隠れ状態異常のサインにアンテナを張る

起こるべきことが起こるべき時を待ち、
何もしないで淡々とやり過ごすのに
適している時が存在します。

ただそういう時に決まって
なんとかしようと
なんとか変えようと
ジタバタする焦りが活発に発生します。

生物学的女性の一部にしか通じない
経験を例に出して申し訳ないのですが
私のPMSの症状は
メンタルに極振りする形で現れるので、
身体的な不調が少ない代わりに、
心が重くて仕方がありません。

生理前に決まって苦しい停滞感の中の
「下手な考えは休むに似たり」状態を
実感します。

数日の泥濘ムードがすぎると
(ブルーだなんてかわいいもんじゃねえ)
嘘のように一気に
気持ちが爽やかに晴れます。

風邪の時も少し似たような
メンタルの変化を経験します。

ただいいずれでも
五感の変化や、環境に対する
認知と感想が一変するのを
経験します。

麦茶の味が美味しく感じるようになり、
氷の音やひんやりとした冷気が
気持ちよく感じるようになり、
音楽や生活の音が心地よく感じたり、
何度も聴いたはずなのに聞こえなかった
歌詞がすんなり心に入って響いたりします。

無意識に掃除道具が手に吸い付き、
気付けば家がピカピカになり、
(ホームリセット+クイックルワイパーで叶う床の淡く清かな輝きはマジでダイヤに勝る)

掃除されて洗い立てのシーツと
ほかほかに干した布団に
自分が包まれています。

「よしやるぞ」などと頑張った
実感がありません。

ほんの少し前までは
風呂に入ってシャワーするだけで
脳が鞭打たれるほどの痛みを
味わっていたのに不思議。

脳みそ全体がビリビリ電気ショックを
帯びた皺くちゃに丸まった状態から
底が見える清泉のように深くなった呼吸と
共に気持ちよく伸びて広がるのを
感じます。

しかし気分が晴れるまでの
陰鬱な期間では、
自分は「正常のはず！」と
思ってジタバタするけど、
本当は気分がつらいときには、
全部ストレスに感じていました。

耐えがたいダメージがどこからも
やってきて私を袋叩きにし、
苦しくて仕方がありませんでした。

周りの何も変わっていないのに
目に見え、耳に聞こえ、肌で感じることが
別世界のように違います。

というようなことが日常的に
繰り返されますので
私は多重人格という概念を
遠い他人の非日常として
捉えることはできません。

風邪の時の頭痛と
生理前の重苦しい気分って
何が本質的に違うのでしょうか？
バッファリン飲んだり、
生理明けにになったりするだけで、
急に五感の働き方が一変し
考えることの内容も展開も
別人のように異なってくるのだから、
人格の何に一貫性をが求められると
言えるのでしょうか。

自分の名前で呼ばれたり、
戸籍登録をされたりするものは、
絶えず変化する気分の束に過ぎません。
ファミレスの順番待ち呼び出し表に
山田と書いたら山田と呼ばれるし
クリスティーナと書いたら
クリスティーナと呼ばれます。
山田・クリスティーナと書いたら
面倒なやつだと思われる
可能性が高まりますが
やはりそうと呼ばれます。

人格など存在するのでしょうか。
その人が
「見せないことに成功した部分」は
その人の性格と認識されません。

子どもを見ているとよく感じるのは
結局大人になって卒業できた
行動パターンと欲求パターンが
見つからないということです。

言葉や欲求の扱い方、
身の回りのことが不自由であるから
何か劣っていて平等に扱うことが
正当化されるわけではありません。

逆も同じで、知性が伸びて
社会的振る舞いを身につけて
さまざまな力とリソースが
充実しているからって、
優れているわけではありません。
依然として平等です。

つまりは、
人間は揺れ動く気分の束である以上
人格の一貫性に基づく責任の概念は
成立してないということになります。

責任はいつも後発的なものです。
記憶を喪失したとして、
記憶喪失前にサインした契約を
履行しなければなりませんが、
それは本質的には
責任の履行とは言えません。

自分の過去の気分と思考と
環境との関わりで生じたものを
引き受けることになっているだけです。

めちゃくちゃ正気でない状態で
大きな決断をすると
結果を引き受ける自分が大変だけれど、
正気の範疇であったとして
その結果を引き受ける時の自分にとって
完全に受け入れられるものでないはずです。

ランダムイベントに似ています。
双六をやることに承諾するならば
ダイスの出目でバフとデバフが
急にかかることを
承諾しなければなりません。

ただランダムイベントの中身は
自分の責任かと言われると少し違います。
「結果を引き受けるものの
本質的には引き起こしていないため
自分のせいという意味で言われるような
責任はない」

というような受け止め方になります。

子が未熟ゆえやらかしたことを、
保護者や先生が文句を言わずに
片付けておくのも似ています。

産んだときからピンポイントに
何をやらかされるかを承知したわけでは
ありません。

逆も同じで、
生まれることに合意してから
生まれた人間はいません。
でも生まれた
肉体や精神の特徴、時代、
環境、家庭、資源、社会の中で
生きていくことを引き受けることになります。

世話を焼く他人だったら成立する関係が、
自分自身にも成立するというだけです。
自分自身が一貫して連続するもの
ではない以上、過去と未来の自分との
関係は、互いに何があっても
引き受ける暗黙な契約の上に
成り立っています。

本題に戻ると、
コンディションがダメで
気分が沈みすぎた時に、
「本来なら普段ならやらなきゃ」
「こういう立場でこういう状況でやるべき」
「(過去の自分が)予期した通りにしたい」
「今落ち込むのは想定外。理由がない」
というような、人格の一貫性に基づく想定で思考を捏ねていくと凶に出やすいです。

でもこういう時に限って
とにかく何とか無理しようとする
または無理しすぎている状態を
断ち切らずにいようとします。
そういう惰性が働きます。

風邪を引いたけど
高熱に気づかない状態や
ひどく酔ったけど
シラフだよと言って譲らない状態と
似ていると思います。

だけどターン制バトルの戦闘中に
状態異常にかかったメンバーの
治療は最優先と決まっています。

敵味方分からなくなるパニック系が
一番こわいです。
クリティカル範囲攻撃でも
味方に出してきたら下手すると全滅です。

でもこれ、よく皆さんリアルで
自分と周りにやってたりしてますからね。
なんということでしょうか。
自分をいじめることに効果ある
発想ばかりする状態異常に
心当たりありませんか？

五感がキャッチする情報や刺激が
全部苦しい気分へと変わる時がサインです。

感覚や感情を解放することや、
情報や刺激を遮断して
休息を集中的にとることで、
闇のフィルターを早く解除することの
早道になるでしょう。

自分に合った方法や、
状態異常時に頻出するサインを
見つけておくと間違いなく楽になります。

晴れやか気分を維持するのは
難しくありませんが、
注意力を伴う正直さがポイントです。