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なぜ10人規模のスタートアップが「経営企画室」を立ち上げたのか


管理部門に悩むスタートアップ

スタートアップにおいて、いつバックオフィスあるいはコーポレートと呼ばれる管理部門を作るのか、というのは今もなお、答えが出ていない問題です。

そのなかでもContreaではシード期に経営企画室を立ち上げました。
今回はその理由や、Contreaが経営企画室で何を目指し何をやっているのかについてのお話をしていきます。
スタートアップ経営者の方や、1人管理部門の方、あるいは少し規模が大きくなってきたなかで「何でも屋化」したチームに悩みを抱えている方に届いたら嬉しいです。

改めまして、Contrea株式会社執行役員経営企画室長兼VPoHRの西尾輝と申します。自分でも肩書きが長すぎるなあと思っているので、もし肩書きで呼び合いたい方がいたら「執室(しつしつ)」とか「画P(かくぴー)」とか好きなところを切り取ってください。
これまでの経歴についてはこちらにまとめてあるのですが、簡単に言うと人事や経営企画のキャリアを歩んでから会社を立ち上げてContreaで経営企画室を立ち上げた人です。

さて、昨今スタートアップの数は右肩上がりで増えており、その存在感やイメージはかつては一発逆転的なものでしたが、今では、新たな社会意義や次の時代を見据えたインパクトをもたらすものとして、エリート的でキラキラした見られ方のほうが強くなっているように思えます。ただし、このイメージの変化は、「より優秀な人は、右も左もわからないようなスタートアップには飛び込んでくれない」と危惧したいろんな方々の必死のブランディングによるもので、スタートアップの「石にかじりついてでも明日を拓く」という実態は、今も昔もあまり変化はないでしょう。
ただ、そうしたスタートアップの時代の変化によって、新たなものを生み出すという攻めの側面が期待されるようになっただけでなく、社会全体として社会的意義やコンプライアンス意識の強化などの守りの側面も同時に強くしていくことが求められています。

そもそも管理部門はかつてはコストセンターと呼ばれ、誰かがやらないとどうしようもないけれど誰がやるにしても時間の無駄になるようなタスクの処理をやるところから出発していたのですが、こうした社会の変化からも管理部門の価値が上がってきているのは間違いないでしょう。
また、管理部門人材は本来であれば性質上守りの側面が強く、資格などを手にしながら固くキャリアを歩みたい人が多いため、先行きの見えないスタートアップに飛び込むことは稀だと言えます。スキルフルな人材の選択肢としてスタートアップが入りにくいことで、スタートアップの管理部門のなかで明確なミッションを掲げ、また実際に何かを生み出そうとする余裕があるところは非常に少なくなっています。

さらに、これまでの常識的に、「管理部門というのは最低限のコストで抑え何とか企業が運営できていれば良い」という思想を持つ企業はまだまだ多く、そういったところからも管理部門の可能性について言及している人や媒体自体まだまだ少ないというのが現状です。
もちろん、専門書に触れればそれぞれがその重要性を説いているのですが、そりゃ専門家だからねというところで、実際に管理部門を投資対象として考える企業はほとんどないのではないでしょうか。

しかし、管理会計は会計や契約書、人事情報など取り扱いを間違えれば会社に危機をもたらすようなものを処理しており、つまり経営において重要な一手を打つことが出来る膨大な情報が見えているということでもあります。管理会計が処理する情報こそが経営において攻めの一手になりうるというのは、一定大きくなり上場が見えた企業では多く語られる話題でもあります。

Contreaではどのようにコーポレートが発足したか

前置きが長くなりました。
では、Contreaではどうしたのか。

私がContreaにジョインしたのは昨年2022年の10月でした。当初は、管理部門全体というよりはHRマネージャー的な期待で関わりはじめましたが、入ってみるとさら地どころかむしろ何かやろうとした気配だけがあったために、片付けから始めないといけないコーポレートの地獄みたいな光景が広がっていました。
おそらく、管理部門経験者は何も無いことよりも、少しだけ何かやられているほうがキツいというのは共感いただけると思います。
そのため、HRどころではなく、まずは社内のお片付け責任者として飲めないブラックコーヒーを飲み干して、脱ぎっぱなしの靴下やホコリだらけの本棚をどうにかするところから始めました。まさにラヴ・パレードです。

入社時期のContreaを示した図です

バックオフィス機能の片付けを進めていくなかで、事業の方向性への理解、経営計画への理解を深めていき、人員計画を考える中で、管理部門が大きな穴となって会社に立ちふさがるイメージが強まっていきました。また同時に、経営の意志決定のなかでも明らかに管理部門の知識や視点の足りなさから、手元の狂った判断が起きるということが事象としても現れ始めていました。
ヒヤリハット的なもの、インシデントまで上がったものもそうですが、過去複数の企業で、30人、50人、100人を超えていく過程で管理部門がズタズタだとその整理や立て直しに年単位かかることを実体験としても見てきたので、ここを見過ごすことは未来への大ダメージを想起させるものでした。

また、会社の打ち手としてPublicAffairをやる可能性も出てきたことで、なおのこと私1人での管理部門は不可能というところから、2人目を早々に採用することに決め、2人目の入社とともにコーポレートという名称から経営企画室へと名称を変更しました。

そもそも、経営企画室とコーポレートで何が違うの?というと、大前提としてこれらに大きな違いはなく、それぞれが独自に好きなことを言っています。そこで、私としてこれらをどう分けて、その上でなぜ名称変更をしたのかをお話していきます。

なぜ「経営企画室」へと名称変更したのか

まず、「コーポレート」は管理部、経営管理、バックオフィスDivなどに化けながら一律「守り」を主なMissionとして掲げているチームのこと、と定義します。この時点で「は?うちらは攻めもやってっし」という方も、一旦最後まで読んでいただけると幸いです。

一方で、「経営企画」とは中長期的な経営計画に基づいて経営資源の配分を考え、同時に現時点や過去の実測、資源の状況や市況から経営計画を予測し直すチームのことです。
つまりは「コーポレート」とは正しい数字や契約などを揃える状態にすることなのに対し、「経営企画」はその数字を用いて戦略を作り実行するもの、と私は考えています。

管理というものそれ自体を目的化するのではなく、あくまでもあらゆる施策のための土台である管理をするため、経営企画の一部業務が経営管理、コーポレートであるというのが私の考えで、チームミッションもそれを前提に作られています。

◆経営企画室のミッション
財務資源と人的資源の最適化を行い、経営のポテンシャルを最大限まで引き上げる

◆経営企画室のバリュー(価値)
・全社の経営戦略の最大化
・売り上げの向上
・人的資源の最大化
・守りの体制の構築

◆なぜ経営企画室に名称変更するのか
 ① 上場準備に入るまで守りよりも攻め中心の組織体制にするため
 ② 実態として攻め(売上げ向上)の施策中心の組織となっているため
 ③ コスト部門・運用部門にしないため
 ④ 垂直型のジョブ組織ではなく水平型の戦略組織にするため
 ⑤ 経営メンバーを輩出する組織とするため

◆経営企画室の機能
 ① 経営企画
 ② 事業企画/営業企画
 ③ 組織戦略/採用計画
 ④ 公共戦略(PA)
 ⑤ 広報PR
 ⑥ 経営管理(情シス、経理、財務、法務、労務、総務)
 ⑦ いずれにも該当しない横断型プロジェクトの推進

とはいえこのフェーズで考えれば、最初にやるべきことは経営管理的な業務が主であり、経営企画と名乗るには及ばない部分が多々あることは重々承知です。
それでも目の前の業務一つ一つが最終的にどのような価値をもたらすのか、ということについてはチーム全員で共通認識を持ち、管理するための仕組みづくりではなく、会社を伸ばすための管理体制の構築ということを常に前提と出来るチームづくりのための名称変更というのが意図となっています。

実際に2人目のメンバーが入社した4月からでも、評価制度の制定や人員計画の策定、HubSpotを用いた営業企画体制の構築、ISMSの資格更新、原価計算を含めた管理会計の構築などもの凄い速度で経営企画室として管理にとどまらない業務にアプローチが出来ています。
このフェーズでは早いのではないかという意見があることも承知のうえで、今からやることでこのフェーズの時点で入ってくるメンバーの戦力を最大化し、効率の良い仕組みをつくり、来るべき壁に対する予防を事前にするという意味では1年後、2年後必ず花が開く動きだと考えています。

ただ、名称変更し掲げたミッションを変えたからここまでの速度でアウトプットが出せているわけではなく、チーム発足以降狙った以上の成果が出し続けていられるのには3つの要因があります。

どうして早々に経営企画室が機能しているのか

経営企画室を最初から機能させるポイント


・2人目として誰を採用するか
・インターンメンバーをどう最大化するか
・経営者含め社内にどう理解してもらうか

1つ目は、私が経営企画室にしようと思った最大のポイントで、この採用でいわゆる垂直型のキャリアを築いてきた人が入社する場合は管理部門としての強化を優先しようと考えていました。しかし、それだとバックオフィスの販管費がただ重くなるだけで、攻めに転じるには年単位で先になり、一方で私だけでは膨大な処理をしながらHRのところまで手を伸ばすのが関の山というのが見えていたため、選択肢があるようで、選べるのは「横断型のスキルと素養を持ち、スタートアップでも楽しめる人」の採用一択でした。
本当に幸運なこと、営業企画や事業企画に知見が深く、法務や会計の素養もある鈴木が入社してくれたことで、これ以上にない最善のチーム体制を描くことが出来ました。
3人目以降についてはまだ思案していますが、3人目以降になれば誰が入ってくれるかによって取れる選択肢も変わるため、本当の意味で複数のパターンが存在すると思っています。

言いあうことも多いけど、攻めの経営企画室として事業の推進を担ってます

2つ目がインターンメンバーの最大化で、コストは抑えたいけど成果を最大化したいスタートアップにおいて、優秀なインターンの採用とその最大化は差別化の最大のポイントにもなりえます。Contreaでも創業初期からインターンが数多く関わっており、私が入社してすぐの時にも2名のインターン生とコーポレート体制の構築をしていました。1名が卒業し社会人となり、新たに1名が3月に入社、さらに7月に1名が入社というなかでインターンメンバーが経営管理のいわゆる守りの部分の多くを担い、その上で原価計算の構造やISMSの取得、HubSpotの構築などもインターンたちによってアウトプットが出されているというのがここまで速くかつ質の高いチームとなったところに起因しています。彼らがなぜここまでの活躍をしているかはまた別途で考察していきます。

学生としてではなく、一主力として担ってもらってます

3つ目の社内の理解というは、正直これ次第で経営企画や管理部門はストロングポイントにもウィークポイントにもなるものです。事業やプロダクトでも日々小さな方向修正を繰り返しながら飛んでいるのに、遠くの未来で得られるかもしれない恩恵をどこまで信じて任せることが出来るかというのは、経営企画室のメンバーの力量だけではどうにも出来ない問題です。
Contreaの強さは代表の川端を筆頭に、未来で大きく花開くものに対して期待を持ち、信じぬけるというところにあり、経営企画室の発足とその活躍は社内理解なしではありえないものでした。
実際に私を執行役員にしたことも会社としての意志の現れだと考えていますし、また社内表彰制度における1号としても鈴木が選ばれるなど、全社として目を向けてもらえる環境であるのは事実です。

スタートアップのあるべきとしての経営企画室

そもそもスタートアップの役割自体が攻めであり、守りを主とするのは大企業の役割だと言っていいでしょう。
大企業がその資本や資源を使いながら大規模な雇用を守り、市場を守ることで、スタートアップはその身軽さゆえに出来る新たな価値の創出をすることで、経済は熱い連鎖反応を起こし、時代を前へと進めます。
だとしたら、守るだけの機能を社内に作るとカルチャーの独自化を生んでしまい、他の部門との温度差やスタンスの違いを生んでしまうことも避けられないのではないでしょうか。

文化的旗振りを担う必要のある部門だからこそ、そのチームの軸が守りでは本人たちの体感としてある会社の動きと実際に多くのメンバーに起きているものとでの乖離が生まれてしまっては、役割を全うすることすらもおぼつかなくなります。
スタートアップに守りの部門はなく、攻めるためのチャージでしかないというのが経営企画とそのなかの管理の考え方であり、大きな未来をつくるための核になるというのが私の持論です。

すべてのチームの攻めの一手が、会社としての大きな攻めを演出する。
Contreaというチームが描く未来に期待感を持っていただいた方は是非一緒に未来をつくりましょう。


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