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1分読み切り短編小説

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1分で読める1話完結の読み切り短編小説集。素早い展開、あっと驚く結末、読み返したくなる読後感。描写を極限まで削り、あっという間に結末へと導く。1分で映画のような世界観を味わってほ… もっと読む
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記事一覧

1分読み切り短編小説「ドローンからの伝言」

1分読み切り短編小説「ドローンからの伝言」

「マカニ」は、
自分の最後を知らせる
赤いランプを点滅し続けた。

「マカニ、、、、。」

マユミは、
マカニを胸にその最後を
見守っていた。

マカニは、
AI搭載のドローンで、
この時代では、

ドローンはもはや
かつての「家族」の役割を
担っている。

資本主義の崩壊。

人口増加、環境汚染による
食料問題。

激しさを増す異常気象。

未知のウィルスとの共存。

新世界政府は、
人口を削減

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1分読み切り短編小説「天と地と人」

1分読み切り短編小説「天と地と人」

妖艶な美しさを持ったその女は、
天術の使い手。

名前をレイという。

天術とは天を操る術をもつ。

その美貌を気に入った
西の王はレイを召し抱え、

偶然、天を意のままにすることになった。

王は西の大陸を掌握し、
さらに西、南、北へと勢力を伸ばした。

天を味方につけた西の王に、
南の王も北の王も
跪くしかなかった。

残すは、
広大な海に阻まれた
東の国だけだ。

数々の国が
東の国へ侵攻し

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1分読み切り短編小説「未完成のアート」

1分読み切り短編小説「未完成のアート」

そいつは胡散臭い奴だった。
名前は「画伯」だと。

女がそこにやってきたのは、
もう何もかも嫌になったからだ。

そんな時、
このBarを知った。

「Art Bar Gahaku」

アーティストが生み出す
不思議なアートが
どんな悩みも解決してくれる、と聞いた。

そのアーティストが、
女が座るカウンターの向こう、
目の前にいる「画伯」。

黒い帽子に、黒い服。

斜めにかぶったキャップに、

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1分読み切り短編小説「私とローリングソバット」

1分読み切り短編小説「私とローリングソバット」

彼に振られた。

マイはずっといい子でいた。

子どもの頃からそう。

いつもいい子だった。

なのに、振られた。

どうして?

マイは、
ご飯を食べるのが怖くなった。

いや、
食べて太るのが怖くなった。

だから、
リセットするようになった。

でも、そんな自分が嫌だった。

YouTubeの動画には
プロレスがよく上がってくる。

別れた彼がマイの携帯で
よく見ていた物が
今尚上がってくる

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1分読み切り短編小説「世界を救う男」

1分読み切り短編小説「世界を救う男」

世界の危機を
知ってしまった男は、

世界を救うため
1人極秘裏にミッションを
行う予定だった。

しかし、
自宅を出発前、

生理的緊急事態に、
トイレに駆け込んだ男は、
不運なことに、
とじこめられてしまう。

トイレの前に
立てかけてあった
テーブルが倒れ、

ぴったり廊下とドアの間を
塞いでしまったのだ。

ドアは外開きで
ビクともしない。

男は一人暮らし。

マンションのトイレに窓はな

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1分読み切り短編小説「彼女が美人に着替えたら」

1分読み切り短編小説「彼女が美人に着替えたら」

ダンボールで
梱包された荷物が届いた。

差出人には覚えがなかったが、
「ギャランティ」とだけ書いてある。

「ギャランティ?
どういう意味だろ?」

ユカは首を傾げたが、
荷物の中身が書かれた品名に
さらに疑問が深まった。

「美人ボディスーツ」

送り先を間違えたのかと思い、
宛名を確認してみても、

しっかりと
自分の名前と住所が書かれてある。

商品を送りつけて、
あとで高額な請求をする

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1分読み切り短編小説「天地創造」

1分読み切り短編小説「天地創造」

僕は、今ただ真っ白い壁に
囲まれた迷路みたいなところにいる。

この空間には、何もない。

壁に絵画の一つでもあったら、

通路の花瓶に生けた
一輪の花でもあったら、

どれだけ心が躍るだろう、とさえ思う。

しかし、
壁には落書きのひとつすらない。

どこまでもただ無機質な空間が
そこにあった。

一体ここはどこで、
どこまでこの通路は続くのだろう?

次の角を曲がれば、
もしかしたら出口がある

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1分読み切り短編小説
【スナイパーと桜】

1分読み切り短編小説 【スナイパーと桜】

このところ、
コロさなければいけない奴が
増えてきた。

「コロす」と言っても、
思想転換薬を
ぶちこむことだが、

フミカは、
これを仕込んだライフルで
長距離から狙撃するスナイパーだ。

フミカは、
スナイパー大学校を
最年少首席卒業。

その後、
世界で数人と言われる
新世界政府公認スナイパーとなる。

10年前、
新世界政府の政策により
世界の安全を脅かす
「キレイゴト思想」を持つ人物には

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1分読み切り短編小説
【無意味なシゴト】

1分読み切り短編小説 【無意味なシゴト】

宇宙の片隅で。

「こんなことに
どんな意味があるんだろう?」

マリエは、
透明のガラスケースに入れられた
それを眺めながら、

すっかり飲み飽きてしまった
コーヒーをなお口に運んだ。

単純な仕事だ。

ボタンを押して、
それを動かし、
時間を測る。

決まった時間きっかりに
動かしたそれを
元の位置に戻すだけの仕事。

ただ少しややこしいのは、
30分で自動的に一周するそれを
マリエが手動で

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