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君トノ切ッ先

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刀篤のRe:STARTから過程を追う詩集です。
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【詩】君トノ切ッ先

【詩】君トノ切ッ先

1つずつ数えた白い106錠
何かを完遂したつもりの
『Brotizolam』は確かに
素晴らしいさよならの一種の
作法だったことは間違い無い

あの人に詩を贈らないこと
あの人にのめり込まないこと
二度とあの人に会わないこと

中庭できみがぼくの
『Creativity』を理解して
ぼくはきみに恋をした

わたしに詩を贈らないこと
わたしに特別固執しないこと
二度と自分で死なないこと

1つのベン

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【詩】肢体

【詩】肢体

存在の関係性の本質が
システムだからこそ
何処までもわたしたちは
絶対的に孤独では無い
役割を演じる必要も無い

それは(0.1+0.1)
わたしの美しい肢体の嵐
それは(×0.2)
アーキテクトニクに在る唇
それは(×0.04)
狂った歯車を修正する乳房
それは(×0.0016)
手術台の上に拘束する下腹
それは(×0.00000256)
わたしの愛しい夏の夜の太股
それは(×6.5536e-1

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【論詩】美≒芸術

【論詩】美≒芸術

芸術がほぼ美だった頃
わたしはシンプルだった
自然観は次第に複雑化し
古生物は多様性を獲得し
芸術は必ずしも美である
必然性が次第に失われ
承認欲求は饒舌になり
論理で裏付ける技術が
芸術ということに成り
奇行の言い訳が最高の
芸術と成り得ることに
孤独な詩人も気づいた
頭の切れるペテン師が
わたしに媚びた筆で
芸術家として大成し
信者がペテンを補強し
社会的精神の形成に関わる
芸術の本来の宿命に

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【詩】フェチ

【詩】フェチ

血の魔人が君のこめかみに
口付けをして祝福したのだ
行為の最中の雌のこめかみに

【詩】-過去-現在-未来-

【詩】-過去-現在-未来-

夜が更けて初夏の風が
窓辺から冷たく侵入し
寝るのが勿体ない様な

過去は変えられると
未来によっては過去も
意味を変えられると

今夜星々は暗雲の遥か上
君の言葉を反芻する
風の既往を確認している

【詩】大聖堂

【詩】大聖堂

その男は女を陵辱することでしか
女を愛せなくなってしまったらしい
わたしは建築家になり大工になり
その男と女の為に大聖堂を建てる
神を信じなくてもわたしは自身の
理に反した仕事に引け目を感じない

娯楽やエンターテインメントを
下に見ていたことを後悔している
わたしは建築家になり大工になり
庶民の娯楽の為に大聖堂を建てる
わたしは偶像崇拝の過程に起こり得る
凡ゆる精神現象を哲学的に論証しない

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【詩】焼失

【詩】焼失

先ず風が止んだ
追い風と向かい風の
区別も無効化された

僕は原っぱに立って
空を睨んでいた
黒い雨が降っていた

何処かで灰が
巻き上がっていた
星が焼かれていた

直上の雲間から炎が
撒き散らされていた
衛星が苦悶していた

原っぱの中でなら
僕は何処へでも
行ける保証があった

僕は原っぱから
出たいと望んでいた
空が黒を垂れ流し

追い風も向かい風も
区別が無くなって
原っぱに一人

【詩】わたしはガザに行く

【詩】わたしはガザに行く

子供たちが
死んでるんですよ
みんなは
よく平気で居られますよね

その感覚は
圧倒的に
正しかった
その子は泣いていた

自分が
当事者になった時
そう為ってから
考えればいいんじゃない

ぼくの言い訳は
何かのアニメの
受け売りだった
ぼくは狼狽えていた

その子は
パスポートを手配して

ぼくは
バタフライエフェクトを説いて

その子を地獄から救えるか
リアルに今も子供たちが
死んでゆくガザ

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【詩】輪

【詩】輪

輪をぼくに帰してくれないか

盲信するコミュニティの猛進する歯車
勝利の雄叫びや性の悶えへの回帰
涼やかな風に遊ぶ子どもたちの輪

きみと過ごした半ヶ月との邂逅

ぼくも輪の一部だったんだよ
ぼくの存在のすべてを差し出すよ
札束だって何億何千万とあるよ

輪の外でぼくたちは出会った

きみの履歴に涙すること
きみの息災に涙すること
きみの面影に涙すること

決定的に失ったぼくは失った

【詩】練磨(New Ver.)

【詩】練磨(New Ver.)

腿肉の緊張と弛緩
楽曲と協調破調し

しなやかに烈しく
美の概念を拡張し

ああ、なんという
終わりのない練磨

バレエダンサーの
肉体の誇り高さよ

静的動的な連続性
瞬間瞬間の格調に

質量としての個の
リミットを超越す

【詩】ヘッドホン

【詩】ヘッドホン

新しい服を買ったら
それは鏡の前で
飛び跳ねるし

好きな音楽を
見つけたら
やっぱり鏡の前

夜はアスファルト
寝転がって音楽
服と冷たい風

月にわたしが映る

【小休詩】頑張ったね

【小休詩】頑張ったね

此処に100円玉をひとつ
同じ様に50円玉をひとつ
どのジュースが良いかな?
ライチヨーグルトが好きなのよね
此処のこのボタンを押してね
ギュッと力を入れて そうそう
ほら落ちてきたよ自分で取れるかな
取れた取れたライチヨーグルト
ストロー刺してあげるね

【詩】中庭

【詩】中庭

嘗てICUの羊水の中に居たぼく
妖精たちの祝福を受けたタトゥーの
シールの様な中庭には光が射しており
其処は同じ境遇の別のタトゥーを有した
美しい無垢なネコ科の縄張りだった

最も美しい雌猫は最も無垢なシールを
ぼくの心臓に貼りつけ最も速やかに
去っていった 温もりを残して行った
ゴロゴロと喉を鳴らしたものだ
何しろぼくは陽向に居たのだもの

嘗てICUの羊水の中に居たきみ
深い眼差しでぼくを畏れ

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