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「曖昧な週末」。2021.3.13.

 朝から雨が、がっつり降っている。
 午前9時前、久しぶりに本降りと言えるような雨だと思う。

 雨の音が大きくて、逆に周りの音が聞こえにくくて、静かな感じがして、駅まで歩いていく。通り過ぎる人は少ない。駅前の1000円カットの理容店の前にカサをさして、一人待っている。

 ホームには10人少しの人が待っている。
 今日は、気温が高いのか、雨で少し寒くなっているのか、よく分からない。
 あいまいな気候だった。

電車の乗り換え

 電車が来て、電車に乗ったら、かなり人が多い。
 たぶん、先週よりも、多い印象がある。
 窓が少し開いている。
 セキの声が聞こえる。

 電車は、終点に着くと、ドアに人が一気に殺到するから、ぶつかりそうになる。もう以前と変わらないような土曜日になってきたように思う。
 
 電車を降りて、改札を抜けて、次の改札を通る。 
 そのそばにある除菌のアルコールを使っている30代くらいのピシッとしたスーツを着た男性が、両手を丁寧にすり合わせているのが見えた。
 その後に、私も使う。

緊急事態宣言延長

 1月に入ってからすぐに緊急事態宣言が出されたから、それが「日常」になってしまっていた。2ヶ月がたって、当初の予定では、今週の月曜日には、緊急事態宣言が解除されるはずだったのに、当たり前のように延長された。

 これ以上、何をどう気をつければいいのか、よく分からず、目標もあいまいなままに感じる。

 ワクチン接種のニュースもよく聞くようになったのだけど、いつになったら、こちらまで回ってくるのかも分からない。ワクチン接種のために、クーポンが送られてくるらしいけれど、自分の偏見かもしれないけれど、このクーポンという軽い響きにも微妙に抵抗感もある。

 しかも、変異株のことで、ワクチンが単純に「希望」になるかどうかも、あいまいになってきたような印象まである。

 
 さらに、最近になって、感染が再び増加するのでは、という話題が多くなり、ダイエットの時にも使われる「リバウンド」という言葉をよく聞くようになった。

 2ヶ月間、緊急事態宣言のままなのに、そんな状況になってしまったら、もう延長をしても仕方ないのではないか、といった気持ちにもなっているけれど、今週も、緊張感が強まった感じはしなくて、今日も人出は多いような気もしている。

2つのスーツケース

 電車に乗った。
 2両目に乗ったら、思ったよりも人がいっぱいいたので、1両目に移動する。
 出発するはずの時間になっても、電車が出ない、と思っていたら、アナウンスが入って、緊急停止ボタンが押されたため、と知る。少し遅れてスタートし、結局は4分遅延したが、そのことを、駅に着くたびに謝っていたようだった。

 立っている場所から「ソーシャルディスタンス」を開けたくらいの場所にスーツケースを持った若い女性が立っていて、2つ目の駅で、同じようにスーツケースを持った若い男性が合流し、マスクをしていても、表情がたちまち明るく柔らかくなるのが分かった。

 2人とも、スーツケースと一緒に、誰かに手土産で渡すような紙袋も持っていて、とたんに、その場所が明るくなり、会話も続いているようだった。何しろ楽しそうで、その雰囲気のまま、乗り降りが多い駅で、2人で降りて行った。

セール

 目的の駅で降りると、女性の駅員が旗を振って、今乗っていた電車が出発するのを見守っている姿が、少し遠くに見えた。

 改札を抜け、駅の構内から出るギリギリの場所で、スーツを着た中年男性が、お腹の前あたりに札を掲げ、アパレルのブランドのセールをしている告知をしていた。棒がついて、高く掲げられるプラカードではなく、低く構えているのには、いろいろな理由があるのかも、と思ったけれど、その違いは分からない。

 雨が降っている。
 弱まる感じはしない。

 歩いていて、これからスタートしようとしているバスの運転席で、運転手が目薬をさしているのが見えた。


 雨が降っているから、カサをさして、今日も当然のように、みんながマスクをしている。

大人な男性

 雨が降って、とても強い風が吹き、雷まで鳴ったらしいのだけど、それを感じたのは、夕方になって、屋内での用事が済んで、駅まで歩いている時に、まだ雨も風も強さが残っているせいだった。

 そんな中を歩いていると、一生懸命歩いているだけで精一杯で、いろいろなことを考えられなくなる。何かを積極的にやろうとか、気をつけようとか思えなくなる。

 駅に着いて、電車がきて、電車に乗る。

 車内に入った時に、目に入ったのが、酔っ払って、空席があるのに、ドアのそばで手すりにつかまり、あちこちに体を預けて、やっと立っているような中年の男性で、つい、そこからは、距離があるドアのそばに立っていた。

 電車が動く。

 そのやっと立っている男性は、寝ているようで、ガクンガクン、ぐわんぐわん、と揺れている。器用だと思っていたら、突然、ヒザから落ちて、顔だけを出して、ほぼ姿が見えなくなった。大丈夫だろうか、と思っていると、しばらくたつと、また立ち上がって、また眠り始めた。

 空席もあるのに、座らないのだろうか。

 ガクン、ガクン、ぐわん、ぐわん、ぐわんを繰り返し、かろうじて立っていた。
 突然、また崩れ落ちて、今度は、その途中で顔をうったようで、メガネが飛んだ。
 顔を押さえながら、メガネを静かに顔に戻し、また立ち上がっていたから、大丈夫なんだ、と思っていた。

 でも、また揺れている。

 次の駅に着く少し前、私から少し遠いところにコートを着て、マフラーを巻いて立っていた、落ち着いた中年の男性が、その2度崩れ落ちた男性のいるドアのところに歩いて行った。男性の肩に軽く手をあてて、「座った方が、いいんじゃない」と柔らかく通る声で、促すように、空いている席に誘導していた。
 
 必要以上に押し付けがましくない上に、自然な行為だった。そのまま、コートを着た落ち着いた男性は、ドアが開いたら、電車を降りて行った。

 2度崩れ落ちた男性は、静かに座席に立って、また眠っていた。

 その「大人な男性」の行為を見て、最初に倒れた時に、ちゃんと声もかけられなかった自分が、少し恥ずかしくなった。
 できるのに、やらなかったことに気づかされた。

「夕焼け雨」と虹

 電車を乗り換える。

 次の電車は、大雨の影響を受けて、ダイヤが乱れていることを知った。
 そんなに降ったことを、改めて感じる。

 帰りに図書館に寄った。
 
 本を返して、予約して届いた本を、借りて、図書館を出た頃は、雨が降っているのに、夕焼けになっていた。少し歩いて、下り坂に差しかかったところで、虹が出ているのを見た。

 雨が降っているのに、晴れているのを「天気雨」と言ったはずだから、今の状況は「夕焼け雨」なのだと思った。

 雨で夕焼けで虹が出ている。
 変だけど、でも、久しぶりに見た虹は少し薄めだけど、きれいだった。
 ほどなく暗くなってきたので、より短命な虹だったのかもしれない。




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