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お菓子の箱の中

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しまっておく。 ほかのひとの。
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2018年1月の記事一覧

星と飛行機

星と飛行機

「あっ、あぶない!」

しずくは、顔をそむけました。

しかし、しばらくしても、何も起こりません。

しずくは、おそるおそる再び夜空を見上げました。

夜空は、平和そのもので、しんと静まり返っています。

しずくの隣には、おじさんがいました。おじさんは、お母さんの弟です。

「おじさん、ずっと空見てた?」

しずくは、聞きました。

「あぁ、見てたよ」

おじさんは、夜空から目をそ

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壮大な遊び場だと思うようになっていた

壮大な遊び場だと思うようになっていた

『人生は壮大な遊び場』

そう考えるに至ったのが一年前ほどの前のこと
楽しくも、苦しくも、総括してみれば
壮大な遊び場で、人生劇場を演じ切ることができるのかどうか
ということなんだろうな、そんな気がした

考えてみれば、昔から父がそう言ってきたはず
それに気が付いたのが一年前だ、遅いな

割と最近のある夜
生きていれば
そりゃいろんなことが降りかかってくるから
苦しくて辛くて
どうにもならなくて布

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1月 木の枝 石ころ 道の終わり

その日は霧みたいな粒子の細かい雨が朝からずっと降っていた。窓を開けて目を凝らしてみてようやく降っていることがわかるような、そのくらい細かくて静かな雨が絶えずずっと。

特に予定のない暇な週末だった。寒いし雨も降っているから、私は出かけたくなくて、ずっと布団の中で本を読んでいた。途中で眠たくなったら目をつむって寝て、目が覚めたらまた続きを読んだ。

最後に目を覚ましたとき、日は暮れていて夜になってい

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センター試験を受験している4年前の自分への手紙

センター試験を受験している4年前の自分への手紙

2014年の1月、19歳の菜々へ

4年後の私です。23歳になりました。センター試験1日目、お疲れ様です。私の記憶が正しければ、浪人の年のセンター前日に38度の熱が上がって、絶望感の中受験しましたね。薬で熱は下がってるものの、なぜか寒い恰好をして、なぜか教室は暖房もつかなくて、隣の席の人は貧乏ゆすりが激しくて、なんだか不調の中受験しましたね。

点数はギリギリだけれど、勇気を出して第一志望の千葉大

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あの本を読んだ場所

あの本を読んだ場所

人の記憶というのはおかしなもので、「絶対に忘れたくない」と思ったことをあっさりと忘れてしまったり、特別でも何でもないと思っていたことを、なぜか忘れることができなかったりする。

たとえば、とある本を読んだ場所。

それがもうどこにあったかも思い出せないのに、本を読み終えたその場所の様子が、もう10年以上がたつ今になっても、昨日のことのようによみがえる。

それは、どこかの駅構内にあるコーヒーショッ

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