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父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと お知らせ
noteに投稿していたこの物語が書籍になりました。
『父のおじさん 作家・尾崎一雄と父の不思議な関係』里文出版 2200円+税
明日、12月7日発売になります。
温かな優しい一冊に仕上がりました。
よろしくお願い申し上げます。
https://www.amazon.co.jp/%E7%88%B6%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%98%E3%81%95%E3%82%93-%E4%
父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 31
一九八三年(昭和五十八年)、三月三十一日。その日の尾崎さんは、同じ月の一日に逝去したばかりの小林秀雄を特集した『新潮』を隅から隅まで読んでいたそうです。小林秀雄も、尾崎さん同様に、志賀直哉の門下であり、志賀直哉を敬愛してやまなかった人でした。それゆえ、尾崎さんの失意はひとかたならぬものでした
夜になり、尾崎さんは体調の異変を感じて、習慣になっていた晩酌(一週間でオールドの瓶を一本空けるペース)を
父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 28
尾崎さんの『大吉の籤』という作品に、父が独立して仕事を始めた頃のことが書かれています。大体の作品では山下昌久君、と本名で登場する父でしたが、この作品は例外的に仮名となっています。たまたま尾崎さんが、旅先の食堂で引いた籤(昔、よくありましたよね、灰皿兼用のおみくじ。十円入れると小さな巻物状のくじがコロン、と出てくる)が大吉で、お福分けした三人の男性が揃って幸先いいスタートを切ったものの、二人は残念な
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私の誕生日と両親の結婚記念日は、同じ五月二十一日です。結婚してちょうど一年後に生まれたのが私でした。だから母とは、「お誕生日おめでとう」「結婚記念日おめでとう」とお祝いし合っていました。
父と母は、血の繋がっていないイトコです。母の父である佐一さんと父の父である林平さんは、伊豆の牧之郷でご近所づきあいする間柄でした。林平さんの家は、父を引き取った円蔵さんと林平さんの二人兄弟で、田舎としては子ども
父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと 26
現代に生きる私たちにとって、お金はなくてはならないものです。このお金は、時に人を助け、時に人を破滅もさせます。作家の尾崎一雄さんは、若い頃に父親の遺産を使い果たし、また、作家として目処がつくまでは極貧の結婚生活をしていた人です。が、その貧しさを楽しんだのが、妻の松枝さんで、そんな松枝さんとの生活から生まれた短編作品『芳兵衛物語』や『暢気眼鏡』は、尾崎文学の代表作となり、映画やTVドラマにもなりまし
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カエル、といえば、タフンバリ。おはぎは、ハンゴロシ。あんころ餅は、ミナゴロシ。子どもの頃に父から聞いた、父が伊豆・修善寺時代に出くわした奇妙な呼び名は、方言ならではの直截な表現が面白く、今も私は、カエルを見れば反射的に(タフンバリ!)と心の中で叫んでいます。最近になって、父がこれらの呼び名を耳にしたのは、高校時代のアルバイトでのことだったと知りました。さて、どんなアルバイトをしていたのでしょう。
父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと22
子どもの頃から、我が家には何かしら動物がいましたが、その多くは訳あって我が家にやってきた子たちでした。怪我をした伝書鳩、逃げてきたカナリア、脱走して保護されたヒマラヤンなど。中でも印象深いのは、ウサギです。新婚の叔父(母の弟)が夜店で買ってきたテーブルうさぎ。大きくならないという触れ込みでしたが、ウサギなど飼えない、とお嫁さんに拒否されて、うちで引き取ったのです。大きくならないはずのうさぎは、どん
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ハイパーインフレという言葉。最近だと、南米のベネズエラが思い起こされます。今年一月に記録した二六八万%という数字に驚かされましたが、戦後の日本も猛烈なインフレに襲われたといいます。理由はもちろん日本の敗戦によるものでした。戦災により企業の設備が打撃を受け、流通も滞り、生活物資が供給不足に。また、旧軍人への退職金支払いなど臨時軍事費の支払いがかさみ、物価が高騰。預貯金の引き出しが激しくなり、銀行券の
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父にとって姉のような存在だった従姉の世都子さん。彼女のことは何度か書きましたが、世都子さんは、父が宇久須村から修善寺に移ってからも、ちょくちょく様子を見にきてくれたそうです。父を引き取った家での待遇が目にあまり、「まアちゃん、あんたは近くにできた戦争孤児の施設に入ったほうがいいんじゃないか」と心配されたこともありました。
戦争孤児の施設。当時、どんな様子だったのでしょうか。二年前、終戦記念日前後
父の小父さん 作家・尾崎一雄と父のこと19
新しく始まったNHK連続テレビ小説「なつぞら」は、父の琴線に触れるようで、珍しく見続けているといいます。主人公のなつが戦災孤児で牧場に引き取られたという境遇が、父とよく似ているのです。「牛のお乳の絞り方、とてもうまいよ。あれは難しいんだ。牛との相性もあるしね」と感心しています。「僕は手が小さかったし、両手で絞れなかったなあ」。今では懐かしい思い出ですが、当時は生活環境の激変に、戸惑いの連続でした。
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