた記憶があったこと。
それで、こりゃ集めるのは無理だと、
しばらくブルーノートのレコードとは
距離を置こうと思ったこと。

ただ、車を走らせているうちに、
そんなことはどうでも良くなってきました。

レコードはいつでも聴ける。

ただこの日々が、
この1日1日が、
ずっとずっと貴重で、
レア、なんて言葉では片付けられないほど、
かけがえないのないものなんだよな。
新鮮な感動に、出会えるものなんだよな。

その日々を、人生を、
いっしょに歩んでくれる家族に。

妻に、息子に、娘に、感謝しよう。
ありがとう。

思い巡らせた思考は、結局そこに着地しました。


家に着いたら、
きっと妻も息子も娘もすぐ寝るでしょう。

そうしたら、小さい音だけど、
この最高にカッコいい、ジャズのレコードを、

家族の顔を思い浮かべながら、聴こう。

親父の鉄仮面を外して。

ちょっと、ウイスキーを飲んで。

みんな、ありがとう。


すこしだけ、前で赤く光るテールランプが、
にじんで見えた気がしました。

この最高の幕開け。

2曲目のバラード。トランペットからの
サックスの入りが、ゾクゾクするほど格好いい。

そして渋い名曲へ。

ウイスキーが、すすみます。

レコードを裏返すと、
「まだまだこれからだぜ」というように
この曲が流れます。

そしてレコード最後の曲は、
素晴らしいアンサンブルと
リズムを味わえる、こちら。

ああ、ウイスキーが、足りません。

ここまでお読みくださり、
ありがとうございます。

今後も、
あなたのちょっとした読み物に、
私のnoteが加われば、
とても嬉しいです。

きょうが、あなたにとって
かけがえのない、いちにちでありますように。

アイ



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