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2021/10/19 「ロッソ・ノービレ」

私は何故、二年半続けていたアルバイトを突然辞めたのか。私はどうして、あの人のことを好きになったのか。それにはその時の、何かしらの理由がある。

しかし、一二年と年月を経て、その時にはなかったまた別の理由が、記憶の底から浮かび上がって来ることもあるようだ。それは何とも不思議な体験で、時を重ねてきたからこそ見られるある種の宝みたいな、パッとは手に入らない格別な貴重さを備えている。また何年後、下手すれば何十年後に。それでも出会えないかもしれないこの味を十分に堪能しておこう。

出会いの味わい。

この言葉を書き記す今。すべてが、様々な工程を流れてきたそのすべてが、一番最後の場所に流れ着き、そして美しくなり、完成した姿を、今あるこの身で香るのだ。

あの時、あの場所で、引き寄せられて出会ったあの香りを今、自分の身を通して感じている。未熟な出会いから、晴れて、この瞬間にたどり着いたらしい。

多くの人々が愛を寄せるのも頷ける。何度だって振ってやる。きっと彼等の中には、何か大事な出会いを、宝を見つけた人達が幾人かいて、その人達はきっと狂ったように心を奪われているのだと思う。そのくらいの洗練された美しさが、この出会いにはある。何年も何年も、手掛けて生まれた、初めての香り。

「たられば」を考えれば考えるほど、今あるこの事実っていうものがめちゃくちゃ愛おしくなってくる。

この、愛おしさ。というものが、キラキラと瞬く輝きの根源なのだと思う。いつまでも輝き続ける、宝の出会いだ。出会いに、愛おしさ。この組み合わせに、私は不思議を感じたのだろう。

今ある事実。

私は何故だか、せっかく手にした内定を蹴り飛ばし、ゴルフ場のキャディさんと、バーテンダーという職を選んだ。何故だか、は嘘。それなりに覚悟して、知る由もない未来の自分の姿をみて、この道を選ぶことに決めた。

それでも、どうしてこの二つに行き着いたのか、と問われれば、これは私にとって、宝の出会い。と答える。

また、大口だけ叩いて思うようには進まないかもしれない。でもそれとなく、この二つの職は私のこれまでの色々な要素を含んでいて、それがどうも気になるのだ。


またね👋





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