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父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 28
尾崎さんの『大吉の籤』という作品に、父が独立して仕事を始めた頃のことが書かれています。大体の作品では山下昌久君、と本名で登場する父でしたが、この作品は例外的に仮名となっています。たまたま尾崎さんが、旅先の食堂で引いた籤(昔、よくありましたよね、灰皿兼用のおみくじ。十円入れると小さな巻物状のくじがコロン、と出てくる)が大吉で、お福分けした三人の男性が揃って幸先いいスタートを切ったものの、二人は残念な
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父がぼそりと呟きました。「三月がやっと終わるな」。父にとって三月は辛い月です。家族を失った東京大空襲とともに、尾崎一雄さんが亡くなった月で、三年前には、父の妻、つまり私と妹の母の死が加わりました。
昭和五十八年(一九八三)三月三十一日に尾崎さんは逝去しました。八十三歳という享年は、大病をした尾崎さんとしては上出来だったでしょう。けれど、当日まで仕事をしていたそうですから、周囲の人たちにとっては急
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実家には週一ペースで通っています。一人暮らしの父に少し楽をしてもらおうと、週末の夕飯は妹と私が用意していますが、たわいないおしゃべりをする時間でもあります。基本土曜日は妹、日曜日は私です。ある夜、デザートのリンゴを切っていたら、「チンパンジーの餌みたいだな」と言われ、ちょっとムッとしました。私のリンゴの切り方は、くるくる皮をむくのではなくて、サクサクと六等分してから、ひとかけずつするっと皮をむきま
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