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劇評・映画大好きポンポさん
本作を見ていてふと気付いた。Directorとは面白い言葉だな、と。
Directとは管理する、運営する、指揮する、監督するといった動詞のほかに、まっすぐ、直接、直行などの形容詞にもなる。
強引な解釈だが、その思想や行動が作品や組織そのものと直結する存在と受け取れば、なるほどその責任の重さも意味できる気がする。
重責、期待、経費、名誉。天秤の反対側に何を乗せても釣り合いそうもないものを目一
劇評・チェルノブイリ
※本稿はネタバレ要素を含みます。未見の方はご留意ください。
中国秦王朝の二代皇帝、胡亥の宦官である趙高は、一匹の鹿を胡亥の前に差し出し「珍しい馬を手に入れました」と言った。
胡亥が「鹿ではないのか」と問い返すと、趙高は左右に居並ぶ廷臣たちに「これは馬であろう?」と問い返す。
廷臣たちは「馬です」「鹿です」と各々答えたが、鹿と答えた廷臣は、後に趙高の手により謀殺された。
これは謀反を画策し
劇評・シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション
いきなりネタバラシから書いてしまおう。
本作はシティーハンターことリョウと相棒カオリが、背水に立たされた依頼人からもたらされたトラブルを、追ったり追われたりドンパチ撃ち合ったり美女にもっこりしたりカオリにどつかれたりしながら解決し、最後はGetWildのフェードインで幕を閉じるお話である。
そう、純度100%の紛れもない『シティーハンター』なのだ。
当たり前のように思われるかもしれない
劇評・ 劇場版シティーハンター:新宿プライベート・アイズ
元禄年間、甲州街道の新たな宿場町として誕生し、江戸の行楽地としても発展。行き過ぎた風紀の乱れを理由に、一度廃駅の憂き目に会うもその後復活。明治維新後は鉄道整備などで人の流れが加速度的に増え、関東大震災に際し被害の少なかった武蔵野台地の東端部一帯に人が流入。戦後も闇市などを経て成長を続け、名実共に東洋一の歓楽街を形成。駅西口の浄水場跡地にオフィス街が生まれると、静岡県の人口に匹敵する人が1日で行き
もっとみる劇評・カメラを止めるな!
※本稿はネタバレ要素を含みます。未鑑賞の方はご注意ください。
映画は魔法である。人が空を飛び、宇宙人が地球を侵略し、大怪獣がビルをなぎ倒せば、死人だって蘇る。
だが、誠に不本意ながら、魔法は存在しない。映画という魔法は、スタッフからシステムに至る、無数の現実が作り上げたフィクションなのだ。
しかしそのフィクションを操る人々は、ただの一瞬も不真面目に映画と向き合ってはいない。最高の魔法を作り
劇評・機動警察パトレイバーREBOOT
最近よくTVで昭和中、後期のTVアニメの再放送を見かける。当時本放送であれ再放送であれ、リアルタイムで観ていた自分には甚く懐かしいのだが、たまに違和感を覚えることがある。
いわゆる『思い出補正』と呼ばれる、細部の記憶の齟齬はもとより、演出のテンポや声優の演技に、なんとも言えないこそばゆさを感じるのだ。
時世の流行、自身の経験、その他複合的な要素がもたらす感性の変化。そういった違和感を含めてまた
劇評・THE NEXT GENERATION パトレイバー 首都決戦 ディレクターズカット
思った以上に満足して、この原稿に向かっている。
ディレクターズカット版という言葉に、どこか蛇足的な意味合いを勝手に感じ取っていたためだろうか。ある意味思った通りの出来栄えに、ようやくこの映画を見たと言えるような気さえしている。
80年代アニメの終焉と90年代アニメの開闢を、一手に引き受けたアニメがある。ロボットアニメでありながら現代劇、警察モノでありながら庶民的という、今や定番とも言える二
劇評・BAKUMAN。
漫画の神様こと手塚治虫が漫画にもたらした革命的手法は、文字通り枚挙に遑がないだろう。その中のひとつに、クローズアップというものがある。
それまでの漫画の多くは、一コマ一コマが画一的な形で、いわゆるアングルが固定されていた。これは芝居を見る観客の視点から来ていると言われている。
手塚はそんな時代、キャラクターの顔をアップしたり、舞台全体を1ページに入れたりという、今では当たり前となった手法を編