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スズメの水浴び。

 カラスは、いやでも目につく。

 ごみ収集の日は、そのやや濁った鳴き声が聞こえると、外の道路へ出て、周囲を見て、カラスがいたら威嚇しないと、時々、ゴミ袋を荒らされることがある。

 黒くて、大きい。
 怖さもある。
 その頭の良さについて、あちこちで語られる。

 だけど、おそらくはカラスと同じように目にすることが多いスズメは、そこまで注目されることが少ない気がする。


(カラスと生活していた芸術家までいる)。


スズメの鳴き声

 スズメは、小さい。

 見た目は、カラスと比べると、かわいい。

 だけど、とても警戒心が強く、それは生き残るのには必要だと思うけれど、ずっと人間と一定の距離を保っているイメージもある。

 道を歩いていると、時々、やたらとスズメの鳴き声が聞こえてくる場所と、時間帯がある。それは、道路のそばに立つ樹木だったりもするのだけど、それだけ鳴き声が聞こえてきて、何十羽もいそうなのに、そのスズメの姿は、ほとんど見えない。

 不思議なほど、どこにいるのか分からないのだけど、その鳴き声は、思った以上に長くランダムに続いていることも多い。

 あれは「会議」で、このあたりのプラスもマイナスの情報の全てを、そこで交換して、スズメは生き残ろうとしているのではないか。

 その鳴き声を聞くたびに、そんなことを思うけれど、その意味はわからないから、なんとも言えないままだ。

スズメの水浴び

 さらには、エサがもらえそうな場所を、スズメたちは知っていて、そこには、多くのスズメがいたりするように見える。人間が近くにいても、すぐに逃げたりしなかったりもする。

 それでも、ハトのように、エサを食べている間は、どれだけ近づいても、飛ばないのではないか、といったような、どっしりした感じはなく、ちょっと近づきすぎた、と思うと、やや揺れるような曲線的な軌道を描きながら、スピーディーに視界の外へ消えていく。

 だけど、時々、何があるのかわからないけれど、やけに、目のつくところに何匹もスズメがいたりする。

 その日も、スズメが道路のすみにいたらしく、路上に止めてあった自転車を、そろそろスタートさせようとしていたら、そのペダルの下の空間を、低空飛行で、通り抜けていった。

 なんだかスズメらしくなく、かっこよく見えたけれど、もっと安全な感じで飛んでいる印象が強く、それほどのスピードで飛び立つのは、あまり見たことがなかったけれど、それは、うっかり人間との距離が近くなりすぎるところまで、気がつかなかったせいかもしれない。

 同じ日、病院へ行ってきた妻が、偶然にも、スズメのことを話してくれた。


「…自転車で、病院にいく途中に、パッと左を見たら、薄い水たまりで、スズメがパシャパシャ。一羽だけ。そんなに大きくない水たまりにいた。

 そしたら、きれいに水紋が広がって、道路でなかなか見ない光景で、一瞬、通り過ぎただけだったけど、なんか、ワンシーンだった。

 よかった。

 あ、水浴びしてる、っていう感じ」。

 それを私に伝えてくれた。

 それで、その後、私が歯医者に行く時に、どこだろう、と思っていたら、水たまりもなかった。それを夜に妻に話をしたら、「もうなくなっていたかも。それだけ、薄い水たまりだったから」という話だった。

 本当に、その時だけの、「スズメの水浴び」だったようだ。


(※見出し写真は、妻がその時の事を描いてくれたものです)。





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