俺は薬を飲まない

昼夜逆転傾向で、夜間眠らず起き出す90代のおじいさん。

転倒リスクが高く、車椅子を使用していますが歩こうとします。

最近流行りの女性蔑視があるため、女性職員の言うことは一切聞いてくれません。

男性の言うことは聞いていましたが、なぜか男性2名の夜勤帯で大暴れ。

寝ない、起き出す、歩き出す、殴るぞ・殺すぞ発言連発、警察を呼べ、訴えてやると手に負えない状況だったようです。

夜間帯大暴れしたため昼間はイビキをかいてぐっすり夢の中。

昼間寝ていては夜眠れないのは当然です。

日中刺激を与え、起きている時間を増やそうとしますが、眠りを邪魔されると怒ってしまいます。

不穏になり暴れ出しては更に厄介。施設にいる医師に相談して夜眠れる薬を処方してもらいました。

医師は寝る前に飲むようにと指示を出してくれましたが、内服を拒否されるかもしれないため、寝る前に飲んでくれなかった時は記録に残し、次の日から夕方の薬に混ぜて飲んでもらうようにと夜勤者に申し送りをしました。

処方された日と2日目は寝る前に拒否なく飲んでくれました。

寝る前で問題ないのかと思っていましたが、昨夜は様子が違いました。

スーパーベテランのお姉様が薬を渡しましたが『いらねえ』『こんなの飲まねえ』と拒否を示したのです。

胃の薬だからと伝えましたが拒否が見られ、あまりしつこくすると怒ってしまうため引き下がりました。

困ったお姉様が相談に来ました。

薬を飲んでくれず、歩こうとして付きっきりになっているとのこと。

対応する職員を替えるのは認知症にとって有効な手段とされています。

私は『任しとけ』とおじいさんのもとに。

おじいさんは女性職員に連れられ、多弁で落ち着かない様子でした。

『〇〇さん、この薬を飲んで欲しいのですが』

「俺は薬は飲まないよ。いらないもん」

職員を替えても拒否を示しました。

さっき胃薬って言ってたけど何の薬にしようかな。寝るための薬って言ったら絶対飲まないだろうし、下剤も飲まなそう。
とりあえず、医者が言ったってことにするか。実際に医者が処方しているから嘘でもないし

こんなことを思いながら、先生が処方してくれた。医者が飲んで欲しいって言ってたと説明をしました。

「なんで飲まなきゃならないの?」

素晴らしい質問をしてきました。

これは困った。飲まなきゃならない理由か・・・

きちんと説明し、納得してから飲むのは普通のことです。
医者が飲んで欲しいと言ったことに付け加えるうまい理由は・・・

💡💡💡

『こないだ採血したでしょ。そのデータが悪かったからこれを飲んでほしいんだって。何の値かは忘れたけど』

すると、おじいさんは「あぁ、した。そうか、それじゃ飲まなきゃな」と飲むと言ってくれました。

実際には採血をしてません。
具合が悪かった時に点滴をしただけです。

その具合が悪かった時にずっと寝ていた影響で昼夜逆転しているのです。

「あんたが言うなら飲むよ」と態度を変えたおじいさんは素直に飲んでくれました。

私は口下手で嘘はつけないタイプと自負しておりますが、見事に薬を飲ませるミッションをクリアすることができました。

薬を飲んだおじいさんは消灯時間には横になり、起きることなく朝までぐっすり寝たようです。

日中はレクリエーションをするなど刺激を与えるべきですが、人手が足らないと難しいこともあります。

その時は、体内時計を調整する目的で日光浴をしてもらいましょう。
日の当たる場所に並べておくだけで良いので職員が1人でもできます。

昼夜逆転でお困りのときは眠れる薬を処方してもらうのもありですが、日光浴を試してみて下さい☀️

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