オールドレンズ沼01 Leitz Summar 5㎝/F2✖️埼玉の桜🌸
今回の使用ボディは1933年製の〈Leica II型〉なので、当初は『銀塩浪漫』の第4回としてアップするつもりでした。しかし、フィルム写真は「フィルムとレンズで撮る」もの。ボディはあくまで脇役です。
そこで、新たに『オールドレンズ沼』というカテゴリーを設けることにしました。オールドレンズを「1960年代以前の交換レンズ」と定義し、撮った作例はここにアップしていこうと思います。
Leits Summar 5㎝/F2(以下、通例に従ってズマールと呼びます)といえば、ズミタールと並んで最も評価の低いオールドライカレンズの一つ。今から20年以上前の空前のライカブームのときでさえ、1万円台後半から3万円台前半で取引されていました。ほとんどバッタ価格だったと言っていいでしょう。
ズマールの低評価の理由は、ひとえにその写りの「ゆるさ」「アンシャープさ」にあります。開放F2/5㎝の後継モデルであるズミタール、ズミクロンに比べ、著しくシャープさに欠ける二流レンズ——それがズマールに対する評価でした。
でも、ちょっと待ってください💦 ズマールの発売は1932年のこと。今年で92歳になるスーパーオールドレンズです😳
その秀逸さで、エルマーとともにライカ標準レンズの代名詞ともなっているズミクロン(初代)の発売は1953年。20年も後発の名玉と比較してシャープさがどうこう言うのはいくらなんでも酷であり、また野暮というものです。
ズマールに限らず、戦前のレンズはガラスが柔らかく、またコーティングもされていないものが多かったので、中古市場に出回っている個体は第二次大戦をくぐり抜けてきた傷病兵さながら、満身創痍の玉がほとんどというわけです。それに加え、経年劣化による玉の曇りは如何ともし難いものがあります。
そんなコーティングも施されていない、拭きキズだらけの曇り玉で撮影したらどんな写りになるか、もう言わずともお分かりでしょう。
「コントラストが高い」と言えば聞こえがいいですが、ハイライトは飛んで真っ白け、暗部は潰れて真っ黒け。おまけにどこにもピンの来ていない、ぼやあっとした甘い写り——というわけで「ディテールを再現できない駄目レンズ」のレッテルを貼られてしまった悲運のレンズ、それがズマールでした。
でも、ノンコーティングにはノンコーティングの良さというものがある。いちばんの問題は、経年劣化による曇りと前玉のキズです。
もう15, 6年ほども前になるでしょうか。キズや曇りの奇跡的に少ない個体(レストアされていたかもしれませんが)を入手できたことは幸運でした。それは、中古市場におけるズマールの購買競争率が低かったことの証でもありました。
その幸運を、身震いするほどの興奮とともに実感したのは、この個体を使って初めて撮影したネガカラープリントを見たときでした。そう、ここにアップした8枚のスナップフォトがそれです🌸
いかがでしょう。同じ日本、同じ地球上とは思われない、と言ったら大袈裟でしょうか。でも、どこかふわっとした味わいの、ファンタジックな写りだと思われませんか。
とくに桜の樹の幹の質感や、近景の原色のくっきりと濃密な色彩、遠景へ行くほど淡く霞んでいく様などは「写真」ではなく、私にはまるで一枚の「油彩画」のように思われます🖼️
さすがに開放は甘く、現代では実用に耐えるものではありませんが、2-3段も絞れば「どこにもピンの来ていない駄目レンズ」という評価は当たらないことがお分かりになると思います。
むしろ、シャープネス礼讃の現代だからこそ、ズマールの映し出す画は唯一無二の価値を持つのではないでしょうか。
この後も何度かズマールの出番がありましたが、ここにアップした作例を超えるものは未だ撮れていません。光とロケーションとがバッチリ融合した「奇跡の時間」だったのでしょう。長いこと撮っていると、ご褒美としてこうした瞬間にめぐりあえるのかもしれません🍀
「世界一高級で贅沢なトイレンズ」として、92歳の「ズマールじいじ」を永く大切に愛用していきたいと思います📷(了)
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