見出し画像

鑑賞ログ「怪物」

230620


是枝監督作品は見観るべし。

息子が突然自分で髪を切った。急になぜ?息子はいじめられているのか?様子がおかしい息子を質すと、担任教師の息子に対する態度がおかしいようだ。靴も片方ないし、息子の周りで何かが起きている。しかし、学校に相談に行っても、校長をはじめとする教師たちは何かを隠しているようだし、永山瑛太演じる担任のホリに至っては開き直ったような態度で謝ってくる。しかも逆に息子がいじめをしていたと言い立つ始末。
何かがおかしい。そんな中、息子が行方不明になった。息子の周りで一体何が起こっているのかーという話。

自分が知っている息子に何か隠していることがあるのか。

思春期に差し掛かろうとする小学5年生と母親との関わり。ん〜不安だらけだろうな。母と息子でなく、父と娘にしても(「空白」がそんな作品だったな)。
自分の世界を持ちはじめた子どもは、親にとってはもはや自分の手のひらの中にはおらず、別の世界を見ていると頭ではわかっているものの、見えない壁にぶつかっているような気持ちだろうな。

小学校5年生の少年に起きた出来事が、母親、教師、息子の視点でなぞられ、全体像が描かれるという構成。
「羅生門」とか「最後の決闘裁判」と同じ構成ではあるけれど、本人の口から出来事は語られず、いわゆる神の目で3人の人物に焦点を当てながら出来事がなぞられることで、本人の目を通したバイアスがかかる余地がなく、観客はより真実に近づいていくという感覚を他の作品より強く感じるようにできていると思う。
ま、ドラマ「マイファミリー」でもそうやって観客を誘導していたような気がするし、最近結構多い印象の構成だから、それが素晴らしいのではなく、やっぱり描かれているものがいいんだと思う。

少年二人が美しい。
特に柊木陽太。この子「カムカムエヴリバディ」とか「PICU」のあの子か!「PICU」泣かされたわ〜。
ただ、あんなにエロティックに描かなくてもいいような気がして、ちょっと食傷気味。もっとカラッとしていてもいい気がするんだけれど。
そういえば「誰も知らない」の柳楽優弥もちょっとセクシーだったかも。
田中裕子演じる小学校の校長が俗物っぽさの中にどうしようもない後悔を感じさせてよかった。いい人とダメな人の境界にいるというか。両極端な部分を持っている人物で共感できる部分と、いやーないわーと思わせる部分を持つ人物。
是枝監督のミューズは樹木希林から田中裕子になるんだろうか。

物語の運びと、子どもたちを演じる俳優のキラキラ感と、安藤サクラ・永山瑛太・田中裕子の大人俳優たちの達者ぶりががっちりハマっている感じ。
角田晃広と黒田大輔と森岡龍も良かったよ。(個人的推し俳優の黒田大輔(「恋人たち」の黒田さんで号泣勢)も出てて嬉しかったけど、公式サイトに名前出てなくて残念。)
3つの要素がすばらしく化学反応している作品のように思う。

「怪物だーれだ?」誰が怪物なのか?と考えていくといっぱい怪物がいる。自分の息子、教師としての信頼。手の中にあると思っていたものが、指の間からこぼれ落ちていく…どうしてそうなっているのかを確認しようとしても闇の中で手が見えない、手のひらが見えないのは闇に怪物がいるから?それとも手の中のアレが怪物だったのか?

この記事が参加している募集

映画感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?