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素人経営者の「3年半のしくじった経営、うまくいった経営」

みなさんこんにちは!
ContreaでCEOをしている川端です。社内では「かずさん」と呼ばれています。
小学生からファンの阪神タイガースが18年ぶりに優勝しました!!さすがに、浮き足立っています🐯笑


医療者と患者さんをつなぐ「MediOS」

私たちContreaは「医療にかかわる全ての人に安心を」というミッションを掲げ、「安心」を大切にしている医療系スタートアップです。
テクノロジーで「患者中心の医療」を実現できるように病院・クリニック向けに「MediOS」というサービスを提供しています。
患者さんが納得・安心して治療に臨めるように、また、医療者のノンコアな業務を巻き取るために、「動画説明」や「電子同意書」「問診票」といったサービスを用意しています。
医療者と患者さんのインターフェースとなる基盤プロダクトを提供しています。

自己紹介をすると、私は元々診療放射線技師という病院でCTやMRI、レントゲンを撮るような仕事をしていました。その後、半年間医療系のスタートアップで働いた後に、起業してContreaを立ち上げました。
そんなスタートアップもほとんど知らない素人経営者の「3年半のしくじった経営、うまくいった経営」について振り返ってみます。

対象読者
・これから起業しようと思っている方
・シード期スタートアップの経営陣
・スタートアップのリアルを知りたい人
・Contreaに興味を持ってくれている人


しくじった経営

日々「ああしておけば良かった」と思うことばかりですし、メンバーからフィードバックをもらうことも多々あります。。なのでしくじっていることがほとんどです。。
しくじることはたくさんあっても基本的には学びになり、成長につながることがほとんどなので悪いことばかりではないと思っていますが、今回は”不可逆”であったり”リカバリーに時間がかかる”しくじりとして「資金調達(資本政策)」「プロダクト」「カルチャー」の3つにフォーカスしようと思います。


資金調達:調達の先は暗闇だった

最初のシードの調達では1000万円を行いました。当時のプロダクトや事業作りを知らない私からすると「プロダクトも何もないので顧客や売上も当然なく、あるのは夢だけなのに、それで1000万円もの大金を投資してくれるんだ!」と嬉しくて2つ返事でEast Venturesの金子さんに投資をお願いした記憶があります。2020年5月の出来事です。

2020年5月の資金調達時の実際のプレゼン資料

10,000,000円が銀行口座に振り込まれたのも束の間、冷静に考えてみると着金と同時にランウェイは10ヶ月程度です。10ヶ月とは言え、次のラウンドのピッチやDDの期間を考えると、半年で何かしらの結果を出さなければなりません。
命のカウントダウンが頭の片隅にあり、常に追われているプレッシャーを感じる毎日がスタートしました。

私たちの当時のビジネスモデルの特性上、MVP (minimum viable product) の時点で動画を用意する必要がありましたが、動画の制作には数百万円がかかります。そのことを考えると、人件費に割けるお金なんてほとんどありません。
その結果、途中で追加の資金調達をしたものの、2年間は私と幼馴染のエンジニアの2人が正社員として、その他の方は業務委託やインターン生に協力してもらいながら、売れる兆候を掴もうと、もがいていました。

2人しかいないので、自分もコードを書く以外は、営業、給与計算や振り込み、FigmaでプロダクトUI作成、動画制作のディレクションなど何でもやっていました。リソースが分散していることに加え、2人+αのリソースでできることなんて、たかが知れています。
創業からの2年間は人も増えず、毎日が亀の歩みで同じような繰り返し。スタートアップとは思えないような暗闇の期間で正直きつかったです。今の方が圧倒的に忙しいし、組織の問題もあったり、複雑性が増していますが今の方が楽しいです(笑)

遠回りはしましたが、業務を一通り自分ですることができるようになったので権限委譲の際にも肌感覚を持って擦り合わせができること、自分自身のメンタルマネジメントが上手くなったこと、事業との向き合い方など、これはこれで学びも多くありました。

・・・はい。お察しの通り強がりました。。

本当は、自分のビジネスモデルの特性を理解した上で、MSP (後述) に必要な調達額を確保し、もっと最短距離で進めたかったです。
当時は、自分の中では最速だし超頑張っていますが、努力は言わずもがなゲームの構造を知っているかが重要です。もし2度目の起業をすることがあれば、1.5倍速で立ち上げられる気がしています。


プロダクト:MVPが売れるわけではない

これは1番のしくじりかもしれないですが、MVPが軌道に乗れば売れると思っていましたが、現実はそんなに甘くありませんでした。
MVPはminimum viable productの名前の通り、顧客課題をプロダクトが解決できるかです。

SMBなど課題の持ち主と決裁者が一致しているケースではMVPが良ければ、お金を払ってくれるでしょう。
一方で、病院のようなエンタープライズを対象にすると、課題を持っている人と、決裁者が異なることの方が多いです。現場の人はMVPにより課題が解決されて喜んでくれていても、経営者の中でその課題の優先順位が低ければ、有限のお金というリソースを別のところに投資する判断が下されます。つまり、現場の課題感と経営の課題感が一致した時に初めて契約に至ります。

エンタープライズ向けでは、MVPの課題解決とは別にMSP (Minimum Salable Product) という売るために必要な最低限のプロダクトが存在します。
ここ大事です。テスト出ますよー!!

コロナ禍で病院に行けず、公園で仮説検証中

もう少し、具体的な例を挙げましょう。
MediOSの動画説明では、一番最初に「胃癌」の領域からスタートしました。
MVPでは一定の課題解決をすることができ、現場の先生方からも喜びの声と感謝をもらい、手応えを少しずつ感じていました。しかし、有償化には中々結びつきません。
その理由の1つとして、病院の経営層からすると、胃癌は外科の中の一部、さらに外科も20以上ある病院の診療科の中の一部にすぎず、適切な投資と判断されなかったからです。
実際、病院の事務の方から「胃癌という小さな範囲でしか利用できないプロダクトでは、外科の一部の先生を忖度するような予算配分になるので、導入できません」と言われたこともあります。

それまでは恥ずかしながら、現場の課題をどうやって解決するかばかりに目が向いていました。しかし、その一言で、「決裁者の視点」を大きく見落としていたことに気づきました。
現場の課題感と経営の課題感を一致させるために、伝え方で解決できる部分ももちろんあります。一方で、私たちの場合は、売れるプロダクトにするために、プロダクト自身もブラッシュアップする必要があり、若干のピポットをせざるを得なくなりました。

最初からMSPを意識していれば、全然違うプロダクト作りになったと思います。
起業予定者やこれからプロダクトを売る起業家の皆さんには、すごく当たり前なので意識していることかもしれませんが、現場と決裁者にとってどんなメリットがあるかを整理してから営業に臨んでください!


カルチャー:ホワイトを盾にした生ぬるさ

Contreaのvalueには「Reach Hands」「Go V Flight」「Make Domino Wave」の3つが根付いていて、採用候補者の中にはカルチャーを魅力に感じてくださる方も多く、大きな武器になっています。
弊社エンジニアのあむ氏がvalueについては語ってくれていますので、気になる方はこちらもご覧ください。

カルチャーを意識し醸成してきたつもりだったContreaですが、1つだけ非常に後悔しているのが「生ぬるさ」です。
原因として「目標設定のミス」と「ホワイトな会社を作ろうとしすぎた」ことの2つが考えられます。

1. 目標設定のミス
前提として目標を設定することは良いことだし、今もやっていますが、当初導入していたOKRがハマらずにやり方をミスりました。
不確実性が高く読みにくいシード・アーリーフェーズで60%達成になるようなストレッチな目標を設定することが非常に難しかったです。結果的に、達成率が20%、60%、100%とバラバラになったとしても、立てた時の読みの難しさなどに話しが寄ってしまったり、達成できていないチームが多いとお互いが詰めにくかったり(これは慣れかもしれませんが)、60%達成しOKRとしては適切だっとしても100%じゃないから未達感があったりと、目標達成できない弱気な文化のネガティブな醸成に繋がってしまいました。。
OKRを繰り返すことで目標値の塩梅が分かってきたことに加えて、KPIの100%達成に変更してから、ギリギリのところで粘ったり、絶対に達成するぞ!という熱を帯びるようになってきました。目標の立て方って重要なんだなぁ、、と実感しています。

2.ホワイトな会社を作ろうとしすぎた
社会人になってから周りの人が体調を崩して休職・退職するのを目の当たりにしていたため、経営者としてハードワークをさせてしまう側に回ることへの恐怖がありました。今もハードワークが正しいとは思っていませんが、目標達成や課題を乗り越えるために踏ん張らないといけない時があるのも事実です。昔はホワイトであることが先行し、踏ん張らないといけない時も、今思えば弱かったなと感じています。

新幹線で例えると、こだまでも京浜東北線よりも早いと満足している雰囲気です。
本来はのぞみやリニアから比較したり、そもそも新幹線という指標を疑い、飛行機やロケットから比べることもできますが、京浜東北線相手で満足している。何となく、ぬるそうだなと思いますよね。。

今も有給付与やコアタイムの短さなど他の会社よりも優しさもありますが、ホワイトに働くことが目的ではないですし、しっかりと目標にコミットしながらメリハリをつけることができるようになってきて、筋肉質に少しずつなってきていると思います。

いやー、正直、組織のカルチャーを変えるのは本当に大変でした。。10名規模で半年くらいかかったので、これ以上人数が増えた時に変更を迫られたら...と考えると恐ろしいです。
最初期からカルチャーを丁寧に設計する重要性を改めて感じた一件でした。

しくじりをあげればキリがなく、読者の皆さんからも「もっと聞きたい!」とラブコールが出ているかと思いますが、後ろ髪をひかれながらも次のテーマに移りたいと思います!笑
次のテーマはしくじりの反対、うまくいった経営についてです。
こんなしくじりばかりの奴がうまくいっているんでしょうか、、気になりますね〜笑
それでは参ります!


少しずつ会社ぽくなってきたな〜


うまくいった経営

上手くいっているように見えても、もっと上手くやれた方法はあっただろうし、上手くやっている経営者も多い中で、相対ではなく絶対として上手くいっているというのが果たして良いのかという疑問を抱きながらですが、、その中でも大切にしてきた意思決定について振り返ってみます。


動画制作:スピードよりも大切にしたもの

MediOSのコアな機能の1つが医師や看護師の説明を動画で再現し、説明の効率化とともに患者さんや家族にも分かりやすく伝える「動画説明」です。この動画内容は患者さんの病気・治療方法・一般的な経過など非常にセンシティブな医療情報を扱っています。(患者さんの個人情報は扱っていません)
社内にも医師や看護師、医学生を中心に動画制作を行っています。スピードを優先しようと思えば、社内だけでも完結できますし、医療者が制作に携わらなくても作ること自体は可能だと思います。
しかし、私たちは動画の情報が患者さんの意思決定を左右すること、医師や看護師を代弁することから、制作の制作体制は医師2名、看護師1名、医学部インターン生と医療者で固めています。それに加えて各分野の著名な医師にも監修をいただき、二重三重にも気をつけながら医学的な正しさと客観性を重視して制作にあたっています。

「スピード!スピード!スピード!!」スタートアップにいたら否が応でも聞こえてくるこの単語。私たちもスピードを意識しています(実際に当初よりも半分程度の期間まで短縮)が、それよりも最新の正しい医療情報をどうやったら患者さんにも分かりやすく伝えられるかに心血を注いでいます。
この熱量・こだわり・体制は会社としての姿勢が色濃くあらわれていると思います。

この制作の舞台裏を知りたい場合は、Medicalチームのリーダーである元看護師の河瀬さんの記事をご覧ください。


組織:自慢のカルチャー

しくじったにカルチャーを書いた一方で、うまくいっているのもカルチャーです。

ValueをCEOが作って、みんなに伝える方式だと興醒めしますよね、、
そこで、みんなと一緒にワークショップをしたり、ワーディングのフィードバックをもらったりとプロセスを凄く重視して策定しました。
ワークショップではCoralのあゆさんにも多大なるサポートをいただきました!本当にありがとうございました。

そして、生まれたのが下記の3のValueです。

・Reach Hands (通称:リーハン)

・Go V Flight (通称:ブイフラ)

・Make Domino Wave (通称:ドミノ)

このvalueに対して私自身も特別な想いがありますが、みんなで作り上げてきたので、その想いはメンバーも同様です。
ありがたいことに、valueは私主導ではなく、メンバー主導でvalueが浸透するように動いてくれています!
「valueソムリエ」と呼ばれている元エンジニアで現CSのヒデさん、エンジニアのアムさんはcheers (※1) を生み出し、現在はcheers委員会(valueを浸透させるための組織)の委員長として河瀬さんとなっちゃんと施策を考えてくれています。
※1  cheersとは、value体現を称賛するピアボーナス

cheers委員会のおかげで、1ヶ月で300回近くのcheersが送られていたり、普段の日常でも「あれはドミノだったね!」だったりと組織に溶け込んでいます。

「医療にかかわる全ての人に安心を」というMissionがみんなを同じ方向を向かせるための羅針盤なのだとすると、Valueは組織を1つにまとめる接着剤です。

同じ方向を向いていても、組織としてバラバラだと馬力が上がりません。そのため、valueが必要になります。
その点、Contreaでは(健全な)喧嘩もありますが、医療を良くしたい!社会に貢献したい!という熱い想いを持ち、Valueによって1 つにまとまることができています。10人前後の組織の中では他の企業にも引けを取らない自慢の組織ができあがってきています!

しくじりでも書きましたが、誤ったカルチャーが根付くと10人程でも半年ほど軌道修正に時間がかかりますが、正しいカルチャーが根付くと組織の結束力を生み、乗算による強いパワーを生み出します。
これから組織を作る方は、ここだけは安易に決めないことをオススメします!


資本政策:株主は応援団

Coralの採用イベントで唯一の2冠達成!

資本政策はしくじった内容でもあり、うまくいった意思決定でもあります。J-KISSを重ねたというHowのしくじり(これは長くなるかつ専門性が高いのでまたどこかで、、)はあっても、株主構成は非常に上手くいったと思っています。
シード期はEast Ventures、Coral Capital、千葉道場に支えてきてもらいました。実は資金調達時に、valuationをもっと高く提示してくれているファンドもありましたが、それを断ってこの座組にしたのは英断だと思っています。

EVには自由さといざという時のヘルプを、その次に入っていただいたCoralは採用とメンバーを含めたコミュニティ、千葉道場には事業相談やCEOコミュニティで大いに助けられており、当初の期待値以上に最高で恵まれています。

最新のラウンドでも金融系、海外に繋がりが強いVCなど、単なるお金集めではなく自分たちの足りない能力を補う絶好の機会と捉えて、座組みを決めているのは良い意思決定だったなと思っています。それぞれのVCの良さを語り出すと文字数が大幅に超過するので、気になる方はご連絡ください。

いずれのVCにもとても応援してもらっている感覚があります。
特に、辛いときやピンチのときに相談をしても、詰められるのではなく、ともに悩み・励ましてくれたことで、何度救われたことか。もちろん、厳しい指摘をもらうこともあります。が、これもまたありがたいんですよね。
中長期をともにする株主なので事業への理解や共感をしてくれるVCを集め、応援団を形成するつもりで調達をしてきたことは確実にうまくいっています!


営業戦略:課題が大きいところにフォーカスし続ける

今でこそMediOSの導入病院・クリニックが増えてきたり、競合も出てきて市場があることを確信していますが、2020年の創業した当時は取り組んでいる企業もおらず、市場があるかも不明でした。
ようやく今は売りが立つタイミングになってきていますが、起業してから3年間、プロダクトリリースから2年間はほとんど売上がなく、その中で受託もせず、ピポットもせずに、ただただお金が溶けていく口座を見続けながらもこの領域に集中し続けたことは狂気の沙汰だなと思います。

そのため、投資家や先輩起業家などから親身なアドバイスとして「受託開発して食いつないでいくのもありだよ」であったり、「製薬企業向けのサービスにピポットした方が良いんじゃない?」などをいただきました。
加えて、営業戦略としても所謂クリニックがSMB、病院がエンプラなので「病院は難しいからクリニックに営業は注力した方が良いよ」「自由診療は潤ってるから良いんじゃない?」というアドバイスも多くいただきました。

会社を立ち上げてから2年間は正社員が自分とエンジニアの2人しかおらず、市場があるか不安もあり、追い討ちをかけるように成長も感じられず、社内外では自信のあるような顔をしつつも内心は「本当にこのまま病院向けのサービスでやるのが正解なのか?」と不安に思うこともありました。
暗闇の中を進んでいるような感覚だったので、投資家や先輩起業家からのアドバイスは、こっちに進めば上手く進むんじゃないかと魅力的に映ることもありました。

耳障りの良いアドバイスも…

しかし、売上はなくとも、幸いなことに医療現場の人と話すと再現性高く課題とニーズがありました。課題が大きいところにプロダクトを提供することがビジネスの鉄則だと思っているので、「あとはどう売るかだけだからと...」と自分を奮い立たせ(2年間もかかるとは正直思わなかったですけどね笑)病院にフォーカスし続けました。
病院はエンプラセールスなので営業の難易度は高いですが、課題が大きい病院をコアターゲットとして軸を持ち続けたことは、プロダクトの価値を最大化することにも繋がりますし、結果的にはPMFまでの最短距離だったのではないかと思います。


最後に

偉そうに駄文を書いてしまいましたが、ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
これまでも沢山の失敗をしてきましたが、これからもそれ以上に失敗をすることと思います。しかし、今のメンバーを見ると、本当に優秀かつ泥臭いことを厭わない最高なメンバーが揃っているので、何とか乗り越えていけるだろうと楽観的に思えます。

どの道を選んでも容易い道はなく、泥臭くもがき苦しみながら一歩一歩進めるしかありません。どの道が一番患者さんや医療者などの社会に還元できるのか、会社の成長に繋がるのか、鳥の目の視点を持って、易きに流れず茨の道を選び続けたいと思います。

そんなContreaでは採用も強化中です!


ぜひ面白いなと思ったら、カジュアル面談でお話ししましょう!


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テクノロジーで患者中心の医療を実現し、患者本人や家族として受けたい医療をつくっていきましょう!力を貸してください!!


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