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ラジオの記憶㉜TBSラジオ『こねくと』--------「マニアの力を改めて思い知る」。

 オタクのイメージは、時代によって変わってきた。

 おたく、とひらがなで表現されていた時代から、カタカナのオタクになって、最初はネガティブな見られ方が強かったのに、今では、どこか一つの好ましいあり方、もしくは、徹底している人には、敬意すら向けられるようになった。

 考えたら、かなり昔から、たとえば骨董品を収集し財産がなくなった、といった人はいて、それは、どこかおかしい人、とも言われていたけれど、いつの間にか、マニアという言葉も出てきて、少し柔かいニュアンスが加わったが、その流れと、おたくも、オタクも確実につながっていると思う。

 実は、何かを、他のことを忘れるほど好きになるというのは、一つの才能であって、場合によっては、周囲の人を巻き込む、とんでもない力を発揮することがある。

 だから、微笑ましく見られるだけのものではなく、オタク、であっても、どこかに怖さを内包しているのは間違いない。

『こねくと』

 深夜のラジオで存在を知って、最初は俳優と言われる人が、キャラ作りで「電線愛好家」と言っているだけかと反射的に気持ちが構えてしまったが、その話を聞くうちに、それは偏見と誤解ではないかと思って、本も読んだ。

 とても親近感を抱けるエピソードと、この人は、電線を好きだということが自分を支えてもいるのも分った気がして、改めて、何かを好きであることの重要性を知った。と思っていたら、昼間のラジオのパーソナリティになっていた。

 その番組の中のコーナーで、水曜日に『愛好家同盟』があって、最初に「駅もれ」の愛好家が現れ、一瞬、リスナーとしても戸惑うしかなかったが、さらに、番組のツイッターで、実際に、駅の水漏れを何とかするために、ししおどしまで作っている駅があると知った。


 その画像も見て、あまりの意外さに驚き、ちょっと興奮し、自分が知っている、この「駅もれ」もテーマにインスタレーションの作品も制作しているアーティストがいることを伝えたくて、珍しく番組にメールまで送ってしまった。

 それは、愛好家の魅力や力を理解している、自身も電線愛好家であるパーソナリティが、その力を発揮させてくれたので、リスナーまで巻き込まれたのだと思うし、自分のオタク傾向も刺激されたことも感じ、久しぶりに「好きであることの力」を感じたのだった。

チョコレート愛好家

 この昼間のラジオ番組の「こねくと」も、時々聞くようになり、この前も、「愛好家同盟」のコーナーを聞いた。

 ちょうど、チョコの話だった。

 ここに出演していた「チョコレート愛好家」の人は、3種類のおすすめのチョコをすすめていた。そして、思わず、メモをとっていた。

 最初に紹介されたのは、ちょっと意外だったけれど、「ブラックサンダー」だった。それも、自分が知らないうちに、チロルチョコと同様に、基本のブラックサンダーは、値段はそのままだけど、いろいろなバリエーションの「ブラックサンダー」を出していた。そのうちの一つ。「ブラックサンダー 優雅なジャンドゥーヤ」という、なじみがない上に、ちょっと恥ずかしくなるような名前だった。

 だけど、値段は100円以下の上に、放送中に食べていた様子が音声だけだったけれど、とてもおいしそうに思えたのと、ラジオに出ているマニアや、オタクな人たちに対しては、なんとなく信頼してしまう癖が、自分にもあるのに気がついた。


 次が、ゴディバ。それもチョコレートドリンク。

「ショコリキサー ダークチョコレート カカオ72%」

 名前を一回では覚えきれず、何度か名称を聞いて、やっと検索したら、さすがにゴージャスな感じで、美味しそうに見えた。そして、ゴディバのチョコレートドリンクがあるのも知っていたのかもしれないけれど、値段のこともあり、これまで意識ないようにしてきたせいか、実際に飲食することは考えられなかった、自分の「不自由さ」にも気づいた。

 だけど、駅前にできた麹ドリンクの値段がこれくらいで、この前も飲んだのだから、と思うと、急に飲みたい気持ちが大きくなった。

 番組中では、このドリンクのクリーム部分にかけられているチョコのソースのかけられ方が、「電線みたい」ということで、パーソナリティ・石山蓮華のテンションが、一瞬、タガが外れたような上がり方をしたが、その反応で、やっぱりウソを言わないのではないかと思って、より、このドリンクへの興味は高まる。

高級チョコレート

 そして、最後は、ビター、という条件での一品。

 ジャン=ポール・エヴァンの「シガーアンショコラレ」という約4000円もするチョコレートだった。(ウソのように覚えにくい名前だと思った)。

 店の名前は聞いたことがあるし、そのチョコの仕上がり具合の、枠にハマらないようなデザインも、アーティスティックだと思い、ああいうところが真似がしにくくてすごいと思いながらも、マリーアントワネットのような人間だけが食べるものだと思い込んでいて、自分が購入するものとしては、興味は持てない状態だった。

 だけど、その画像もみて、そして、もしも、高級チョコレートを食べるような機会があって、今はアルコールを飲まなくなったし、タバコも吸わないから、といった言い訳も重ねて、さらに、もう少し収入が多くなったら、他に選択基準という情報を持っていないから、そのうちに食べてみたい、という気持ちになった。

マニアへの信頼

 それは、このラジオ番組の、このコーナーへの信頼が、初回で勝手にできていたのかもしれない。

 パーソナリティが、本人も「愛好家」を名乗り、それが嘘に思えないような言動をしているので、そのコーナーに出演する「愛好家」が本物かどうかについては、はっきりと口に出さなくても、伝わってくるのではないか、という妄信に近い気持ちもあった。

 今回の、メインパーソナリティの反応も、チョコレートに関して3つの選択のバランスも含めて、このチョコレートの人は、信頼に足る「愛好家」のような気もした。

 その自分の気持ち自体、ラジオで話をするだけで、他のテレビのようなメディアよりも、やっぱり勝手に信頼感が増すことに、自分自身を疑いたくなるくらいだったけれど、紹介された3種類のチョコレートを検索し、画像でも確認し、もしかしたら食べられるかもしれない、などと想像している時は、やっぱり楽しかった。


 思わず、その日に、今日は買い物の予定がなくても、コンビニでも見に行こうと思っていたし、翌日にはスーパーとコンビニに寄って、目当ての「ブラックサンダー」がなかったのに、違う種類の「ブラックサンダー」を買ってしまうほど、浮き足立っていたと思う。


 基本的に、「マニア」や「オタク」や「愛好家」と言われて、その純度が高い人に対して、自分がかなり信頼していることに改めて気がついたけれど、その、人を巻き込む力の強さを、(勝手に)改めて感じたのだった。

 こうした出演者と、ラジオは思ったよりも相性がいいのかもしれない。



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