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2020年忍殺再読感想ログ

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2020年の忍殺再読記録です。
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【2020忍殺再読】再読感想文一覧

【2020忍殺再読】再読感想文一覧

 2020年の忍殺再読感想をぼちぼちやっていきましょうということで、気合いを込める意味で目次ページを作りました。2019年の感想行為はほぼまる1年かかってしまったので、今年はもうちょっとハイペースに行きたいですね。夏ぐらいには終わらせたい。2020年の特徴としては、AOMシーズン3の完結、そして例年と比較して公開エピソード数が少ないことでしょうか。特に、プラス限定エピソードが4つしかなかったのは、

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【2020忍殺再読】「ライオット・オブ・シンティレイション」感想

【2020忍殺再読】「ライオット・オブ・シンティレイション」感想

邪悪なるザナドゥ ニンジャスレイヤーAOM、プレシーズン4。未熟なグラフィティ・アーティスト・ニンジャ:ザナドゥを主人公としたエピソード。無節操に入り込むノイズにぶつかりお話がピンボールのように跳ねまわるさまは、ネオサイタマの街角……日常を切り取って写したよう。そして、本エピソードの大きな魅力は、そのカメラに映り込む一風変わったニンジャたちにあります。モータルよりはるかに強大なカラテを持ちながらも

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【2020忍殺再読】「キタノ・アンダーグラウンド」感想

【2020忍殺再読】「キタノ・アンダーグラウンド」感想

何? ニンジャスレイヤーAOM、プレシーズン4。長い旅路を経てついにピザ・タキに再集合したマスラダ一行。彼らを中心に、ネオサイタマの日常が描かれる……? 市民が生きたまま火炎放射器で焼き殺されるのを日常だと言い張ってくることに対しては、私もまあ、10年近くヘッズをやっている訳なので特に異論はないわけなんですけども、懐かしき我が家に帰りつき、まず最初にカメラに映しだされたのが便器にこびりついた汚れの

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【2020忍殺再読】「バック・イン・NS」感想

【2020忍殺再読】「バック・イン・NS」感想

ハチミツ漬けの蛇足 ニンジャスレイヤーAOMシーズン3の……ボーナス・トラック?でしょうか? 本編終了後、マスラダたちがピザタキに帰還する様子が描かれます。物語としては既に見事に閉じているシーズン3の中に、本作が入り込む余地はなく、本文テキストの一部であるピリオドにすらたとえることは難しい。強いていうならば、アナウンスとして記される「(完)」の三文字を虫眼鏡で拡大したような一編、でしょうか。エピソ

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【2020忍殺再読】「タイラント・オブ・マッポーカリプス(後編)」感想

【2020忍殺再読】「タイラント・オブ・マッポーカリプス(後編)」感想

カラテの光…ラグの雪… ニンジャスレイヤーAOM、シーズン3最終話(後編)。旅は終わり、国は滅び、テーマパークは閉演する。滅びゆく悪の組織のかなしさを描くことにかけて、『ニンジャスレイヤー』という小説はとても優れています。かつてのザイバツやアマクダリがそうであったように、ネザーキョウの最期もまた、痛切で、切なく、かなしいものでした。欺瞞に満ちた暴力を無節操にバラまき、弱者を踏みにじり殺し続けた邪悪

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【2020忍殺再読】「タイラント・オブ・マッポーカリプス(前編)」感想

【2020忍殺再読】「タイラント・オブ・マッポーカリプス(前編)」感想

点と面 ニンジャスレイヤーAOMシーズン3、最終話前編。本エピソードについて言えることは、とにもかくにもむちゃくちゃにおもしろいということでしょう。おもしろい。本当におもしろい。おもしろすぎる。今回、久しぶりに読み返してみて、とんでもない「おもしろい」の密度と濃度に、私は思わずひっくりかえって尻もちをつき失禁をした。10年を超える連載を経て、原作者とほんやくチームのエンターテイメント技術は、最早円

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【2020忍殺再読】「カレイドスコープ・オブ・ケオス」感想

【2020忍殺再読】「カレイドスコープ・オブ・ケオス」感想

ネットワーク(物理) ニンジャスレイヤーAOM、シーズン3、第8話。破魔矢の着弾と共に、世界規模に広がってゆくアケチの禍。否応なくタイクーンの暴虐に曝された各地のニンジャ・モータルたちの運命は交錯し、工業都市ナガシノにて発火する。シーズン3において、最もサイバーパンクに寄った「コトダマ回」とでも言うべきエピソード。言うなれば第1部における「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」の立ち位置が近しいの

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【2020忍殺再読】「モパイ・マスト・ダイ」感想

【2020忍殺再読】「モパイ・マスト・ダイ」感想

役名「ニンジャ殺すべし」#ウキヨエ #dhtpost  デッドリー・ヴィジョンズ、麻雀回。「ニンジャスレイヤーが麻雀で戦う」というお題に対し、我々が期待した通りのトンだ光景をお出ししてくるんだから参ったね……。フジキドが麻雀したら、そりゃあもちろん忍殺牌であがるよという、有無を言わせぬ説得力。野球や将棋でもそうだったのですが、既存のルールがあるゲームを取り扱う上で、極端な状況設定をすることにより読者

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【2020忍殺再読】「ナラク・ウィズイン」感想

【2020忍殺再読】「ナラク・ウィズイン」感想

『ザンマブリンガー:ザンマ・ニンジャ』 ニンジャスレイヤーAOM、シーズン3、第7話。他者から与えられた借り物の理由を胸に秘め、3人の主人公がナラク・ニンジャを奪いあう。『ニンジャスレイヤー』争奪戦とでも言うべき本作は、かつてフジキドが復讐の果てに至った答えをより1歩先に押し進めたエピソードと言えるのかもしれません。しかし本作は、それを決してメタな思考遊戯、文学的な実験だけに留めることはせず、どこ

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【2020忍殺再読】「ウェイ・ダウン・トゥ・ヘル」感想

【2020忍殺再読】「ウェイ・ダウン・トゥ・ヘル」感想

ヒトは死ねばモノになる サムライニンジャスレイヤー・シリーズの第3話。やはりいい。抜群にいい。サムライニンジャスレイヤーからしか摂取できないトンチキとサツバツがあり、それら2つの栄養価は本編からは摂取できないものなのですよ。私はそれを定期的に摂取しないと健康に影響を及ぼすのです。わかっているのですか。現状に年に1話あるかないかのペースですが、頼む、もっと高頻度でこれをくれ……。前者、サムライトンチ

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【2020忍殺再読】「レリックブレイカ:ハードタイム」感想

【2020忍殺再読】「レリックブレイカ:ハードタイム」感想

暴力関数 故買仲介業を努めるヒガ・シロキことルイナーを主役としたレリックブレイカ・シリーズの1つ。本エピソードにおいては、その助手(?)であるヤコ(ラスウェイブ)との出会いが描かれる。2人を否応なく巻き込んでゆく形で、舞台ヨハネスブルクの暴力沙汰が描写されてゆく本作ですが、ネオサイタマとはまた違う低体温なアトモスフィアがとてもクールでおもしろい。ネオサイタマの暴力は、どこかコミカルさが伴うケレン味

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【2020忍殺再読】「エスケープ・フロム・ホンノウジ」感想

【2020忍殺再読】「エスケープ・フロム・ホンノウジ」感想

 それにやっぱり、子供の死がまったく不可解であるよりは、不可解さは相変わらずあろうとも、一部分だけでも、何らかの答えが与えられた方がいい。
……『阿修羅ガール』、舞城王太郎、新潮文庫、p.328

ネザー・インフラストラクチャ ニンジャスレイヤーAOM、シーズン3、第6話。異人の目を通じて描かれる、最悪都市ネザーキョウの最悪の実態と最悪の文化の在り様。モータルとニンジャが魂を燃やし、繋ぎ、言葉なき

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【2020忍殺再読】「ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン」感想

【2020忍殺再読】「ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン」感想

インターネットと悪党ども ニンジャスレイヤーAOMシーズン3の第5話。ジョウゴ親王の登場に伴い、ネザーキョウという舞台の構成要素がようやく全て俎上に並んだといったところでしょうか。2クール目開始の趣のあるエピソードであり、たくさんのアイデアとイクサが盛り込まれた超ハイカロリーなエンタメ巨編となっています。また、SF的な側面においても、シーズン3の特色である「インターネットの再解釈」の1つの山場とな

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【2020忍殺再読】「ヘラルド・オブ・メイヘム」感想

【2020忍殺再読】「ヘラルド・オブ・メイヘム」感想

くだらない戦場と色あせた武勲に AOMシーズン3の裏主人公、みんな大好きヘラルドくんを主役に据えた2つ目の短編。UCAに所属するニンジャに拾われた彼は、傭兵に身をやつし、何の興味もない戦場に駆り出される。相当数のニンジャが登場し、シーズン3の二大勢力が激突する大規模なエピソードでありながら、イクサの熱狂もドラマの盛り上がりも全く見せず、死とイクサが淡々と撒き散らされてゆくこの有様は一体どうしたこと

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