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#4 廃材×アートを商品に|爪切り屋の営業マン・水沼樹 〜メタルアート編〜

ひとつ7000円の高級爪切りを
作っている、新潟県 燕三条にある
「諏訪田製作所」(すわだせいさくしょ)。

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そこで営業マンとして働く水沼さんは、
山口県出身の、27歳。
5年前に新潟にやってきました。

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※この記事は前回の盆栽バサミ編
続く、~メタルアート編~です。

1.爪切りだけじゃなく、アートも売りたい

爪切りメーカーとして有名なスワダでは
製造する過程で出る「廃材」を使った
アート作品
を作っています。

工場にあるギャラリーに入ってみると、
その廃材でできた兵士や
ライオンなどのオブジェがずらり。

訪れるお客さんの中で、
こうしたメタルアートを「欲しい」と
言ってくれる人もいましたが、

大きな作品しかなく、
売ることは難しい状態でした。

「作品を見てせっかく欲しいと思ってもらえているのに、買えるものがないのはもったいない。爪切りだけでなく『廃材のアート』も、しっかり売りたいと思ったんです。」

そこで水沼さんは、
”お土産にできるアート”を作ることに挑戦。

そもそも、スワダでは爪切りの他に
「盆栽バサミ」も作っていて、
かねてから水沼さんは
盆栽バサミのプロモーションをしていました。

その中で「メタル盆栽」という
"廃材で出来た 盆栽のオブジェ"
を作ったことをきっかけに
これを商品化したいと考え、

2018年4月、
”メタル盆栽キット”が完成しました。


2.初めての商品開発。険しい道のり

メタル盆栽キットは、
金属版「盆栽のプラモデル」。

木の幹は、
葉は、糸状になったステンレス

爪切りを製造する上で
本来ならゴミになってしまうはずの
廃材を使って作られています。

部品を差し込んでいくだけで
簡単に組み立てられますが、
枝のつけ方によって完成する形が変わり、
自分だけの「メタル盆栽」が作れます。

この「メタル盆栽キット」は
水沼さんにとって、
初めて自分で手掛ける商品。

5000円以内でどこまで作れるのか、
組み立てやすくするにはどうするのか、
商品開発には試行錯誤がありました。

パートナーである職人に、
「ここをもっとこうしてほしいけど、
コストは◯◯円以下で」

「この作業は1つあたり40秒で
作れる方法を探してほしい」
など、
細かいオーダーを伝えて、
試作を何度も重ねました。

「取り扱い説明書」も、
ガンダムのプラモデルの取説を
参考にしながら、水沼さん自らが製作。

外国人でも作れるように
説明書には文字を一切入れず、
絵だけで説明してあります。

商品の「ロゴ」も、
50種類以上作った中から決めました。

様々なこだわりがある中でも、
一番力を入れたのが「材質」

盆栽バサミの仕事を通じて
国宝級の盆栽をいくつも見てきたからこそ、
盆栽の形や質感にこだわりました。

「盆栽の葉と土の部分はステンレスを使って錆びないようにして、幹と枝は鉄で錆びる可能性を残しています。本物の盆栽も、幹は年数が経つと良い雰囲気が出るけど、葉っぱはいつもフレッシュなんです。メタルだけど、偽物にしたくない。」 

このメタル盆栽キット、
今年だけでも300~400個
売れているということです。


3.お土産作りから始まり、今は空間デザインまで

メタル盆栽キットの完成とともに
水沼さんが立ち上げたのが、
「スワダアートラボ」

メタル盆栽キットの販売だけでなく、
排材を使った様々なアート作りを
受注しています。

最近では、このアートラボとしての
仕事も増えているそう。

たとえば、
燕三条のイタリア料理店に、
爪切りの排材でできた横幅8メートルの
「シャンデリア」を納品したり、

苗場スキー場に今月オープンする
元プロスキーヤー皆川賢太郎さんの
レストラン&ギフトショップで、

「空間作り」を手がけています。

これまで数々のイベントで
爪切りや盆栽バサミの「出展ブース」を
作ってきた水沼さん。

その経験を生かし、ギフトショップの
商品のレイアウトやディスプレイなどを
全てコーディネートし、提案しています。

「小さなお土産作りから始まって、インテリア作りになって、空間デザインになって…。ひとつひとつ、階段を登ってる感覚です。自分の力で切り開いて冒険したかったので、今この仕事が、辿り着きたかったところなんです。」


4.ゴミがアートになる!最高のリサイクル

メタル盆栽キットの売れ行きがよく、
いまはなんと、廃材が足りない状態に。

そこで水沼さんは
他の工場から廃材を買って、
アートを作ろうと挑戦中です。

これからは、
自社の廃材を使うだけでなく、

燕三条に多数ある
他の工場ともコラボレーションをして、
「廃材アート」を作りたいと考えています。

「本来ゴミだったものがアートになって売れるって、最高のリサイクルですよね。でもこれ、営業の自分一人じゃできませんでした。職人がいるからできること。でも『自分がいる意味ってなんだろう?』って考えた時に、『僕と一緒に作ると、もっと高く飛べる!もっと遠くに行ける!』と思ってほしいし、そんな存在になるのが目標なんです。」


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「こんな仕事があったのか。in新潟」
vol.2 爪切り屋の営業マン・水沼樹

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水沼樹(みずぬまたつき)
TwitterinstagramSWDARTLAB
1992年生まれ/山口県出身
明治大学卒/諏訪田製作所5年目
一言「オンラインショップも作ってみた!」

2019/12/14

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