いち香

主に闘いの記録を書きます。あとは、たまに考えたことや感じたこと。

いち香

主に闘いの記録を書きます。あとは、たまに考えたことや感じたこと。

マガジン

  • 私の蝶々がいなくなった。

    甲状腺がんと私の記録。私が経験したこと、感じたこと、考えたこと。古いものが上に来るように並べています。

  • 嬉しかった言葉集。

    病気が見つかってからかけてもらった、嬉しい言葉たちを集めました。メイン投稿の間に、気まぐれで挟んでいきます。

  • 箸休め。

    短めのエッセイ。日々のことや、私の頭の中。

最近の記事

  • 固定された記事

私のこと。

きっかけ  2023年12月、病気が見つかりました。甲状腺がん。それが私に見つかった病気の名前です。病気について詳しいことは、別の記事に書きたいと思います。  病気のこと、病気をきっかけに感じたことや考えたことを発信するかとても悩みました。悩んで悩んで、私の経験が誰かの支えになったらいいなと思い、書くことに決めました。やってみようと少しでも思ったのなら、挑戦してみる。病気になってから変わったことのひとつです。  ここには、病気が見つかるまでの経緯や検査、治療の話、私が感

    • 声が戻るまで。

      退院後に1番困ったこと  退院してまず困ったのは、声がカスカスで上手に話せないことでした。声量もかなり落ちていて、ざわざわしたお店の中にいるときや道を歩きながらだと話すのが難しかったです。手術したことを知らない人が聞くと驚いてしまうくらいのかすれ具合。相手が「声どうしたの?」と聞いてこないかな、聞かれなくても不思議に思っているだろうな、気を遣わせて申し訳ないな、など色々考えてしまって。神経を使いながら話すのがしんどくて、あまり話さないようになっていました。  入院中に話し

      • 「がんばったね。」

        「がんばったね。」  心にすんなり入ってくる言葉です。「頑張れ」よりも「がんばったね」と言われる方が、私は嬉しく感じます。「頑張れ」と言われると「もっと頑張らなきゃ!」と思うし、限界が近いときに言われると「もう頑張ってるのに…。」と感じてしまうので、「頑張れ」はあまり好きではないのです。「頑張れ」が嬉しいときも、もちろんありますが。言うのも実はあまり好きではありません。他にいい言葉が見つからなくてつい使ってしまうことがあるので、気をつけています。  「がんばったね」とよく言

        • 踏み切れないのは。

             あぁ、病気になったことを封印してしまいたい。  初めてそんな風に感じて、自分で自分に驚きました。全部無かったことにしてしまいたい。「手術をする前とまったく変わらない私だ。」と思い込んで生きていたい。でも実際は難しいでしょう。毎日薬を飲んで、定期的に病院に行かなければいけません。どちらも元気でいるために必要です。手術の痕は残っているし、首元を触れば甲状腺がないと分かります。手術前には戻れない。ただし、病気になったことを封印しようと思えばできるでしょう。でも、記憶の箱の

        • 固定された記事

        私のこと。

        マガジン

        • 私の蝶々がいなくなった。
          33本
        • 嬉しかった言葉集。
          5本
        • 箸休め。
          9本

        記事

          退院の日。

          眠れない  朝4時頃に目が覚めました。いつもは途中で起きてもすぐ眠れるのに、この日は1時間経っても寝付けませんでした。退院に向けての不安が大きかったのかもしれません。病棟が朝モードになるまであと1時間。個室とはいえ、かなり早い時間に部屋の電気を点けるのは抵抗がありました。どうするか悩んでいたとき、前の晩に「早く起きてしまったらナースステーションに来ていいよ。」と看護師さんが言ってくれたのを思い出して、病室を出ました。  部屋を出たものの「起きてしまって眠れない。」と看護

          退院の日。

          可愛がられ分析。

           私の場合、看護師さんたちに「よくしてもらった」より「可愛がってもらった」の方がしっくりきます。どうして可愛がってもらえたのか。理由にいくつか心当たりがあるので、分析してみたいと思います。  突然ですが、看護師さんたちのことを書いたら書きたくなったので。やってみます。 その1、幼い  可愛がってもらえた理由として、これが1番大きいと思っています。入院当時、私は22歳。同じ時期に入院している人を見る限り、断トツで若かったです。おそらく私はどの看護師さんから見ても年下でし

          可愛がられ分析。

          感謝の気持ちを乗せて。

          みんなに感謝を伝えたい  退院前日の夜。れごさんが来てくれたことも、私に伝えてくれた言葉も嬉しくて。かけてもらった言葉を忘れないように何度も思い出しては、その度に泣いていました。退院が決まってからたくさん流した不安の涙ではなくて、嬉しい涙でした。たくさんの看護師さんが気にかけてくれたのが嬉しい気持ち。看護師さんたちと会えなくなるのが寂しい気持ち。退院するのが不安な気持ち。色々な感情が渦巻いていましたが、れごさんのおかげで退院が決まってから1番元気になっていました。  明

          感謝の気持ちを乗せて。

          そばにいてくれること。

          密かな楽しみ  ずっと書きたかった、看護師さんたちの話です。患者側として看護師さんを見るのはとても新鮮で、看護師さんを観察するのが毎日の楽しみでした。  どの看護師さんも親しみやすく、丁寧に接してくれました。そのなかでも、話しやすい人と少し話しかけづらい人がいました。話し方、選ぶ言葉、雰囲気、表情や仕草。たくさんの要素が、その人の「看護師像」を作っていました。  たとえば、受け持ち前に挨拶に来てくれる看護師さん。「お昼担当の〇〇です。」というように、受け持ち前に一言ご

          そばにいてくれること。

          笑ってね。

          退院まであと2日  術後9日目、入院11日目。この日は決まった時間の検温以外に何も予定がなかったので、ゆっくり過ごしました。本を読んで、友達と連絡を取って。久しぶりに穏やかな時間が流れていました。  この日の日勤さんは、受け持ち回数おそらく最多の方でした。退院に向けた不安を初めて打ち明けた看護師さんです。私は心の中で、「れごさん」と呼んでいました。あだ名の由来は秘密です。れごさんとは関わる時間が長かったので、徐々に仲良くなっていました。今日日勤ということは、明日は夜勤か

          笑ってね。

          退院したくない。

          守られた場所  私はかなり入院生活を楽しんでいた患者だと思っています。病院は、そんなに考えなくても快適に生活できる場所でした。日々の小さな選択すらしんどく感じていた私にとっては、とてもいい環境だったのです。  消灯時間と起床時間が決まっているので、特に考えなくても起きられるし寝られます。入院している間にアラームをかけることは一度もありませんでした。毎日決まった時間にバランスの取れた美味しいご飯が3食出てきて、献立を考えたりお皿などを洗ったりする必要はありません。お風呂と

          退院したくない。

          決まっていく。

          精神腫瘍科  本題に入る前に、精神腫瘍科について少し説明。「がん患者さんと周りの人を精神的な観点から支えてくれる医療者がいるところ」と私は捉えています。  お昼前に、精神腫瘍科の先生が来てくれました。昨日話を聴いてくれた認定看護師さんも一緒です。来てくれるのが早くてびっくりしました。私と話した後、受け持ちさんがすぐ連絡してくれたのでしょう。話しやすい先生でほっとしました。仕事への不安、今の状況を親へうまく伝えられないことについて相談しました。先生からは、「診断書は出せ

          決まっていく。

          「あなたのつらさは、あなたにしか分からない。」

          「いち香さんのつらさは、いち香さんにしか分からない。」  退院が決まってからぼろぼろの私に、受け持ち看護師さんがかけてくれた言葉です。この言葉をかけてもらったとき、私のことを理解してくれた感じ、看護師さんと通じ合えた気持ちになれたから嬉しかったのです。  学生のとき、実習中に「今、患者さんと気持ちが通じ合ったな。」と感じる瞬間が何度かありました。心がじんわり温かくなるような、言葉では表現できない不思議な感覚でした。でもそんな経験ができたのは、ほんの数回。どれも一瞬の出来事で

          「あなたのつらさは、あなたにしか分からない。」

          分かってもらえた。

           術後8日目。入院中最も気持ちがしんどかったのはこの日でした。次の記事くらいまで、明るくない話が続きますがご容赦ください。 気持ちが沈んだまま  朝起きてすぐにバイタルサインを測ってくれたのは、お兄さんナースでした。まだ太陽が顔を出し切っていない時間帯。「昨日しんどかったって聞いたけど、どう?」と尋ねてくれました。一晩眠ったら少し気持ちが楽になった気がして、「昨日よりは少し元気。」と答えました。少し話した後、「心までしんどくなったら大変だから、僕は休んだらいいと思うよ

          分かってもらえた。

          つながることの安心感。

          抜糸  術後7日目の夕方、処置室に呼ばれて主治医に抜糸をしてもらいました。痛みはほとんどありませんでしたが、処置されている部分がまったく見えないのがやっぱり怖かったです。私の顔がこわばっているうえに身動きひとつしないので、看護師さんが声をかけてくれていました。抜糸後、朝の採血結果について主治医から聞きました。「副甲状腺がしっかり残せたので、カルシウムを補充する薬は少しずつ減らしましょう。」とのことでした。薬が減って、少し嬉しかったです。抜糸後初めてのお風呂はドキドキ。泡

          つながることの安心感。

          話してもいいんだ。

          私の不安  術後7日目、抜糸の日です。前日の夜に「不安を感じている。」と看護師さんへ伝えられたものの、落ち着かない気持ちで過ごしていました。  朝ご飯を食べ終えてしばらく経ったころ、日勤の看護師さんが来ました。体温や血圧を測った後に、「『仕事できるか不安。』って昨日の夜勤担当が聞いたみたいだけど、具体的にどんなことが不安なの?」と聞いてくれました。ここで初めて、今抱えている不安について看護師さんに詳しく話しました。仕事を始めるだけでも不安なのに、万全の状態で働けないのが

          話してもいいんだ。

          きれいな人。

           ミモザを見ると思い出す人がいます。  私の大学生活の半分以上に関わった人で、いつ会っても変わらない人。「心の声を聴いてね。」と伝えてくれた人。彼女といても「今日はあまり機嫌がよくなさそうだな。」とか、「疲れているのだろうな。」と感じることがないのです。彼女も人間なので機嫌がよくないときも疲れるときもあるのだろうけれど、あまり人には見せないのだと思います。相手の様子を敏感に受け取ってしまう私には彼女の在り方がとても心地良くて、よく頼っていました。取り留めのない話も、真面目な

          きれいな人。