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現場を「経験しに行く」ということ

エンジニアからCSへの転身を経て、はや5ヶ月目に入り、その内容をnoteにしたためてから、もう1ヶ月が経ちました。
この1ヶ月も顧客と向き合いながら、社内とも向き合いながらCSチームの立ち上げとオンボーディングの日々でした。

今回は転身前からも行っていた「現場訪問」を経てそれを行っていなかった頃のエンジニアとしての自分と、訪問を通じて進化したエンジニア/CSとしての自分についてお話し、「現場訪問」を経て気づいたCSとして重要な「顧客理解」についてお話しようと思います。

今回は

・今、作っているプロダクトの正しさに違和感を持っている
・顧客の生の声を得るハードルを感じている

という方達に向けて、「顧客と会うこととは」をお話しします。


現場を見ていないエンジニアはどうしていたか

自分語りから始まりますが、2014年から事業会社のグループ子会社にエンジニアとしてジョインし、キャリアをスタートしました。
そこから4年半、フリーランスになってからの2年ちょっとは顧客に一切会うことなくプロダクトを開発していました。
最初の頃は疑うこともなく、PMが作成した仕様書に沿ってシステム開発を行っていました。
ある日ふと「ここの動き、明らかにこっちにした方がユーザーは使いやすいよな」という部分があったのでPMに相談しました。しかし、返ってきた言葉は「いいのいいの、営業がこうだって言ってるから」という、何の根拠もない返事でした。

この体験を境に「正しいものづくりへ」への考え方が強くなり、逆にPMや営業が作った仕様通りにシステムを開発することへの違和感がつのりました。
ただ、当時は新卒ペーペー。保守的だった自分は、違和感がありながらも、言われた仕様を再現するコーダーの動きをしていました。

初めての現場訪問

それから時がたち、弊社にジョインすることになるのですが、その経緯や意思決定については以下をご一読ください。

ジョイン間もない副業エンジニアだった頃に、その時が訪れました。
2021年12月某日。
転職先探し以来のスーツに身を包み、人生で3度目くらいの新幹線で向かった先は東北。
そこには弊社プロダクト「MediOS」をリリース初期の頃から愛してくれている外科の先生がいらっしゃいました。
病院という場所に患者やお見舞い以外で行くのは初めてで、診察室のさらに奥まで入ることは緊張と期待でドキドキしてしまいました。

美しいさくらんぼがお出迎え

今回の訪問理由は現場での利用シーンの見学とそのほか利用時の課題ヒアリングでした。

自分が開発したサービスを顧客が触っている姿を見ることが、ここまで嬉しく、モチベーションに直結することなのかと、衝撃を受けました。

加えて、手土産としてメールで聞いていた使いづらさの部分を新機能で改善してたものも提案しました。その際に
「おおーー、この機能、すごくいいよ」
という感想をいただき、すごく嬉しかったことを今でも覚えています。

帰宅前に新幹線駅で食べたとんかつは格別でした。

山形駅内のとんかつ屋さん

印象的な訪問

その後も、エンジニア、PM、Sales同行、CSなど様々な立ち位置で大規模病院からクリニックまで、色々な顧客のもとへ訪問させていただきました。

その中でも印象に残っている2件についてお話しします。

看護と医療の違い

前半は端末が置かれた4畳くらいの控室で、実際の利用方法を見学させていただきました。その流れで弊社の訴求ポイントや開発方針について顧客目線でどのように感じているかをヒアリングさせていただきました。
内容的に全てをお話しできませんが、かいつまんでお話しします。
※ ある顧客の見解です。会社全体の考え方ではありません。

帰宅前にピカチュウに挨拶
  • 動画というソリューションは素晴らしい。業務効率化と患者さん満足度の両方を叶えられる。

  • 医師目線では説明時間の効率化、看護師目線では説明の均質化(医師ごとに「話した、話してない」ということがない)

  • 動画の作り方に関して、看護で利用することと医療で利用することを考えると、求められることは変わってくる。

  • 医療従事者は基本的にはフリーランスの集まりに近い。みんな国家資格を持ち、その資格を活かせる場所で働いている。

  • その中でも看護は患者さんへの寄り添いが求められ、医師は技術の提供を求められる。

  • それに伴って動画も看護のための動画には、その看護師の顔を出すなど、ブランディングがあるといい。

あるお一人の医療従事者の考え方という前提ではありますが、生の声として衝撃的な内容でした。
医師と看護師の業務が異なることはもちろん理解していたものの、そこからの患者さんとの関係性の違いから、病院(経営)から求められていることが大きく異なるというのは新鮮な情報で、今後の顧客理解やプロダクト開発の糧になる内容でした。

何より、ここまで熱量高く、医療従事者が業務に向き合うときの思想についてお話ししてくれる看護師さんに、とても感謝しております。

現場のリアルな業務

この日は長野県のとある病院へ。以前のnoteでお話しした8月ジョインのCSメンバーの初めての訪問でした。
この日は4時間という長い時間を麻酔科医師の控室で過ごさせていただき、導入前の診察の現場の見学と、スキマ時間でのプロダクト紹介を行いました。

この長い時間を医師たちが業務している場所で過ごすのが初めてで全てが新鮮でした。

  • 診察に向かう医師(そのためにPCに向かい、事前情報をチェック)

  • 診察から戻って問診内容を電子カルテへ転記する

  • 様々なモニターに映る本日の予定(オペ情報、外来業務の一覧)

  • PHSを利用した院内コミュニケーション

  • 救急患者さんの受け入れ体制の打ち合わせ

などなど、リアルな業務がすぐ横で繰り広げられていました。
面談やオンボーディングで見聞きする切り取られた一部の業務ではなく、1日のフローとして見学することで、今後の顧客理解の助けになるのではと感じました。
ご協力いただいた病院様には、とても感謝しております。

またカツ。とんかつ大好き。

顧客理解

CSとして現場への訪問を重ねるにつれて、さらに「顧客理解」の重要性を再確認することができました。
このことについては、CS立ち上げnoteの3時限目で触れておりますので、ぜひご一読いただけると幸いです。

このnoteを出してから早1ヶ月ちょっと経ったので改めて顧客理解の重要性を、それができている状態とできていない状態を比較しながらお話できればと思います。

できていない状態

「顧客理解」ができていない状態でのCSが「理解」できるものは以下2点です。

  • プロダクト理解

  • 事例理解

toBのバーティカルSaaSの場合、顧客の業務やそれを実行している際の想いを理解していない状態で提供できるCSの価値は「操作説明」のみです。
顧客のことは理解していなくても最低限自社プロダクトを理解していれば、その使い方だけはレクチャーできます。が、それであれば取説で十分です。
もう一つ、「事例理解」をしていれば、過去の顧客事例から利用フローを紹介することはできます。ただしこちらは、上記のnoteにも書いておりますが医療機関ごとにフローがまちまちなため事例として十全ではない今のフェーズでは特に武器としては弱いです。

できている状態

顧客理解ができている状態であれば、できることは格段に増えます。
プロダクト理解、事例理解に加えて顧客理解が進んでいる場合にできることは以下です。

  • 顧客のサクセス(ライトサクセス、ディープサクセス)の定義

  • 各顧客に適した運用フローの提案

  • 追加機能の提案

顧客の本質的な課題の部分を理解することで、プロダクトが提供する価値の中で一番その顧客の課題解決にマッチする提案を行なえます。
例えば...

【課題が「診察に時間がかかることによる他業務の圧迫」の場合】
動画説明機能を診察前に使っていただくことで診察時間の効率化を図ることができます。

【課題が「患者さん満足度の向上」の場合】
診察前という時間軸に拘る必要はなく、手術に同意するまでに自宅で落ち着いて、あるいはご家族と一緒に動画を視聴していただくことで納得感のある意思決定ができるようなフローを提案する。

これらは、顧客(現場医療スタッフの方々)がどこに重きをおいているか、また実際の現状の院内業務フローなどを理解することで適切な提案を行うことができます。
さらにここに「病院経営に関わる方の想い」の理解が加わることで、さらなるディープサクセスに向けた提案も可能になります。ただし(今は)ライトサクセスが前提にあると考えています。

機能的に書いてきましたが、最終的に人間は「想い」「感情」の共有を大事にしていると考えています。
「顧客理解」はビジネス的なお付き合いにおいてその最たるもので、「何もわかってないな」という人に、自分たちが誇りを持って行っている仕事に対して、「こうやったらもっといいです!」とか「ここ改善できます!」とか言われたくないと思います。
その様な表層的な「説明」ではない、同じ医療現場をより良くしたいと思う仲間としての「提案」を行うために、顧客理解を進めるというのはとても重要なことです。

顧客理解へのアクション

では実際にはどのように行っていくのか。
これはこの後にも繋がりますが、現状は「ヒアリング」一本だと考えています。
ちょっと矛盾がありますが、顧客との一定の関係値があればプロダクトに対するコメントを良いも悪いももらうことができます。これをなにかの仕組みだったり、型にはまったきれいな「アンケート」で取りに行くことは(まだ)できません。
それはMediOSがまだまだ成熟していないプロダクトであるということと、弊社の大きな枠での「顧客理解」が済んでいないことに起因します。
100点でわかっていればあとは効率的に収集するだけですが、今はそうではなく100点がどこにあるかを探しに行っている段階。まずは泥臭くても顧客との「対話」を大事にし、現地訪問やオンライン面談、電話等なんでも使えるものは使って聞きに行きます。
その際に大事にしている質問は

  • MediOSが今なくなるとしたらどう感じますか?

  • MediOSで今、一番価値を感じている部分はどこですか?

  • MediOSにより価値を感じられるようになるには何が必要ですか?

の3点です。これで現状と未来への期待値を確認します。

1つ目の質問はどちらかというとフィルターに近いです。
ここで「とても残念」と答えていただけない場合は、「価値」云々の前に突破すべき障壁等があるはずです。そこを確認した後に後者2点で現状と期待値を確認しています。
これらを現場の各部署(医師、看護師、その他のスタッフの皆さん)に聞くことで様々な角度からお話を聞くことができます。

顧客訪問への意識

顧客の皆様に現場を見させていただく際の意識について、最後にお話します。

このフェーズの顧客はファン

まだまだ知名度に乏しいスタートアップのプロダクトを利用していただいているということは、プロダクトの「本当の価値」を感じていただき、継続して利用してくださっていると考えられます。
もちろん「お客様」であるという前提は変わりませんが、そこには一定プロダクトとそれを運営する会社を「応援」するという気持ちも持ってくださっていて、胸を借りることができる方々が多くいます。
訪問時に現場を見学させていただくことや、新規プロダクトについてのヒアリング、導入事例へのご協力など、臆せずにまずは一言お願いしてみることが顧客理解、ひいてはプロダクトの進化、営業の武器へと繋がります。

自分たちのリソース

オンラインでのやり取りが増えた昨今ですが、訪問にはそれにはない「移動」という時間とお金がかかります。そして、リアルタイムな対応力がより求められます。
相手の時間も使わせてもらっていますが、自分たちの時間も多く使っているという意識を持ち、その時間の最大化を常に狙っていく意識を持つことが大切です。

  • メインテーマ(訪問の軸)を常に意識しておく
     その場での対応が求められ、相手は通常業務の中(合間)に時間を作ってくれています。その限られた時間の中での即興性が大切になってくるので、常に頭の中に軸を持って「次の隙にこれを聞こう」「XXという返事だったら軸であるYYに向かうための最大を狙おう」など、短時間で最大の打ち返しをするための判断基準を明確にしておきましょう。

  • 貪欲に握りに行く
     訪問はリアルで相手の顔を見ながら会話できる貴重なタイミングです。機微な握りを行うために適した場面なので、次のアクションの握りや面談の主軸にならないけど、ポロッとでてくる本音を取りこぼさない意識で部屋までの移動やエレベーターの中も効果的に使いながら貪欲に泥臭く懐に入り込みましょう。
    (もちろん、お相手に失礼がない範囲という前提です)

まとめ

CSに転身する前から前のめりに参加させていただいていた現場訪問。
そこで得た喜び、新たな知見など、感じたことをお話ししてきました。
現場を理解し始めるまでと、その前まででは明確に「顧客への向き合い方」が変わりました。
まだまだゴールの見えない領域ですが、CSがいる価値として顧客と真摯に向き合い、よりプロダクトの価値を深く提供していくというきっかけを現場を見ることで掴むことができました。

医療現場へのCSという領域で戦っている、エンジニアからCSに転向することで見える視点などなどに興味のある方はぜひお話しましょう。


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