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マノミコト

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こころのおくのほう。毎日更新。     マルハダカ。
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#日記

2021/10/19 「ロッソ・ノービレ」

私は何故、二年半続けていたアルバイトを突然辞めたのか。私はどうして、あの人のことを好きになったのか。それにはその時の、何かしらの理由がある。 しかし、一二年と年月を経て、その時にはなかったまた別の理由が、記憶の底から浮かび上がって来ることもあるようだ。それは何とも不思議な体験で、時を重ねてきたからこそ見られるある種の宝みたいな、パッとは手に入らない格別な貴重さを備えている。また何年後、下手すれば何十年後に。それでも出会えないかもしれないこの味を十分に堪能しておこう。 出会

2021/8/13 「探しているもの」

ずっと何かを探している。まだ見たことのない何かを求めて、歩き続けてきた。何が見たいのか。何がこの目に映れば、私は満足するのだろう。 それは多分「あい」だと思う。多分ではない。必ず、そうなのだ。まだ見たことのない「あい」。私は「あい」が見てみたい。見たことのない。これも嘘だ。見たことは、ある。一度だけ。それももう、5、6年前のこと。それでもまだ、鮮明に思い出されるあの景色。あれだけは、忘れたくない。お年を召したとして、孫ができたとして。その景色だけは語り継ごうと決めている。ど

2021/7/31「蝶」

誠に生きられたことがない。当然と言えば、当然か。誠かどうかなんて結局最後の最後にしかわからないのだから。 「恋に誠も、偽りもない。」と言われていたが、なにも、恋に限ったことではない。現に私がそうなのだ。 どんなに思い焦がれていても、涙ながらに言葉を発したとしても、何かに揺さぶられてしまえば、それは偽りとなる。いっときも誠から離れず生きることなんて可能なのだろうか。 それよりも、私の生はもっとひどいものだ。誠にできたことが一度もなく、生きてきた。誠に生き続けて来られなかっ

2021/7/17 「初心」

思って、感じ取ることが好き。面白い見方、私なりの見方は要らない。相手の本当の一部分に近づけたらそれが一番良い。これ以上の嬉しさはないのである。 「本当」に指先で触れてみたい。掌全体ではなく指先で、皮膚に触れないよう産毛だけにタッチしてみたいのだ。「本当」はきっと青い炎だ。それを守るのが皮膚で、産毛は何だろう。守ることはできないが、体温を保つために外側から柔らかに包み込むのがそれだろうか。 汚い外界の空気に全面が触れ「守る者」や「本当」が腐ってしまわぬよう、無数の仲間と、高

2021/7/12 「鋭さ」

愛が重いほど、その愛は鋭さを増して心に突き刺さってくる。突き刺された一点から涙が溢れ出るのは当然のことだ。相手は泣かせてしまった、傷つけてしまったと思ったかもしれない。でもむしろ、今は物凄く光栄なことで。それくらいの愛を受け取れるのと同時に、吐き出してしまいたいほど膨れ上がった愛を外へと自然に流してくれた。 涙が出るのは、ある沸点に到達した時だと誰かのインタビューで見た。沸点が低すぎるのか、常に沸点に近い位置で留まっているからか。どちらにしたって、とにかく沸点にたどり着く回

2021/6/21 「なんでもない日」

なんでもない日、なんにもない日、毎日がどれも大切でどれも特別で素敵な日です。なんて言えません。 何にもない日は、ゆったりとしていて楽だなと思えたり、好きな動画を何時間もぶっ通しで観られたりと癒されることもたくさんありますが、その反面。何で生きてるんだろうなとか、これからあと60年もこうやって生きていくのかとか考えてしまう日でもあるのです。 どっちに転ぶのかはその日になってみないと分からないけど。こういう時は素敵な日だとは思えません。疲れてしまうし、しんどいから。 金閣寺

2021/6/14 「感覚と経験と知識、そして共有」

いつの日かドライアイスを触った時の感覚、今日ドライアイスを触った時の感覚、明日ドライアイスを触った時の感覚。これらは完全一致せず、ずれを持って重なっていき、経験となる。 しかし、知識とは何であるか。知識とは、それぞれの感覚がずれながらも経験として重なっていった先に現れる、すべてが重なりえたところの一部分だと考えられる。「若干痛い」「ちょっと痛い」「すっごく痛い」が重なっていった時の、「痛い」に当たる感覚が知識となる筈である。つまり、どの感覚もが持ち合わせていた部分が知識とな

2021/6/13 「上の者」

守るとか幸せにするとか助けるとか、簡単に使わない方がいいだろう。それは決して、言葉にすると安っぽく聞こえるからとかいうものではない。(これは言う、言わないの問題ではなく、どのくらいの思いなしによって出来上がった思いなのか。という部分が重要だと考えられるからだ。思いなし度合いは、そこに費やした時間には必ずしも比例しないのではないだろうか。) 上の立場に上がるにつれてその数は減っていく筈だ。それなのに、少ない上の者が、倍どころではない数の下の者達を「守る」「幸せにする」「助ける

2021/6/11 「バラバラ」

バラバラにしたい。一個一個丁寧に、バラバラにしたいのだ。一語一句間違えないように音読するし、その後でもう一度、指先で文章を追いかけてノートに映していく。 二段階目の行いはまとめているわけではなく、感じようとしているのだと最近になって気が付いた。音読段階では声を通して文章を感じ、ここでは書く営みを通して、全体の世界観と、一語一句それぞれの持つ温度を感じようとしているわけだ。 正直とても愉しい。共感が得られるとは思わないが、それでも声を大にして伝えたくなった。とても愉しいのだ

2021/6/8 「創作」

クララとお日さま。村上春樹。主人公と男の子が一緒につくる場面が好き。女の子は絵を描いて、リックがそこに言葉を添えるの。後者は絵を見て書くけれど、それがすごく難しそう。よく書ける時もあれば、そうでない時もあって、たまに困っている。 でも、ジョジーは、待っていて。言葉が書き足されていくことを心待ちにしている。何なら、言葉を添えてもらうために、絵を描いているんじゃないかと感じるくらいに、待っている。 2人での創作も光景も、こちらが見ると、お花畑に包まれる空間を見ているみたいに愛

2021/6/5 「写真と文章」

私にとって、写真を撮ることは文章を書くことと同じなのか。と、こういう問いが生まれてしまったものだから書き始めた。課題も積んでしまっているし、こんな夜更けの時間でもあるし。いったい私は何をやっているんだろう。とは思っていないし。もし、「何してるの(笑)」と誰かに言われたとすれば、「何してるんだろうね。」と笑って流せる余裕と、その自信がある。何故だかは、わからない。 写真を撮ることと文章を書くこととを考えていたら、夢中と集中。この2つの語が出てきた。写真を撮っている時の私は、特

2021/6/3 「汚れまみれ」

「作り物の世界で一瞬の本物を。」「僕らの作っているものはすべて作り物。」 あの世界は真実じゃない。作っている本人達も、占い師も、父も。みんなそうやって言っていた。「嘘を息のように吐き出してる。」こんな感じで言っていた人もいたなと、眠気覚ましのカフェラテを作っている時に思い出した。スプーンで泡を混ぜる。そろそろ冷たい飲み物にしたいと、それが最近の願望。 作り物の中に本物を。ってこれはすごく面白い。その一瞬があるらしい。私にはわからない。でも、その瞬間が好きだと言って、それを

2021/5/31 「叶えたい夢」

もし、自分が本当に夢を叶えたら。自分のやりたいことをやれるようになったら。誰か涙を流してくれるような人は目の前にいるのだろうか。ふとそんなことを考えてしまったわけである。そんな暇はないというのに。調子に乗ってしまっているのかもしれない。 これだけやってきて、やっと夢が叶うという時に、自分以外の人が一人も喜んでくれないかもしれないという光景を想像すると悲しくなった。想像できてしまったことが何より私を苦しめた。 もし本当に、つくることができて名前が載ることになって、本当にそれ

2021/5/27 「人生とは舞台」

水を汲みに来るお客さんの姿が映る。コップを探していたけれど、見つけたみたいだ。自分の分と友人の分。あ、注ぎ口もう少しちゃんと閉めて。と心で伝えてみる。あ、後で、閉めに行こう、と心に刻む。 カップルで来たお客さんが席移動の希望をお願いしてくる。もちろん、オッケーである。お二人のために、と思い、流し入れた生地はいつの間にかきつね以上の色になっていた。まぁ、大丈夫だろうと思いながらも若干の不安を抱えたが、上からかけていくメイプルシロップにいつも以上の愛を込めて上書きすることにし