『「緊急事態宣言延長」の週末の、きれいな空気』。2021.2.6.
天気がいい。
空が青いと気持ちがいいけれど、今日は特に色合いがきれいな気がする。
もうすぐ午前９時になる。
家を出て、駅までの道に小さい男の子が３人制服を着て、歩いていく。
駅前の１０００円カットには、3人の男性が並び、一心不乱にスマホを操作している。
少し先の牛丼屋には、中にお客が２人いるのが見えて、一人はゆったりと足を組んでいるのが見える。
フラッグ
駅のホームに着く。
通ってきた商店街の道を眺めて、そう言えば、いつの間にか「Tokyo 2020」のフラッグがなくなっていることに気づく。２０２１年になってから、いつ姿を消したのかも、覚えていない。
電車が来る。
ホームにいる人たちは、一ヶ所のドアからではなく、かなり分散して乗り込んでいく。それは「密」を避けるような行動に見えた。
電車内は、久しぶりに「ソーシャルディスタンス」を保てて、座席に座れた。
それでも終点の駅に着いたら、いつもと同じように人が降りて、結構みっちりとした人混みになって移動していく。
高い天井の窓から差し込んでくる光が、とても柔らかく感じて、気持ちがいい。
終電のお知らせ
改札を出て、次の改札までの通路に、使い捨てカイロが一つ落ちていた。
旅行のポスターに「五輪」と書いてあると思ったら、「五感」の見間違いだった。
改札を入って、今日も消毒のアルコールを使ったのは、私一人だった。
さっきとは違う路線のホームに降りて、電車がきて、乗った。
車内は静かで、距離をとって、座れるくらいだった。
しばらく座っていたら、汗をかきそうになった。窓が開いている分なのか、座席の暖房がかなり強めのようだ。
ドアの上の小さな画面には、鉄道会社からの「お知らせ」が表示されている。
３月１２日まで感染拡大防止のために終電を減らす予定ですが、翌日の３月１３日からダイヤ変更で、終電を繰り上げる、という内容だった。結局は、緊急事態宣言が再び出されて、それに伴って終電が減らされたけど、その緊急事態宣言がいつ終わるにしても、終電はずっとそのまま少なくて、それでダイヤ改正まで行く事が決まったことを知る。
途中で緊急事態宣言が終わって、終電を増やして、また減らす、といったことにしたら、手間ひまが大変だから、もうそのまま続ける、という判断をしたんだと思う。
知らないうちに、いろいろなことが決まっている。
揃いのマスク
座席に二人の中年のカップルが座っている。
男性は、フライタグのバッグを持っている。個人的には、リサイクル系では最も成功していて、お金があれば欲しいものだけど、たぶん、二人はご夫婦で、同じスマホの画面を見ながら、イヤホンを１つずつ分け合っていて、女性が時々笑って、男性に何かを話しかけている。
二人で、顔にフィットするタイプの、同じ白いマスクをしている。
そこに柔らかい空気があると思ったら、車両の逆の方向から、重めで乾いたセキの声が響いてくる。
次の駅で、近くに座って、時々、何かつぶやいていた男性がスッと立って、降りて行った。
ドアが開くと、急激に温度が下がる。というよりも、やはり車内の暖房がかなり強いことを改めて思った。
車内の中吊りに一枚だけ「Happy Valentine」という文字を含む広告がある。
静かな車内
夕方になり、用事も終わり、帰途につく。
駅へ向かう通路で、黒いマスクばかりの若い男性グループとすれ違う。
ちょうど電車がきて、乗り込むと、静かな車内だった。
ドアの上の画面にニュースが流れる。
米大統領 巨額のコロナ対策費維持
ANA 航空事業の職員２割減
サメ 半分に。
大坂なおみ 準決勝を棄権へ
英アストラゼネカ製ワクチン承認
千葉の養鶏場で鳥インフルエンザ
窓から見える夕方に近くなってきた日の光は、それでも、なんだか澄んできれいに思える。
駅の階段
乗り換えの駅に着いたので、降りる。
帰りも、改札付近のアルコールは私しか使っていなくて、時々、使っている人が少ないから、この中身はずっと前からのものではないか、とチラッと思うくらいだった。
後ろから声が聞こえてくる。
駅の階段の方から、子供の声で「わからない」と大きく響いてくる。
だんだん近づきながら、たぶん小学校低学年くらいの男の子と、若い父親が二人で歩いてきて、さらに父親を見上げるように、子供が続けている。
わからない。
ボクはわからない。
ねえ、わからないよ。
ぼくは、わからない。
わからない。
何が分からないのか分からないし、そんなに不安で切羽詰まっていないとしても、でも、真剣な響きは十分以上にある。
夕焼け
次の電車に乗るときに、電車が向かう先の空が夕焼けになりつつある。
薄いキレイな、だいだい色になってきている。
今日は、空気が澄んでいるのかもしれない。
当然のように緊急事態宣言は延長された。この１週間は、コロナによる死者という言葉を多く聞くようになってきたし、東京都で１０００人を超えた、という数字そのものも怖いし、報道という意味では仕方がないのかもしれないが、死んだ人を、数字だけで扱うような感じも怖いと思った。
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