テレビについて(59)「共有できないインターネット史」------『マジキタ大草原』。
すでに、ただの視聴者でも、「番組改編期」とか、「1クール」といった言葉を、不正確かもしれないが使うようになっている。
テレビドラマは、「全○話」と最初に表示されなくなってから、より、わかりにくいが「打ち切り」が増えている気がして、ドラマによってはとても残念な場合もあるけれど、そのせいか、そのはざまのようなときに、不思議な番組を放送することがある。
題名だとなんだか分からなくて、変なドラマだったり、もしくはホラーと思ったらフェイクドキュメンタリーだったりして、だから、特に、3月末や、9月の終わり、さらには年末の番組は、ちょっと構えながら、知らない番組を見てしまう癖がついた。
マヂキタ大草原
タイトルだけだとなんだか分からなかった。それにどうやらこれまでにすでに何回も放送されていることも知った。
マヂカルラブリー・野田クリスタルと、真空ジェシカ・川北茂澄が司会で、インターネット老人会という表現で、すでに自分たちしか知らない過去の情報があることを前提に、ゲストの「若い」みりちゃむになんとなく伝える、という趣旨のようだった。
ただ、少し見ていると、その司会の二人が知っていることを、なつかしく、楽しく話し合っているだけのようにも見えてきた。
野田が1986年、川北が1989年生まれだから、二人とも30代後半。
みりちゃむが、2002年生まれ。
司会とゲストの年齢差は、15年くらいあり、二人の話すインターネット上での流行の話は、ゲストは全くわからない、という反応が多かったが、司会よりもかなり年齢が高い視聴者である自分も、やっぱり知らないことばかりだった。
そのうち、この二人だから、もしかしたら、この番組の全部が、フェイク、というか、単純にウソなのではないか、と短い時間の中で思うようになった。
番組紹介の中に、こうした文章もあったが、ベスト3のうち、2曲のことは、今振り返っても全く覚えていない。それくらい知らないことだった。
男女
そのうちに、名曲に関する人が出てきます、というVTRが流れ始めた。知らない土地。そして、ジーンズをつくっているという知らない男性。その人に質問をし、答えると、司会の二人、特に野田が盛り上がっている。
えー、あの人なんだ。
その反応がどうしても本当には思えなくて、そして、その男性は、歌い始めた。
太郎、と名乗った。
うわー、なつかしい。
司会の二人だけが盛り上がっていたが、全く知らない曲だった。
「男女」という曲名。
それは、学校に通ったことがある人間であれば、そういう場面があったような気がする、巧みな歌詞で、男子生徒と、女子生徒の席順を教師(隊長?)が指示する、という設定だった。
あまりにもスムーズな展開。
だけど、太郎、という名前。男女、という曲名。
視聴者としては、知らなすぎて、うそだと思った。
ゲストの20代前半の女性も、違う世界のことを言われているような表情だった。
夜中にやっていて、途中から見なくなった真空ジェシカの番組を思い出し、やっぱり、これは、うまくフェイク動画を作ったようなものではないか、と思っているうちに番組が終わりそうになっていて、内容がうまく理解できないままだった。
検索
そのあと「男女 曲」で検索したと思う。
その時でも、本当のことだと思っていなかった。
本当だった。しかも、かなりの人が知っていることのようだった。
実は、それでも、この「Wikipedia」自体も、「マヂキタ大草原」という番組が、つくっていないだろうか、といった疑いまであったのは、その「男女」のことを、あまりにも知らないからだった。
ただ、歌詞まで紹介されていて、これは確かによくできていた。
とはいっても、それでも全面的に信じられないのは、自分が疑り深いのと、知らないことに対しては、警戒心が出てきてしまう、という人間の感覚的なことにも関係しているのかもしれなかった。
Windows 95から、スマホ誕生までのインターネット
Windows 95が発売されて、行列ができているニュースを見たのは覚えている。それによって、何かが変わった実感は少なく、そういうことに関心がある人たちが盛り上がっていた印象だけだった。
その4年後には、自分は仕事もやめて介護に専念する生活に入ることになり、そのときに、そのままだと完全に人生は終わると思ったので、迷いながらも、マックのパワーブックを購入し、キーボード操作のトレーニングができるゲームを購入した。
インターネットにはつないでいたけれど、電話回線だったし、メールは始められたけれど、それほど積極的に検索もしていなかった。それが何年も続いた。
アイフォンが登場したのは2007年だった。現在の地球上の普及率を考えると、これだけ短期間で浸透した商品は、人類史上でも屈指のものかもしれない。だから、今だに携帯もスマホも所持したことがない私のような人間は、不思議な目で見られるのだろうけど、そのことで社会は決定的に変わった気もする。
さらに、Twitterが登場し、日本で普及し始めたのが2008年と言われているから、そのことで、情報の拡散力が、全く違うものになったような印象がある。
だから、これは推測に過ぎないし、インターネットにも詳しくない人間が言う資格はないのかもしれないけれど、「マヂキタ大草原」で言われていた「インターネット老人会」と表現される(それでも、30代くらい)人たちは、Windows 95から、スマホ登場までのインターネット会に詳しい、ということではないだろうか。
その時期は、コンピュータを持っていても使いこなせていない私のような人間と、すっかりインターネットの中にいるような人では、圧倒的に違いが出てきていて、でも、そのインターネットに詳しい人は、まだそれほど多数ではなかったのではないか。
「男女」がインターネット上で話題になったのは、2006年。
これは、無意味な仮定かもしれないけれど、もし、この「男女」が2008年頃に登場していたら、ゆりちゃむも知っていたし、もしかしたら、私のような情報弱者でも知っていたかもしれない。
それほど、スマホ登場以降の情報の広まり方は、質が違うものになっているはずで、だから、今のインターネット上の問題は、スマホ以前のインターネット環境との違いを検討することで、少なくとも、その問題の見え方が違ってくる可能性はないだろうか。
だから、「マヂキタ大草原」の中で、「インターネット老人会」と評される人たちは、まだ決して多数派ではなかったインターネットの歴史を知っている存在として、これからも、情報を伝えてほしいと思ったりもした。
ちょっと大げさと笑われそうだけど、技術の変化のスピードが、現代は人間の限界を超えている気もするので、そうしたこまめな振り返りは、以前よりも大事になっているのは間違いないように思う。
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