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母への想い

ある日仕事から帰宅すると

娘と母から『おかえり』と言われた

楽しそうに
嬉しそうに

疲れて帰ってきてるのに
やめてほしいと思いながらも

『どうしたの?なんかあったの?』


母はうちから車で5分ほどのところに住んでいる
こうやって家にいることも珍しくはない

でも今日は2人で嬉しそうにしていて
疲れている私のテンションでは
煩わしいだけだった


『ママ、わからないの?』

本当に不思議そうな顔で質問してくる娘

本当にわからない
なんなのだろう

『カレー作ったよ、ばばと!』

『あと、これ!』

そう言って可愛くラッピングされた物を私に渡してきた

『ママ、今日、母の日!』


あぁ、そうだ
今日がその日だったのか

娘は母と私へのプレゼントを買いに行き
母と2人で私のためにカレーを作ってくれたのだ

私はそんな娘の想いに胸が熱くなった

『アンタ本当に忘れてたの?』

うん...忘れてた
その証拠に母へのプレゼントもない
少しだけ心がチクッとしたが
娘の嬉しそうな顔を見ていたら
どうでもよく思えてきた


これが母と笑いあって過ごした最期の時


それからも顔を合わせることはあったが
いつも一言二言、言葉を交わすだけだったから

この日が最期

この一ヶ月後、母は帰らぬ人となった


母はいない

それでもなお、私は思うことを止められない



なんでこんなふうにしたんだ、という
恨めしい思いと
なんで死んでしまったのか、という
悔しい思いと


どうしてそばにいてくれないのか、という
寂しい思いと


私は誰に愛を求めたらいいのか、という
不安な思いと...




こんな想いを私に残したまま死んじゃった

もう何も答えてもらえない

いつも不安定なんだよ?

いまも苦しいんだよ?

まだ大人になれてないんだよ?

心はずっと置き去りなんだよ...



もうすぐ母の日がくるね

あの時の楽しそうな顔が思い出せない

そこに座って笑っていたよね

いつも同じ座り方をして

大きな声で笑ってたよね


娘からのプレゼントのネックレスとピアス

『似合うじゃない』

そう言って笑ってたよね

でも、思い出せないんだ

あなたの姿だけ思い出せないんだ




もうすぐ一年

でも、まだ一年


この一年、私は何をしていたのだろう


あなたの存在を

私の心の中でずっと探してきた

子供の頃からずっと


見つからないまま

あなたはいなくなった


嫌いだった

でも大好きだった


寂しかったけど一人でも平気だった

抱きしめてもらいたかったけど
放っておかれても大丈夫だった

認めてもらいたかったけど
認めてもらえなくても強くいられた

受け入れてもらいたかったけど
拒絶されても平然としていられた


ぜんぶ、全部
頑張ってつくり続けた「私」


心から憎めば
心から恨めば
心から反発すれば

私は少しは楽になれるのだろうか


大嫌いで大好きな母への想い

不安定な「私」の本当の想い



それがいまだ私にはわからない



*過去に書いたものになります


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