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タチアオイ  「空を指す花」

 個人的なイメージに過ぎませんが、夏の花といえば、ひまわり。そして、タチアオイが思い浮かびます。 

 そして、ひまわりは、その強い印象とともに、太陽を追いかけるという伝説みたいなものを同時に思い出しますが、たちおあいは、夏の高い空と一緒の映像が思い出せます。

 タチアオイは、自分が、どこかで見てきたのか、よく覚えていませんが、時々、道端で、背が高く、何しろ、まっすぐに空に向かってのびている姿を憶えています。

 そして、花は、鮮やかな白や赤です。長い茎の途中で咲いていて、その花から、また上に向かって茎が伸びて、咲いている花の上は、小さめのつぼみが並んでいて、葉っぱは繁っていないので、矢印のようにも見えます。視線が誘導されて、気がついたら、季節は夏で、梅雨が明けてからなので、空の高さをより感じさせてくれるのが、タチアオイだと思っていました。

季節を告げる花

 ずっと、夏の暑い盛りに咲いていて、高い夏空とともにあったと思っていたタチアオイですが、今回、少しだけですが、調べたら、ちょっと違うようでした。

タチアオイ(立葵)は、茎の下の方の蕾から順番に咲いていきます。咲き始めは梅雨のはじまり頃で、てっぺんの花が咲くと梅雨が明けると言われています。

 雨が降り始め、梅雨に入るころに、茎の下の方から花が咲いている姿には、ほぼ記憶がないですが、そこから、だんだんと上に向かって咲いていって、夏空が広がるころに、一番てっぺんの花が咲いて、咲き終わるといった劇的な植物であることを初めて知りました。

 それは、おそらくはタチアオイにも、植物として生き残るためのシリアスな理由があるに違いないのですが、「季節を告げる花」として、人間の情緒的なストーリーを当てはめたくなるものがあります。

記憶とのズレ

 ただ、自分の記憶の中では、どうしても真夏の花で、しかもタチアオイの花は、茎の一番上ではなく、まだ上に余裕があって、茎がまっすぐ伸びていて、何しろ「空を指す花」というイメージでした。

 真夏に近くなればなるほど、上の花が咲いて、それも一番上の花が咲いているはずなのですが、個人的な記憶に過ぎませんが、今のところ、その姿を見たことがありません。

花に興味を持った理由

 花に対して、もともとそんなに興味があったわけではありません。

 個人的な理由ですが、高齢になった母に、病院に入院してもらっていた頃がありました。その期間は、亡くなるまで7年になりましたが、その病室に通っていると、いつも同じ光景だと、季節が分からなくなるのではないか、と思って、花屋で花を買って、病室に飾るようになりました。
 
 それは、結局は詳しくない人間のやることなので、まずはなるべく長持ちすること。それから、できたら季節が感じられること。色のバリエーションがあって、明るい色の花を多くしたいこと。値段もなるべく安いこと。だから、季節にもよるのですが、ガーベラは、よく買っていました。

 花を購入して、花びん、といってもガラスは危ないので、ぺットボトルなどを使って、花をさしていました。もっと花好きな方からみたら、それはあまりにも、雑なやりかただったと思います。

 病室に、季節感と色が欲しかった、という理由で花を飾ることを続けていました。そして、花は当たり前ですが、時間がたてば枯れたり、しおれたり、花びらが落ちたりします。だけど、そんなに次々と全部を変えられるほど、花を買い続けられるような予算は足りなくて、だから、時々、花びらの周辺が枯れてしまった時には、ハサミで切って、小さな花びらにして、その場をしのいだりもしました。そのことを、妻に話をしたら、驚かれたこともありました。

立葵の記憶

 そのくらいの花への興味だったので、本当の花好きの方へは、今でも微妙なうしろめたさもあります。ただ、母親の入院も長くなったので、少しは詳しくなりましたし、季節ごとに、母親に、どんな花が好きかを聞いて、できる限り、希望に応えようとはしていました。

 夏は、私は、ひまわりしか分からなくて、小さめのひまわりは、夏になると、必ず花屋にあって、それは季節感も伝わるので、買って、花びんらしきものにさしていたのですが、夏の花のことを聞くと、母親の口から、何度も出ていた名前が立葵(タチアオイ)でした。

 それも、母の夏のエピソードとともに、聞いたはずでした。そのことで「空を指す花」としてイメージと、夏の空と、母親の思い出の光景が混じり合って、私自身の、タチアオイの記憶は、できあがっているのかもしれません。

 だから、実際の姿とは、微妙にズレている可能性もあります。

 タチアオイは、園芸品種だというので、道端にそんなに咲いていないはずですが、なぜか、見た記憶はあって、もしかしたら、昔住んでいた実家の近所での光景かもしれません。

 それに、切り花として販売していた記憶もないので、病室で立葵(タチアオイ)を飾ることはできないままでした。

2020年の夏

 病院に通わなくなってから10年以上が過ぎ、花への興味は、またそれほどなくなっていたのですが、noteを2020年の3月に始めてから、身の回りのことに敏感になり、写真も撮るようになり、線路際のタチアオイにも気がつくようになりました。

 去年とは、まったく違う世界になってしまい、外出自粛の空気感の中、線路側にタチアオイが群生しているのは、もしかしたら、誰かが植えたのかもしれませんし、どこからか種がやってきたのかもしれません。


 私にとっては、今も「空を指す花」のままでした。



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コロナ禍によって、「さくら」や「あじさい」や「もみじ」の印象に、影響が出るかもしれない。



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