ryo samidare

10年画学生。座右の銘は人生ぜんぶホームラン! Twitter@parfaitat12…

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10年画学生。座右の銘は人生ぜんぶホームラン! Twitter@parfaitat12AM

最近の記事

やさしい犬

犬が好き。成人済みの人間としてはやや社会性を心配されるほどに。私の機嫌の4割は、散歩している犬を何匹見つけられるかにかかっている。この話をすると大体『なんで飼わないの?』と聞かれて、決まって毎回『いいんだ』って答えてきた。私は犬アレルギーなのだ。 夜でも瞳孔が悲鳴をあげるほど眩しい原宿の夜、友達と入ったIKEAに大量の犬がいた。ゴールデンレトリバーのぬいぐるみ。一匹2000円程度のポリエステルのいのちだけど、そっと抱いた黄金色の手触りは、人間のともだちと名高い犬独特のやさし

    • 偶像

      自分の周りにいる人が自分を写す鏡なら、好きになる人は昔好きだった人の偶像なのだろか。 昔、韓国アイドルのオタクをしていた。いや、今でも全然好きなんだけど完全に親戚のオバチャンが甥っ子の進学を祝う距離感で各々のグループの活動を見守っている。 そして、この先どんな素敵なアイドルが登場しても、この距離感が変わることは今後ないだろう。 数年前、私がまだ女子高生だった頃に当時大好きだった推しが急死した。彼は自らの手で命を手折った。7年無事に活動を続けるのが不可能と言われる韓国アイド

      • 難しいことは分からんけどそれはそれで音楽サービスを比較したい人向け(個人感)

        Spotifyのstudentプランが終了したのを機に、AppleMusicの三ヶ月トライアルを始めた。なんだかなんだ4年弱学生時代を共にしたアプリを離れて乗り換えるのは少し切なかったけど、私は基本的に身の回りの機器がAppleに染まってる人間なので今更不便もないだろうと思ってた。 全然違った!!ねえ!Googleに『Spotify Applemusic 比較』と聞くと、大抵は『無料プランがあるか』『Apple製品を持っているか』みたいなことしか書いてないけど、使い心地が本

        • その鍋は海の味がする

          小学生の時に読む国語の教科書で、最も多くの人が覚えてる話のひとつは『ごんぎつね』だと思う。(「ごん、おまえだったのか。」しか覚えてない人、仲間です) 昨晩、夕食を囲む時に父からこんな話を聞いた。 「ごんぎつねには、貧しい暮らしをしている主人公が、自分の母親の葬式で村の人に鍋を振る舞わねばならないシーンがある。とある小学校で『その鍋の具材は何が入っているでしょう?』という問いを子どもに聞いたところ『お母さん』と答えた生徒がいたらしい。」と。しかも一人ではなく、複数人がケロッと

        やさしい犬

          ミッドナイト•タイムトラベラー

          夜行バスに乗る時、世界の時間が逆転しているような気がする。 すべての生き物は、生命活動において必ず眠らなければならない。ヒトもその例外ではないし、こればかりは欠けると死ぬ確信を日々の修羅場で痛感する。しかしいくばくか他の生き物より頭脳で生きる私たちは、眠りの時間を旅の始まりの移動時間に充てることを思いついたらしい。 正直、夜行バスなど何度乗ってもまともな睡眠は取れた試しがない。それでもどこか、窓の僅かな隙間から差す高速道路の人工の光をみる静かな眠れぬ夜で癒される孤独がある

          ミッドナイト•タイムトラベラー

          岸辺のいきもの

          岸辺の亀とクラゲを見た。 こじんまりしているけれど、確かに演じられてきた作品の息吹が聞こえるような劇場。下北沢のシアター711。 現代劇を初めて体験した身にとって、まず驚いたのはセットの現実感だった。おとぎ話でもファンタジーでもなく、多摩川沿いのアパートの3階。住んで3年目くらいで駅からちょっと遠いけど近場にスーパーがあって、ベランダからの景色が綺麗。 何も言及されなくても、流れた時間が見えた。 自分の家から500m圏内で見たような生々しさで見せられる日常がゆるやかに軋

          岸辺のいきもの

          春待つ霜畑

          来た。3月。就職解禁の4文字熟語がデカデカとTwitterトレンドに書いてある3月。こんなに憂鬱な春が人生にあってたまるか。 大好きな写真家のお姉さんに会うために電車に乗ると、トレンチコートに黒スーツの女の子が点在していた。反射的に発狂しそうになる衝動を抑えてスマホの音楽だけに集中し、気がつくと暴風が吹き荒れる下北沢に流れ着いた。春の風は厳しい。気温よりもずっと冷たい風に耐えながら、この間行った占いで『あなた今冬の時期だからねえ…』と言われたことを思い出した。世間の春につい

          春待つ霜畑

          液晶の太陽は植物を騙せない

          地方就職を考えてる、と母に伝えた。想像の三割増しの気迫で『東京にしておけ』を360度からぶつけられた。 東京は利便性で言えば間違いなく日本一だ。その気になれば手に入らないものなど何もない。amazonを立体化するとこんな景色だろうか、と山手線から見える光を追っていた。東京にいる人は、ここにありそうでここにないどこかをずっと見つめてる人が多い気がする。元気に死ねる保障がないまま100年人生が続くことが平然と迫る奇怪な時代。数年先を見据えて生きるうちに足元のタンポポを踏み潰すこ

          液晶の太陽は植物を騙せない

          ドラマチックライフ

          内田也哉子のペーパームービーを読んだ。彼女は、自分の父へ送る弔辞に「Fxxkin’ 」と「Don’t rest in pease. 」を言う人だ。私には決して手を出せない暴力的な言葉に驚いて弔辞全文を読んでみると、淡々とした言葉の綴りに奇妙な愛が確かにあって、それが何とも心地よい力強さだった。 ペーパームービーは、也哉子さんの半生を描いた手紙のようなエッセイだった。綴られた小さな思い出は全て誰かに宛てられたもので、その隙間を覗かせてもらっているような気持ちでページをめくる。

          ドラマチックライフ

          地上の星

          やったことの結果が思うように出ない時は、大体どうしてやり始めたのか忘れている。 前にあるエッセイを読んで、平凡な日常は文字に綴るとこんなにも輝いて見えるものなのかと気づかされ自分も筆を執るようになった。いいことより悪いことが目につく時でも、些細な輝きを大切にできる人になりたかった。 ところがどうも、自分の文は輝度が足りない。やってみて突きつけられる己の拙さには何度でも打ちのめされるものだ。きっとどんなことに取り組んでもすべてこの道を通り続けるだろう。 そして初心に立ち返

          地上の星

          光るから星になる

          最近読んだエッセイに、国際宇宙ステーションの観測をきっかけに交際が始まったという話が載っていた。実話と受け止めるには美しさが巨大すぎて、思わず友達のにーちゃんに電話で共有した。 ひとしきりときめいた後に『でもね、これ言うのちょっと恥ずかしいんだけど…』とはにかんだ前置きで、にーちゃんが思い出を話し始めた。 ある夜中に『流星群が見れるかもしれないから一緒に見よう』という理由で彼氏が突然家に来たらしい。にーちゃんの彼氏はこういうロマンチックを臆面もなくやるのがとても似合う人だ

          光るから星になる

          春一番

          自分について嫌いなことのひとつは、人生が楽しそうな人を見ると勝手に落ち込んでしまう心。 高収入であるとか、港区に住んでるとか、でっかい皿に小さく盛られた綺麗なランチを食べているだとかにはまったく動じないのだけど、道端のたんぽぽを見つけて「春だ!!!」と思って振り返ると一緒に散歩していた人がすごく慈しみの込められたまるい眼差しでこっちを見ていた、などという日常に突然息吹きが込められてしまった瞬間を見るのが眩しすぎる。こういう風が吹き抜けるのは、好きなことに挑戦している人のそば

          蟹の家のメグ

          深夜にメグちゃんと電話をする。 日系三世のメグちゃんは英語がまったく話せないけど、日本名で呼ばれるのを嫌がる。ちゃんと英名の方が似合う人なので私もメグちゃんと呼ぶ。いつ会ってもフロリダの風を感じる明るさと、表参道バリキャリ3年目みたいな厳しさが共存している彼女との電話は正しく異文化交流だと思う。 メグちゃんの最近のトレンドは、ウィーンに住んでるファゴット奏者と友達になった話。spoonという音声SNSで知り合ったらしい。いい声の人に目がないのはよく知っているので「ま〜たい

          蟹の家のメグ

          熱海月面調査

          日本でいちばん月が綺麗なのは、熱海だと思う。 高校3年生の2月、卒業制作のデータ入稿に追われていたところに訃報が飛び込んだ。もう何年も会えていない静岡の下田に住む親戚。その葬式の日取りは入稿締め切りの翌日だった。 締め切り当日、ほぼ何も食べずに作業する私を見兼ねた母が手伝ってくれたはいいものの、あまりのもたつきにブチギレられながらようやっと入稿できたのは深夜2時。下田へ出発する時間まで残り30分を切っていた。早朝から始まる式に遅れまいと早めに移動を始めたいせっかちな叔父の

          熱海月面調査

          喪中模索

          さすがに、月イチで葬式というのは堪える。両方ともちゃんと知ってる人だし。 ストレスが限界に達すると、とにかく情報処理能力がサボテンよりもひどくなる。サボテンのIQは3らしい。どうやって数値化したのか分からないけど、大の大人が真剣にサボテンのIQを測る光景は結構かわいい気がするので見てみたい。 一日の始点が定まらないまま何度か太陽を見送った。こういう時にでも絵が描ける人がほんとにちゃんと向いてる美大生だったんだろな、とか思いながら手つかずのポートフォリオが頭の片隅に見つけて

          喪中模索

          コロナの外側レクイエム

          草木も眠る丑三つ時、首都高を爆速でかっ飛ばすプリウスに乗っていた。母方の祖母の危篤の連絡が入った。コンビニより人の死が年中無休 。タイミングなんて概念がない。 ナースステーションからほど近い病室に一家総出でなだれ込む。ベッドの祖母は、記憶よりずっと小さくなっていた。 「反応は無いかもしれませんが声は聞こえていますから 」と看護師さんが言っていたのをバカ正直に信じて、みんなで声をかけ続ける。『人のカラダで最後まで機能しているのが聴覚、最初に忘れるのが声』って誰が言ったのか知

          コロナの外側レクイエム