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#56 キャプテンの使命

Oliviaの落ち着かせることしかできない私は
ひたすら背中をさすって
呼吸を整えるように声をかけていた。

数十分が経ったころだったか、
Oliviaに声をかけながら
視界の片隅に何かの光を感じた。

それはまるで炎が揺らぐような
チラチラとした光だった。


出口へ向かったランタンが
戻ってきたのかと思ったが、
その光は上からではなく
私達のいる窪みの中にあった。

私はそのチラチラと感じる灯りの方へ
近づこうとしたときだった。


遠くで人の声のようなものが聞こえ、
先程見つけたこぶし大の細長い隙間から
強い光が一瞬、サッと差し込んだ。

Oliviaの呼吸はかなり落ち着いていた。
私達はその声に耳を澄ました。


「おーーーい!」

その声の主はDanだ。

「Dan!ここよー!」

砂埃に喉をやられて
2人ともあまり声を上げられなかった。

Danにも届いていないようだった。

どうしよう?と思いながら
とある不安がよぎってしまった。


Danはとてもおっちょこちょいであることは
この日、目の当たりにしていた。

Danが私達に気が付いて、
慌てて岩を動かしたり
頭上の岩を砕いてしまったら?

今よりも悪い状況に陥るのでは…

Oliviaも不安そうな顔で
私を見ていた。


そんなOliviaの胸元で何かが煌めいた。
預言者のInesの力が込められた珠のネックレスだった。

写真 2020-12-05 2 27 53

そして、Inesが私に預言した言葉を思い出した。

”危険な目に遭う可能性がある。
ただし、そこで嬉しい発見がある。
周りの人との信頼関係は人一倍大事にしなさい。”


Danを含め、チームのみんなを
信じればよいということか…?

私は意を決して、力の限り叫んだ。
「Dan!!!」

Danは私の声に気が付いたようだった。
何かの光が窪みの中に差し込み、
他のチームメンバーの声も微かに聞こえた。

時折光が遮られ、
周りの岩が慎重に動かされているのがわかった。


皆の声がグッと近くなった。

大丈夫?
話せる?
ケガしてるの?
できるだけ屈んでいてね。
もうすぐ出れるからね。

声をかけてもらいながら、
私達は身を屈めて待っていた。


ついに私達の頭上にあった
大きな岩が退けられた。

チームの皆が飛ばした強い灯りが眩しかった。


「はぁ、良かった!」
Oliviaを抱きしめるAlexの目には涙が溜まっていた。
Oliviaは涙を流していた。

全員がホッと安堵した表情だった。

「M.ちゃんも怪我してない?」
Alexはそう言いながら私を抱き寄せた。

「Oliviaを励ましてくれてたのよね。
本当にありがとう。
あなたのおかげで2人とも助かったのよ。」

「Alexさん、ごめんなさい…
洞窟…勝手に入って。」

「いいのよ。本当に良かった。」


ふと横を見ると
大人2人が寝そべれそうなくらいの大きさの
ラグのようなものが2つ敷かれていた。

1つには
疲れてぐったりしているOliviaが横になっていた。

「M.ちゃん、ココに座ってくれ。出るぞ。」
Stuartが私に促した。

私も行くわ、とAlexがOliviaの傍に行くと、
Stuartが言った。

「Alex、この岩を片づけねえと。
2人には俺たちが付き添う。
キャプテンは最後まで現場を離れちゃなんねぇ。

Alexはハッとして頷いた。

「ありがとう。頼むわ。
片づけたらすぐ向かうわね。」



これが母としてのAlexと
キャプテンとしての使命
のおはなし。
続きはまた次回に。


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