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書くということは、冒険旅行でもある 2021/11/24の日記

書くということは、それ自身が一種の冒険旅行でもあるのだから。危険もあれば、発見もあれば、充足もある。
安部公房『他人の顔』p.211

 いま、安部公房の『他人の顔』を読んでいる。安部公房の作品を読むのは初めてで、その現実離れした作風に惹き込まれている。

 『他人の顔』の細かい感想は読了後に書くとして、今日は印象に残った一文を紹介したい。それが冒頭に挙げた一節。

 『他人の顔』という小説は醜い顔を持った男が妻に向けて書く手紙だ。つまり、男の独白、というよりも「独筆」とでも言うのだろうか。

 嫉妬という言葉では一括りにできないほど、複雑な感情を抱えた男が書き続ける。男が書いた字はどんなものか、真っ直ぐと綺麗に揃えられているのか、実際の手紙を見てみたいが、それはさておき。

 男が手紙の中で、「書くことは冒険旅行」と書く。たしかに、そうだと感じた。もちろん、男の手紙の中では危険な感情に出会い、多くの発見をしていた。そして、それは男だけでなく、いまこうして書いている僕だってそうだ。

 140日以上、日記を書き続けている。時には気づかない怒りや悲しみ、絶望を発見する。また、こうして自己を開示することに危険はあるし、そうした感情に出会うことも危険だ。そして、書くことで漠然とした充足感を得ている。

 僕はいま、「冒険旅行」をしているのだ。

 では、この冒険旅行のゴールはどこなのか、何なのか?男には明確に「妻」という宛先があったけれど、この日記にはそんなものはない。

 いま、そのゴールを探している所なんだろう。僕は様々な危険や発見をして、そして充足を得ながら書き続ける。その先にはきっと何かあるから。

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