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ビジネス書評

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2015年11月の記事一覧

書評:『How Google Works』

シュミットやローゼンバーグあたりが中心に書いた本なんでしょうか。21世紀企業のマネジメントが前世紀組織と如何に違うのかを、私どもオジサン・オバサンに分かりやすく解説した一冊です。

本のキーワードは「スマートクリエイティブ」で、その解説がグダグダ書いてあります。「スマートクリエイティブ」を我々おっさんの為に、私が翻訳しますと「ニュータイプ」となります。

このニュータイプを前提にした組織は、今まで

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書評:『ザ・ラストマン』(川村隆)

日立製作所を危機から救った現みずほ銀行取締役である川村隆さんの本。きっちり固い人で、天才経営者じゃないので多くの人がまねをする対象にしてよい良い人だと思う。

書いてあることはとにかく、「当たり前のこと」ばかりで、「当たり前のことをきちんとやることが大事」と自覚して書かれている。かなりの読書の人らしく、バランスの取れた人格者で尊敬できる。

言っていることは、ポートフォリオ経営そのもの。「いらない

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書評:『物語論』(木村俊介)

木村氏の文章力はすごい。

何がすごいというと、インタビュー先によって、文章にむかつく人がいれば、共感を持てる人もいること。文章の人格が変わる。同じ人が書いているとは思えない。これほど、インタビュー先にあわせ、分かりやすい文章を書ける人は珍しい。しかも、同い年。書き手にこういう人がいることに関心した。

小説家や映画監督などなどの話を聞いて、その論を書いている本。文章がきれいなので、すらすら読める

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書評:『フランクリン自伝』(フランクリン)

この本を読むまで、恥ずかしながらベンジャミン・フランクリンは米国の大統領の一人だと思っていたのですが、実際は違います。様々な本の引用元になっているので、読んでみました。

有名どころだと、福沢諭吉先生こと、福沢諭吉の自伝『福翁自伝』が「この本の構成をパクっている」という話を、その本の解説に慶応義塾の教授が書いています(流石、評論)。本の内容が面白いんですね。

さて、フランクリンといえば、昔の印刷

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書評:『ビジョナリー・カンパニー―時代を超える生存の原則』(ジム・コリンズ)

1995年の本を2015年に読みました。20年も遅れてる・・・。

企業理念と一貫性が大事という話をしっかり書いているジム・コリンズに好感を持ちました。

「『ビジョナリーカンパニーは、方向性は様々だが、その企業の一貫性が必要』という主張は普遍的だ」と思うとともに、「人の人生も同じようなものかもな」と思いました。

ジム・コリンズの新しい本から読んでいるところもあるのですが、著書の前と後ろが矛盾せ

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書評:『ビジョナリー・カンパニー2 ― good to great』(ジム・コリンズ)

これで、『ビジョナリー・カンパニー』の1−4まで読んだので、現時点の全部を読んだと思いますが、その中で一番好きな本です。

私が好きなのは、「第5水準のリーダーシップ」です(過去、ハーバードビジネスレビューで過去読んでいたはずで、印象が残っているけど探せないでいる記事がありました。それは「良い会社を作る要因は属人的なものではない、CEOというスーパーマンの存在じゃないと思って調べていたら、大事なの

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書評:『孫子』(金谷 治 訳注)

私の中で戦略と言えば『孫子』なのですが、岩波文庫のこの『孫子』が一番好きです。著者は、孫武か孫臏か曹操なのか不明のようですが、この本が多くの版がある『孫子』をよく纏めている名著と思います。

冒頭の計編第一の最初「兵とは国の大事なり」から始まる一節が一番好きです。どういうことが書いてあるかというと、

「戦争とは国家の大事である。お金もかかるし、人民の負担も大きいし。だから、迂闊に始めず慎重にやろ

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書評:『英語ライティングルールブック 第2版』(デイヴィッド・セイン)

最近、英語を読む事は多くなり、それなりに読めるようになったし、ウェブでビデオを視聴しても分かるような気がする。だけれども、emailする時には、単語を迷ったりするので、Writingを鍛えようと本を探して、読んでみました。

考えてみれば、「ビジネス英語を書く」という訓練を私はしていないので、知らない事だらけ。

例えば、":"の先には詳細を書く。";"は並列な文章をつなぐ時に使うなど知らなかった

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書評:『天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災』 (磯田道史)

この本では、津波が来たらどうするのかを歴史から学んでいる。古いお寺やお墓があるところは津波から間逃れたところで、鳥居があるのは「ココまで津波が来たよ」というところも多いのだとか。

お盆に、嫁の祖父のお墓参りをした。日本海に夕日が見えるきれいな高台にあった。アプリで計ると、海抜18mとのことだった。

「瓦屋根は地震で落ちるようになっていて、それは、耐震性を上げるための工夫である」など、私は知らな

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書評:『武士の家計簿』(磯田 道史)

この本は、江戸末期から明治維新というパラダイムシフトの中で、江戸時代の貧乏士族がどう生きたのかを、家計簿から鮮明に描いていて、面白い。私の先祖は貧乏武士で、嫁は多分違うので、習慣の違いのルーツが分かって、自分の理解に役に立ちました。

武家では親戚付き合いをたくさんします。武士の給料は由緒で決まって実力で決まらない。家柄と少々の年功序列で、仕事が増えても給与はあまり上がりません(高給は基本ご先祖様

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書評:『生命の星の条件を探る』 (阿部 豊)

NHKのニュースを見て買った本。
(教養の部類に入るので、ビジネスとは直接関係ありませんが)

ALSの東大教授さんとその奥さんが書いた本。長男が地球の起源を気にするので、読んでみた。高校レベルの科学をちゃんと理解していると、地球と宇宙と生命の理解が深まり、楽しめる(人類が地球で10億年後に生きる事は不可能なんですね、知らなかった)。

「生命の材料は水が最適」
「二酸化炭素のバランスをとる仕組み

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書評:『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』(マイケル ピルズベリー)

森本敏さんの解説を借りれば「本書は米国における中国専門家として著名であるばかりでなく、米国政府の対中政策に最も深く関わってきたマイケル・プルズベリー博士の中国論である」。日米安保が騒がれる世の中なので、米中関係の理解を深めようと読んでみました。

内容は、「ソ連に対抗するために、米国は30年間ほど中国に対して、マヌケな外交政策をとってしまいました。結果、中国が米国の金銭援助や技術を盗み放題で、超大

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書評:『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(佐藤 優)

佐藤優さんは良く知らなかったのだけど、インチキな人ではなさそうなことがよく分かった。「国際情勢の理解には為になるので面白い本ではあるが、気持ちのよい本ではない」と思った。

佐藤さんは外務省で主にロシア関係の諜報をやっていた人らしく、鈴木宗男議員と一緒にソ連外交をしていた。ある日、政争に巻き込まれて、国策捜査で捕まって500日以上留置所に入れられる。検察の国策捜査をよく描写されており、「国策捜査と

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書評:『日本人が知らない「アジア核戦争」の危機 中国、北朝鮮、ロシア、アメリカはこう動く』(日高 義樹)

前作『中国破れたり』で書いた通り、「通常戦力において、中国は米国に負けた」ので、「それを悟った中国は、核兵器を戦術的に使おうとしていて、危険。安倍政権の日米安保はそれに対応できていない」というのが要旨です。

米ソの時代は、戦略的核兵器、分かりやすく言うと、「核のボタンを押したら地球を破滅すると」いう前提が米ソともにあり、「核兵器は使えない」ものであった。だから、米ソに抑止力が効いていた。

しか

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