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わたしを助けてくれたナイスミドルとナイスシニアへ捧ぐ。

昨日は、久々に「終わったな…」と心の中で呟いた。
雪国で車を運転する機会がありそうな人に、見てもらえたら嬉しい。

1.事の始まり

晴天で爽やかな朝。
子どもの保育園を、登園自粛で休ませたはいいが…、元気を持て余す保育園児の相手をしないといけない…。
家に閉じこもっているとかえって大変なので、公園でソリ遊びでもさせるか…になった。

ここ北海道千歳市は、ソリ遊びには最適の小山が作られてる公園がたくさんある。今日は近場の公園に行くことにした。

自分もスキーで歩いたり滑ったりしようかな…と思い立ち、スキーも車に積む。

すぐそこの公園なので、気楽に行った。

公園の駐車場には雪が積もっていて、車が停められるスペースは除雪されてなかった。白い車が半端な位置に駐車している。

あまり深く考えずに、よけて、自分の車を停めた。

そして、子どもにソリを持たせて、自分はスキーを装着して小山を目指す。他に遊んでる子はおらず(こんな時期だから外出も控えてる人が多い)、貸し切り状態。

小山でソリ&スキーをしていると、駐車場の白い車に女性がわらわら群がり始めた。雪を掘ったり押したり…そのうちのひとりが駆け出して行き…男性2人を連れて戻ってきて…また掘ったり押したり…

あれって。車動かなくなってる💦??

え~。自分の車も動かなくなる…? 不安を感じたけど、さっき入ってくるときは何ともなかったし…出るとき、あの場所通らないように気を付ければいいか…。

もう一組親子連れが来て、ソーシャルディスタンスを取りながら遊んで、時々白い車の様子を伺っていると…時間はかなりかかったが、やっと脱出できたようで、帰路についていた。

子どもが「もう終わる!」と宣言して車の方に向かったので、帰ることにした。

車に乗り込みバックさせようとしたら、雪が柔らかくて車の動きが悪い。アクセルを踏み込んだ瞬間。グッと車に勢いがついて下がって…ボフッと雪に突っ込んだ感触があった。

あっ!と思ったが、遅かった。

ギアをローにしても、ぎゅるぎゅるいうだけで、車は動かなくなった

「終わったな…」と心の中で呟いた。


2.少しだけ手だてを考えてみる

でも、子どももいるし、何とか手だてを考えなくては…。
でも、さっきの白い車が脱出するのに、何人集まっていただろう。
このへんに知り合いはいないし、ダンナは仕事。
JAFか?あ、JAFはダンナしか加入してないか。
…車ここに置いて、子どもと歩いて家帰って、ダンナが帰宅したら相談しようか。

不思議と、焦らなかった。
だって、「終わった」んだもん。
とりあえず、どこに電話相談すれば良いか、ダンナに聞いて、その通りにしましょうよ。うん。

車に関しては、完全にダンナ任せの(ダメな)私は、ダンナにLINEした。
なかなか既読がつかない。

3.体格のよいお兄さん

体格のよいお兄さんが通りがかったので、声を掛けてみた。
「すみません、車動かなくなっちゃって。押してもらって良いですか?」

快くOKしてくれ、押してもらってロー発進で脱出を試みた。
ダメでした

お兄さん「いや~、もう少し応援呼べたり、スコップ持ってたりしたら、なんとかなるかもしれないんですけどね…」
私「いえいえ、突然呼び止めてスミマセンでした!ありがとうございました!」
子ども「あっ!わかりました!ここが汚れてます!!(自分なりに車が動かない原因を捜査中。)」

お兄さん、ありがとう!

4.ナイスシニア登場

もう一度車に乗り込み、ダンナに再びLINE。珍しくレスが遅い。

…すると、右側に人の気配が。

スマホから顔を上げて右を見てみると、短めのスコップとタイヤ下に挟む緑の鉄板を2つ持ったシニア世代男性がこちらに近づいて来るところだった。

あれ…?さっきの白い車を助ける人の輪にいた人??

ドアを開けると、
ナイスシニア「動けなくなった?」

わたし「はい…さっきの車見てたのに、同じことしちゃったみたいで…💦」
ナイスシニア「ここね、よく動けなくなってるの。この車、四駆?」
わたし「はい、四駆です。」
ナイスシニア「四駆ね…じゃあ頭の方が重いし…動かないかな~」

と、スコップで前輪の周りを掘り始めた。

わたし「すみません、スコップあったら手伝えるんですが…」
ナイスシニア「いいのいいの、ケガしたら大変だよ。」

子ども「〇〇はね、怖いの!車が動かなくなって怖いの!」
ナイスシニア「大丈夫だよーお嬢ちゃん、たぶん動くよー。」

わたしは目で子どもをけん制した。(…黙っとれ!)
通じたようで、おとなしくなった(怖いママです⛄←自覚アリ)。

手際が素晴らしかった。
掘るのは最小限だったと思う。
掘り終わった後、緑のはしご状の鉄板を車輪の前に挟んで軽く蹴ってしっかり噛ませる。

ナイスシニア「じゃあ、これで動かしてみて。ゆっくりね。」
わたし「はい!」

少し車が前進したところで、わたしがハンドルを動かしてしまって、板がずれたので再調整してくれて。無事、脱出🎉!!

ナイスシニア「出れたね~。帰るとこ?じゃあ、誘導するからこっちに出て。」
わたし「はい!」

もう大丈夫!というところまで出たところでお礼を言った。
ナイスシニアは自慢するでも照れるでもなく淡々と「はいよ。」で受け取ってくれたが、こちらは感謝し足りないくらいだった。

道に出たところで子どもに「おじいちゃんにお礼言って!」と窓を開けたら。子どもは全力の大声で

おじいちゃん、ありがとーーー!!!

と叫んでくれた。
この役割は、わたしじゃ弱い。大声の子どもに育ってくれて感謝だ。いい子いい子。

ナイスシニアはそれでも、手を軽く上げて答えるくらい。
なんてカッコイイんだろう
青い防寒着と短く刈り込んだグレイヘアを、私は忘れない。

5.ナイスミドルの思い出

無事帰宅して、自分の服を見たら。エメラルドグリーンのお気に入りのセーターだった。

あれ?この服着てる時、もう一つトラブルに遭ってたな…

それは昨シーズンの雪が積もり始めの頃だったと思う。アイスバーンの道。

まだパート勤務していて、子どもを保育園に預けた後、慌てて車で出勤することが多かった。

通勤路に街はずれのS字の道があって。第二カーブで…スリップした

対向車線に車がいなくて本当に良かった。対向車線を横切って、そのまま高めの縁石を前輪が乗り越えて、後輪が乗り越えられなかったところで止まった。

この時は「終わった」とは思わず、軽くパニックになってた

対向車線を塞いでいたし、こんなスリップを経験したことが無かったので心臓バクバクだった。死ぬかと思った。

脱出したくてバックしても、前輪が高めの縁石を乗り越えられなかった

どうしよう…と思ってたとき。一台の車が止まった。
中から出てきた男性は…ばっちりリーゼントで色のついたメガネ、コートはキャメルでマフラーを巻かずに下げている…キメキメのナイスミドルだった。

時刻は朝8:15くらい。
子育てでボロボロのわたしとは対照的なキメ具合。

ナイスミドル「大丈夫ですか?」
わたし「あ、すみません、車、縁石乗り越えられなくて…」
ナイスミドル「あー、んーとね、車輪を縁石と直角に… 運転代わってもいいですか?」
わたし「はい、ぜひお願いします!」

ナイスミドルがわたしの車に乗り込み、2,3回切り返して車輪の角度を調整してバックすると、見事に縁石を乗り越えて脱出できた!!🎉

わたし「すみません、ありがとうございました!」
ナイスミドル「いえいえ、じゃ、気を付けてね。」

この時のナイスミドルのリーゼントを、わたしはずっと忘れられない。

ナイスシニアに捧ぐ2

6.こうやって千歳スタイルに馴染んでいくんだな、と思う

2人の人に助けてもらったけど、共通していたのは「淡々と助けてくれた」こと。

自慢気でもなく。手際がとっても良く。

実は、インスタグラムで最近「車が雪にはまって動けなくなったけど助けてもらった!」というストーリーズをいくつか目にしていた。

助け合い、という意識すら無いのかもしれない。
自分だって困ることがいつあるかわからない。だから人が困ってたら助けるのは「自然」なのだろう。

雪国とは、そういうものなんだろう。

そんな土地に暮らしていることが、大変な代わりに幸せなのかもしれないと思う。

こうやって千歳のひとびとのスタイルを体感して。
この土地に馴染んでいくんだろうな、と思った、千歳在住6年目のわたしでした。


※ 教訓/緑のセーターを着る時は、注意すること。








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