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急に冷えなくなった冷蔵庫。

 梅雨なのに、東京都内には、あまり雨が降らず、暑い日が続きがちなときに、少し暗いトーンで、妻に言われた。

「……冷蔵庫が冷えないんだけど」。

 一気に、自分の方が暗くなった。

 冷蔵庫の中の豆腐は、どうやらダメになってしまったようだ。

記憶

 もちろん、これまでずっと同じ冷蔵庫を使い続けてきたわけではないから、壊れたことがあった。その時は、冷蔵庫のドアを開けたとき、その内部の空気がモワっとしていて、外部と変わらないと、すぐにわかったはずなのに、少しの間、それでも本当は冷えるのではないか、と思いたくて、そのせいか、微妙に冷えているような気がしたことがあった。

 そんな記憶と重なって、そして、これから暑くなるのだから、壊れていたとしたら、すぐに買い替えなくてはいけないし、それでいくらかかるのだろう、といったことだけは、素早く頭に浮かんで、そのことが、たぶん、自分の気持ちを重くしたのだと思う。

冷凍庫

 だけど、一番下の冷凍庫を開けたら、そこは、確実に冷えていた。

 その場所は、零下の温度になっているはずで、入っている食品類は、まだ固くて、だから、確実に、ここの部分は「生きていた」。

 だから、そうなると、どこかが、詰まっているはずだから、まずはその上の冷蔵庫の中を見て、その奥には、その場所に冷気を運んでいる通路のようなものがあるはずだから、その前を、何かがふさいでいるのかもしれないと思って、冷蔵庫の中のものを少し出したり、並べ替えたり、奥の穴のような前に、もう少しスペースを開けた。

 冷蔵庫と、冷凍庫の、冷やし方の程度のダイヤルも調整した。

 それで、なんとなく、少し冷えてきたような気がした。のも、錯覚かもしれなかったけれど、それでも、確かに外気温と一緒、といった感じではなかったので、冷蔵庫も、少しは、まだ「生きている」ような気がした。

 それは、絵に描いたような希望的観測だった、ともどこかで思っていた。

検索

 明日は、仕事があって、だから、今日は色々と支度もあるし、気持ちも整えたかったので、どうして今日なんだ、という思いもあったし、つい口に出してしまったので、申し訳ないのだけど、妻には、嫌な思いをさせてしまったのだと思う。

 それでも、2階に上がって、コンピュータで検索をして、冷凍庫が冷えているのは、まだなんとかなるらしい、ということも知って、また1階の台所に戻る。

 そうしたら、妻に、私は気がつかなかったのだけど、冷凍庫が、きちんと閉まらない、といったことを教えてもらって、初めて、わずかに閉まりきっていないことに気がついた。

つらら

 冷蔵庫の一番下が冷凍庫になっていて、その引き出しを目一杯開ける。

 上に載っているプラスチックの棚をどかす。

 そうすると、内部まで見えて、もしかしたら、初めてかもしれないけれど、引き出しの奥に当たる部分には、氷の塊が見えた。それも、思ったよりも大きいものが、冷蔵庫の内部の壁の部分に張り付いている。

 手を伸ばす。引っ張ると、すぐに取れた。

 だけど、その氷は、思ったよりも大きくて、そこに置くわけにいかないし、と戸惑って、どこかに捨てに行こうとするよりも早く、妻が受け取ってくれて、流しに持っていってくれた。

 20センチ以上はある、ちょっとティー型になっている、やや重めの「つらら」のようだった。それを取って、再び、引き出しを締めたら、ピタッと閉まった。

 やっぱり、ちょっと気持ちいい。というよりは、これまで、ここは少しすき間があったのだから、もしかしたら、冷気が漏れていて、電気代を無駄に消費していたのかもしれない。と思うと、電気代の値上がりのことも頭の中にとっさに浮かんで、なんだか、勝手に悔しさまで上ってきた。

 それで、次に、ちょっと違う作業もしてみる。

 上の段の、冷蔵庫の内部に、照明が消えて、冷蔵のスイッチが入るボタンがある。それを、ドアを開けながら押すと、内部が暗くなって、そして、奥の方からの冷気が、ちょっと来たような気もしたけれど、まだ、よく分からないままだった。

霜取り

 まだ、できることがあるのではないか、と思い、そういえば、さっき、検索したサイトの中に、「霜取り」の言葉があって、それをみて、面倒くさいと思って、見ているけれど、見ていないような状態だった。

 だから、あとやれるとしたら、それしかないのだろうと思って、クリックをした。

霜がまだ薄い場合は40℃くらいのぬるま湯で濡らしたタオルを当てて拭き取るだけでOK。

 記事の中で、パッと目に入ったのが、この部分で、じゃあ、と思って、また台所へ行って、そのうちにゾウキンになるはずの古いTシャツを妻に聞いて、それに、湯沸かし器のお湯の温度を上げて、その布を濡らす。

 あったかい。 

 それで、少し布を絞って、さらに、一番下の冷凍庫を開けて、今度は、重かったけれど、引き出しそのものを、ローラーから外すように引き出して、本体から、完全に分離した。

 そして、奥に手を突っ込んで、空の状態になった、冷凍庫を囲む上下左右の「壁」というか、「本体」を、その布でふく。あんまり力を入れると、何かが壊れると怖いので、力を加減しつつ、ふいた。

 それで、なんとなく、いろいろとふきとれた気がしたので、また、引き出しを取り付ける。ここで、苦戦して、またイライラしてしまい、妻には迷惑をかけたが、それでも、なんとか、元通りになった。

冷気

 ここまでの作業の何が有効かどうか分からなかったのだけど、その作業をしていたのが、夕方くらいで、夜になったら、冷凍庫は変わらず、その上で、冷蔵庫の中にあったものも、明らかに冷えてきた。

 ドアを開けると、冷たい空気が出てくるのを、はっきりと感じたのだけど、そういえば、ここ何日も、こういう冷気を感じていなかったことを思い出し、実は、すでに何日も前から調子が悪かったのではないか、と気がついた。

 何が原因で、それをわかった上での対策をして、それで直ったわけではないので、どうも不安があったのだけど、翌日も、そのまま冷えていて、その中にあって、大丈夫だろうか、と思っていたカップのヨーグルトも無事だった。

 やっと、少し安心できた。




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