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鑑賞ログ「春に散る」

230907

佐藤浩市と横浜流星が共演、瀬々敬久監督、原作は沢木耕太郎。やっぱり興味は持ちますよね。
で、山口智子が出てるのもポイント。

元ボクサーの仁一(佐藤浩市)が、ボクサー引退後にやっていたアメリカでの事業を引き払って日本に戻ってきた。翔吾(横浜流星)と居酒屋でたまたま居合わせ、仁一がチンピラをボクシングスタイルで撃退したことから、翔吾にボクシングを教えて欲しいと請われ、ボクサーを育てることになる、という話。

春から物語が始まり、タイトル通りになる。1年だけの凝縮された男同士の青春の物語であり、寓話のような物語。

仁一と翔吾、2人の物語ではあるけれど、周りの人の人生もいいバランスで描かれている。で、「ああ、この人はこの人で人生を歩いてきて、ここで交錯しているんだな」と感じる作品。特に山口智子演じる令子が、公園で話すシーン。
こういう作品の深さは、演出の力と役者の力がうまく噛み合った時にしか出ないもののように思う。
翔吾と橋本環奈演じるカナコの恋愛が始まるのか?いや観たくないなと思っていたら、いい塩梅で処理されてて好感。主題でないモチーフはこれぐらいの扱いでいいのだ。

佐藤浩市と瀬々監督は「楽園」ぶりかな。あれはちょっと温泉でのラブシーンきつかったけど、今回も佐藤浩市の入浴シーンあり。なぜか髪が濡れてない不思議笑。
湯船入る前に髪の毛って濡れるんじゃないの?というツッコミを一応しておく。

横浜流星は当初キラキラした感じの役が多かった気がするけど、こんな感じの役が似合う気がする。ちょっと影があるというか。「流浪の月」「インフォーマ」も良かった。
運動神経の良さから若さが滲み出る。それを見守る佐藤浩市、片岡鶴太郎、哀川翔。動いている姿が美しいな。首の太さも良い。あと、涙が超いいタイミングで流れる。あれ天然かなぁ。
橋本環奈も良い。あんなに常人離れした顔をしているのに、隣にいる感じが出せるってすごい。あとやっぱりハシカンはなで肩とちょっと太め(に見える)の足が武器だな。
あと、松浦慎一郎。もうこの人日本のボクシング映画のトレーナー独占してんじゃないかと思うぐらい全部出てる。「ケイコ、目を澄ませて」にも出てたし。遭遇率高すぎ。というか、印象に残りやすいんだろうな。今回はセリフも多くて出番たくさん。
坂東龍汰もいいよー。翔吾との試合シーンとか、二人とも横顔が綺麗で眼福。この横顔のシーンの対比を作るために、逆算して横浜流星の顔を汚したんじゃないかと思ったぐらい。
窪田正孝も出てるし、いい役者が揃っている作品だけれど、哀川翔の味も良かったな。ヤクザ映画以外で初めて観た気がする。お酒に溺れてるところから、急に目に輝きが入る感じとか、役者ってすごいなと思える。

ま、夏って言いながら生えている植物が全く夏の雰囲気じゃないのは気になったけど。でもタイトルに季節が入ってるから多分四季のテロップをわざわざ入れたかったんだろうし、短いけれど濃厚な時間、ということの演出のためにテロップを入れたんだとしたら、夏にシーンを撮るだけの予算がなかったのかな…邦画の悲しいところだな。作品を成立させるって難しいな。

終わりの方は臨場感たっぷり。
ヒットしないとジンクスがあると言われるボクシング映画。それでも作ったのはすごい。
横浜流星はこの作品でなんらかの賞を獲る気がするけど、どうなんでしょうか。期待だな。

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