社会のきびしさとやさしさに包まれたなら
自分といふ存在が今ここから突然消滅したとしてもこの社会は回り続けるのだと考える時、本当にこの世界が心安らぐ場所になるような気がする。大切に大切にしてきた自分といふ存在の価値をあへてかなぐり捨てることがセルフケアにつながるとは何とも滑稽である。「心のノート」に頻出した「かけがえのない自分」といふ言葉に出会うたび、自分は自分を他の人間と比べて特別な存在だと確信せざるを得なかった。しかし労働市場あるいは研究機関の中で成果を出すことが求められるようになると、特別なはずの自己をとらえ直