コロナ渦中の横浜トリエンナーレ
午前11時過ぎに電車に乗った。
いつもとは違う路線で、下りの東横線に乗って、みんなマスクはしているけれど、距離はとれていない。
ドアの上にやはりニュースが流れている。
霧の海。
ロッテの選手がコロナ感染。
菅首相が外交。
霧の海。
GAFA分割案。
広瀬すずさん感染。
隣に座った中年男性のコートの腕がさわりそうなのに気にしないから、私のほうが避けるように体をよける。女子高生が3人座っていて、一人が降りて空席ができたら、詰めてスペースを消していた。
ディオールの小さめの袋を持った若い女性がマスクをしながら、私が乗った時にはすでにメイクを始めていて、特に目の周りに力を入れているようで、だんだん明らかに変わってきて、最後は前髪を整えて横浜駅で降りて行った。
横浜美術館
みなとみらい駅で降りて、階段を登って、商業施設を抜けて、横浜美術館が見える。すでに作品に覆われていて、いつもよりも黒い建物になっている。
入り口には、大きなモニターみたいなものがあって、その前に立つと検温がされる。こういう機械は初めてだった。そのあと消毒もして、入る。カメラでの撮影が大丈夫な作品が多かったが、私のカメラは最初に使ったらフラッシュがたかれてしまい、ご遠慮ください、と言われ、その後、このカメラを使い出してから日が浅いせいもあって(リンクあり)、うまく操作ができず、おかげでほとんど撮影できなかった。
コロナ感染予防のための、お願い事項が4つある。
マスクをしましょう。
距離をとりましょう。
手洗いしましょう。
消毒しましょう。
手洗いと、消毒は、重なるような気もしたが、それでも、こうしたことの徹底は人が集まるイベントでは、必要なことになっている。
最も早い開催
この横浜トリエンナーレの会期は、2020年7月17日から10月11日になっている。
新型コロナウイルスの影響で、国内外でビエンナーレ、トリエンナーレといった国際美術展の中止が相次ぐ中、「世界で最も早い開催」なのだそう。
平日の12時に予約をして、でも、思った以上に人が多い。今回、入場制限のために事前予約制にしているはずで、もし、そうでなかったら、会期終了間際だけに、もっと「密」になるほど混雑していた、ということだったと思う。
入場する前に、正面入り口に、様々なものが大量にぶら下げられていて、入った瞬間に期待がふくらむような作品がある。ニック・ケイブ。「回転する森」。ほとんどの人が撮影をして、何枚の写真を撮っている。
展示を見て回る。
以前と違っていること
会場には、マスクをしている人しかいない、といった風景は以前とは変わっているが、全体的には、いつもの横浜美術館とあまり変わらない。この前行った美術館(リンクあり)と違うのは、親子連れで、小さい子どもの姿が目立つことで、あちこちから声が響いていることだった。そのおかげで、全体としては、静かな展示場に、明るさが加えられている。
展示室を出ると大きいソファーが並んでいる。
その上に、小さいパネルが置いてあるから、感染予防のために、座れないのか、と思って、よく見たら、それはアンケートを呼びかけるQRコードの告知だった。
トリエンナーレのせいか、スタッフが多いように思う。黒いスーツにマスクは、意外と合っているように感じる。
展示室によっては、入り口付近に一人スタッフがいて、あかりを灯してくれたり、足元に作品がありますから、当たらないように気をつけてください、と言ってくれているのに、私自身のうっかりで、映像作品に気をとられて、足をぶつけたりしたこともあった。
今のアートは映像作品がすごく多くなっているので、どちらかといえば、少し「密」になりそうになり、少し距離をとろうしていたら、展示の都合もあるので、「前に、おつめください」とスタッフに促される。隣のカップルが少し大きめの声で会話を始めたら、ちょっとこわくなって、そこから遠くにいく。
当然だけど、こんな感じ方をすることは、これまでにはなかった。
2001年の第1回から、ずっと見ているけれど、初めてのことだった。
映像作品が多いから、ヘッドフォンを設置されている場所も多い。
だけど、耳にあたる部分は、使うごとに変えられるように、紙のカバーがされている。そして、そうしたことがわずらわしいせいか、ヘッドフォンそのものを使わない観客も少なくない。
映像の作品の中には、プライバシーの関係もあって、撮影不可の作品もあるせいか、その注意喚起をするためにも、スタッフの動きが多く、時々、気がつかないうちに、そばを通り過ぎていて、それが、今は距離を保とうという気持ちがあるので、薄暗い中だと、ちょっと怖い。
「消毒」と「距離」
靴を脱いで歩ける作品があって、それは、足の裏の感触が変化して楽しいのだけど、そこを使う前には、必ず、手指の消毒を促される。
映像作品の前には、イスが並んでいて、それはいつもの光景だけど、ソーシャルディスンスを保つために、一つ一つがたっぷりとスペースをとっているから、座れる人は少なくなっているけれど、座れると、ゆったりして快適だったりもする。
一通り展示を見て、ミュージアムショップに行った。
今回の図録は、まだいろいろと未定だったから、買えなかった。
今日は、妻が都合が合わず来れなかった。ここまで撮影したい作品も少なくなかったが、どうしても、フラッシュを止める操作ができなかったので、ほとんど写真を撮れなかった。だから、図録を買って帰って、作品を見せたかったから、ちょっと残念だった。
トートバッグがあった。もうすぐ終了とはいえ、まだ会期中なのに、1500円が半額の750円になっていた。クリアファイルは、30%引きで275円になっていたので、2つとも買った。
午後2時35分頃に、最初の展示会場、横浜美術館を出た。とても、たっぷりと作品を見ることができたし、充実した気持ちだった。次の会場、プロット48へ向かった。
プロット48
歩いて、微妙な小雨の中を約10分。
横浜トリエンナーレは、2001年に始まって、それから、毎回見にきているのだけど、このルートは初めて通ったかもしれない。
昼ごはんを食べる時間も場所もなかったし、外食は避けたい気持ちもあったので、持参してきたスティック状のバランス栄養食を食べながら、歩いた。
あれこれ工事現場の写真を撮ってゆっくりと歩いたり、止まったりしたせいか、午後2時55分に、プロット48についた。
入り口で、検温があって、ここでは、感染拡大防止の取り組みの項目が増えていた。
入館時の検温。
マスクの着用
人と間隔を確保
手洗い・消毒
密集回避
スタッフの感染予防対策
さっきの横浜美術館より、項目が増えていた。
間隔の確保と、密集の回避は、一緒ではないか、とちょっと思った。
この会場も初めて来たけれど、ちょっと古いような感じもあって、それが味わいにもなっている。
今日は、横浜美術館も、ここも、若い女性が多い印象があったし、会期終了間際のせいか、平日の昼間なのに、人が多かった。今の展覧会は、一部をのぞいて撮影可が多いので、ほぼ全員がスマホで撮影をしている。
コロナ禍で、そんなにあちこちに以前よりは行けなくなっていて、こうした美術の作品は、いろいろなバリエーションもあるし、ビジュアル的にも目を引くものも多いから、トリエンナーレは、撮影場所としても優れているから、それで人が来ているのかもしれないとも思った。
密集回避
パフォーマンスもあったけれど、予約制で、次は午後5時で、その頃になると、帰りの通勤ラッシュになってしまい、その前には帰りたかったので、あきらめた。定員が18名になっていて、その会場の広さをチラッと見たけれど、おそらくはコロナ感染予防のために、密集回避のために、かなり人数を抑えたのだろうと思った。
そういえば、事前予約が必要な作品があり、私はチケットを事前予約する時に気がつかずに、横浜美術館でも見られなかったし、このプロット48でも、すでに最終日まで予約でいっぱいだと知った。ラジオで、コロナ禍の今の時代のことを考えた、観客がカサをさすことで距離を自然に保たせるような作品があると聞いて、ちょっと楽しみだったのだけど、それが、もしかしたら事前予約が必要な作品かと思うと、ちょっと残念だった。
それでも、事前予約を取り入れたのは、おそらくは行列を含めた、密集を避けるためであり、安全を確保するために決めた方法だから、おそらくは正しいことだとは思った。
コロナ感染拡大の世界の中で、最も早く開催した美術展ということなので、モデルにする場所もなく、考えたら、大変だったのではないか、とも改めて思うし、この開催を可能にするまでの様々な交渉、トラブル、工夫、いろいろな出来事をきちんと残したり、できたら、それも含めて作品化したものも見たいと思った。
このプロット48も、映像作品が多く、全部見るとすれば、3時間を超える映像作品もあり、(この作品の展示室の座る場所はクッションが見るからによそさうだった)かなりの時間がかかるから、こうしたトリエンナーレは、本当は、2日くらいかけて、もっと、ゆっくり見られたら、と思った。私は、個人的な感覚としては、あわただしく、午後4時15分には、会場をあとにした。
映像作品も、やはり全部をきちんと見たほうが、感じることも多くなると思うので、もう会期も残り少なくなってしまったのだけど、なるべく長い時間をかけて鑑賞したほうが、どこか遠いところへ行ったような気持ちになれると、思った。
今回の横浜トリンナーレは、もうすぐ終わってしまうけれど、見る価値がある美術展だった。もし、行かれる場合は、以下のサイトで、前もって、いろいろと知っておいてから、出かけたほうが、より楽しめると思いました。(私自身の反省も含めて、です)。
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