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第12回 『如何様』 高山羽根子著

JUNBUN太郎

 こんばんは、JUNBUN太郎です!

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 今夜も「読書はコスパ最高のコスプレです」のお時間がやってきました。本は自分以外の人間になりきる最も安あがりな道具。この番組では、リスナーのみなさんから寄せられる、読書体験ならぬコスプレ体験を、毎週ひとつご紹介していきます。
 ではさっそくリスナーからのお便りをご紹介しましょう。
 ラジオネーム、怒髪天使さん。

 JUNBUN太郎さん、こんばんは。
 ワタシは、就活中の文系大学生です。文系だからって、小説なんて実際ぜんぜん読みませんよ? そういうの期待しないでください。ここ最近の愛読書といえば、面接攻略本と、必勝SPIテキストと、好感度アップマニュアルでしょうか。つまりまだ何者でもない学生が何様?なんて面接官に嫌われないように将来有望な人材になりすますための本ですよ。まあ、いまいまの時点でまったく役に立ってませんけど。

 人事担当者には今後の活躍を祈られるばっかりで、内定なんてひとつも出ない。笑ってしまいますよ、祈られるワタシって神か?って。ほとほと疲れました。それでも書類選考がひとつ通ったから、次の面接に備えて業界研究しなきゃいけなくて、泣き笑いで行きましたよ、本屋に。就活本コーナーからレジの間に文芸コーナーがあって通りかかると、塗りつぶされた誰かわからない顔が描かれた表紙のタイトルに目がとまりました。

『如何様』?

 貴様はワタシに喧嘩売ってるんですか? そうですよ、ワタシは如何様ですよ。御社に入社したあかつきには、こんなことをしたいあんなことをしたいって思ってもいない夢並べ立てて、結局は偽物だって見抜かれて、祈られて終わるっていう、ダメダメな如何様師ですよ。でもね、内定もってる連中だって嘘で塗り固められた如何様なんですよ。奴らが本物なんかであるはずがない。
 ちょうどよかった、結果の出ないハウツー本に飽き飽きしてたところなんです、あなたを読破してやりますよ。読むからには、支払ったお金に見合う価値、提供してくれるんでしょうね。
 読むとワタシは恋に落ちていました。

 戦争から戻った男が本物かどうかをさぐる女性記者の取材の日々を綴った物語『如何様』をまだ読んでないというリスナーの方は、ぜひ読んでから、続きをお楽しみください! 

 

 戦争から復員した貫一が本物か偽物か、結局はわからない。白黒つけたかったはずの依頼者の榎田も自分で調査を打ち切ってしまうし、記者であるわたしもそれ以上追及しようとはしない。読んでいたワタシも、初めはそれを知りたかったはずなのに、いつの間にかどうでもよくなっていました。
 だって、妻である以上、どうでもよくないはずのタエさんがまったく頓着していないんだもん。なんて柔軟で、おおらかで、強いひとなんだろう。タエさんが好きすぎます! 付け髭をつけて踊るところなんか最高。あーワタシも思いっきり踊りたいって思いました。というかワタシはこの本を読みながら「わたし」としてタエさんと一緒に踊っていました。

「本物と偽物になんの違いがあるというのか」
 改めて本を見ると、帯にそう書いてあるんです。
 考えさせられました。
 本物と偽物を書類1枚と1回きりの面接だけで選り分けようとする企業のことが、ワタシは腹立たしかったけれど、そういうことではないのかもしれない。
 それにもうひとつ気がついたんです。ワタシの方こそ、狭い考えでその企業が本物か偽物かのふるいにかけていたってことに。ワタシがこれまで就職を望んだ企業はどれも業界三番手以内の大手ばかりでした。それがワタシが勝手につくった“本物”の企業の基準だったのだと思います。それって、学歴だけで応募者を判断する企業と変わらないですよね? 書類なんてどうでもいい、いま目の前にある肉体を、実体をそのまま受け入れて生きていくタエさんのように、ワタシも結婚、いや、まずは就職したいって思います。

 で、新たに申し込んだ、決して規模は大きくないけれど、知れば知るほど惹かれるようになった企業の試験をパスして、今度、いよいよ面接なんです! ワタシなりに素直に想いをぶつけてこようと思います。
 太郎さん、どうか祈っててください。

 怒髪天使さん、どうもありがとう!
 『如何様』ぼくも大好きです!タエさん、ほんとに素敵だよね。そんな素敵なタエさんから、最後に丘のうえで貫一に似てるって言われて、再会できて嬉しいって言われて、ぼくだったらキュン死しています!笑
 読書って、本の中のひとを好きになれるっていうのも魅力のひとつですよね。ぼくの場合はひとっていうよりも、猫が多いのだけれど……。
 怒髪天使さんがこの本と出会えたように、いい就職先と出会えることを心の底から祈ってます!!

 また来週!

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