短編小説:「空に近い場所」
こんなに長い時間車に乗るのは久しぶりだ。家を出てから4時間以上が経っていた。カーブ続きの道は車酔いしそうで、開いていた塾のテキストをしぶしぶ閉じる。
「あとどれくらいかかるん?」
「20分くらいしたら着くよ。おばあちゃん、楽しみに待ちゆうって。」
「うん。」
聞き飽きた音楽に耳を傾ける気にならなくて、ぼんやりと窓の外を眺める。ずっと同じ景色だ。どこを見ても、所狭しと木が並んでいる。
おばあちゃんに会うのは3年ぶりだった。手紙や荷物が来るし電話もするけれど、久しぶりに会うから