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「永遠のヒーロー」が与えてくれるもの。

 少し前のことだけど、テレビを見ていたら、ナイツ・塙宣之が、少し意外なことを話していた。

 この時の「アメトーク」は、「大学お笑いサークル芸人」だった。大学のサークルからプロの芸人になった人たちが集まり、そこで語られる「大学のお笑いサークル」での話は、独特の熱気価値観が感じられて新鮮だった。

 その中でナイツ塙信之が、「今でも一番面白いと思っている芸人」として、当時の大学サークルの先輩である「コマツザワヒロシ」という人の名前をあげていた。

 その時の衝撃で、ずっと面白いと思っている。

 それは、今はプロとして活動していない、ということも含めて、どこかネタとして扱われるのかもしれないが、それでも、かなり本気のようにも思えたのは、全く違うジャンルで、しかもかなり昔だけど、似た話を聞いたのを思い出したからだった。

永遠のヒーロー

 昔、スポーツの現場で、取材をして原稿を書いて生活をしていた時期があった。

 その頃、日本のアメリカンフットボールの世界では、圧倒的に強い大学チームがあり、そこには、その強さを支える選手たちも集まっていたように見えていたけれど、スタンドから見ていると、どうしても得点にからむプレーヤーが目立つ。

 攻撃の方法は、ボールを投げて前進する方法と、ボールを持って少しでも前へ行く、どちらかを選択する。そして、ボールを持って進むことを専門とするのがランニングバック、というポジションだった。

 そして、何度も日本一になるそのチームには、優秀なランニングバックがいた。体はそれほど大きくないのだけど、そのスピードと、ディフェンスのプレーヤーのタックルをかわすのがうまく、そして、どこへ進むかの瞬間的な判断力に優れていて、とても止めにくいプレーヤーに見えていた。いつの間にか「牛若丸」という異名まであった。

 すでに日本一を達成し、誰が見ても名プレーヤーと言われるようになった、そのプレーヤーにインタビューする機会があり、その時に、自分にとってのヒーローについて尋ねた。

 これまでは、こうした質問に対して、アメリカのプロのプレーヤーだったり、国内でも、すぐに名前が分かるような有名な選手の名前を挙げる人が多かったが、そのプレーヤーがあげた名前を全く知らなかった。微妙にあわてた。それは自分が無知なせいだと思ったからだ。

 そうしたら、そのプレーヤーは、説明を捕捉してくれた。

 高校の先輩です。大学に進んでからはフットボールを続けていないかもしれません。だけど、その先輩のプレーは、ランニングバックとして、すごかった。今でも、一番すごいと思っています。

 その先輩は、今はプレーヤーとしては表立った活躍をしていない。だけど、高校生の時の、そのプレーヤーにとっては、圧倒的なヒーローで、しかも、それからは、ある意味では姿を消してしまったから「永遠のヒーロー」であり続けているはずだ。

 その話をするそのプレーヤーは、真っ直ぐな視線だったのは覚えている。

初心を忘れないこと

 当時の日本のアメリカンフットボールは、大学が一番盛んで、その後、社会人として続けても、大学チームの方が強い、といっていい時代だった。

 だから、大学で日本一になってしまうと、次のモチベーションを保つのが難しいのではないか、と取材する立場としては思っていた。

 だけど、そのランニングバックのプレーヤーは、その後も、フィールドの中で、キレのある動きで、自在に前へ進む姿を見せてくれていた。

 あまりにも感傷的にすぎる見方なのだけど、今でも高校の先輩が「永遠のヒーロー」であるならば、どれだけ自分が上手くなっても、すごい選手になっても、追いつくことは不可能だと思う。

 高校生の自分が、凄いと思った、その凄さは、日本一のタイトルもとった自分のプレーと、客観的に比べたら、もしかしたら、すでに凄くなくなっているかもしれない。

 だけど、その先輩が「永遠のヒーロー」であり、その姿が気持ちの中にあれば、それはフットボールを始めた頃の「初心を忘れない」ことにもつながり、もっと上手くなりたい、という思いを保つことに、かなり貢献していたのではないか。

 そんなことを、後になって、思ったりもした。

ナイツ塙宣之

 バラエティにも、笑いに関しても、そんなに詳しくはないのだけど、ナイツ塙宣之をテレビ画面などで見るたび、何か違うことをしようとしているような、このままではいけないのでは、といった焦りのようなものを感じることがあった。

 それは、ずっと考え続けている気配でもあり、そんな見方をすること自体が、特に芸人に対しては、野暮なのかもしれないが、それが確信できたのは、その著作を読んだからだった。

「アメトーク」での、大学サークルの先輩を、ずっと凄くて、面白いと思っている。といった発言を聞くと、ナイツ塙にも「永遠のヒーロー」が気持ちの中にいて、その存在に追いつくことは、ある意味では不可能なので、そのことで「初心を忘れない」ままのように見えるのかもしれない。

 そんなことを考えたけれど、ただテレビ画面で見ただけなので、本当かどうかは分からない。だけど、「永遠のヒーロー」が心の中にいることは、志を保つ意味でも必要なのではないかと、改めて思った。




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