聖なる夜の、切なる願い。【#才の祭小説】
「あの2人、結婚したんだってー。」
仕事から帰って来たキミにそう語りかけるも、「そうなんだー」と気の抜けた返事しか帰ってこなかった。
最近、"結婚"の話を出すと明らかにキミの顔がこわばる。
会社でもプライベートでも、口を開けば「結婚はいつだ」と聞かれるよ、と自嘲気味に話していた。
キミは、わたしと結婚したくないのだろうか。
結婚しようね、と冗談めかして言えば、そうだね、と私の頭を撫でる。
だけど、それだけでは私の心は満たされなかった。
安心が欲しい。確実が欲しい。
それでもキミは皮肉のように、「クリスマスプレゼント、何が欲しい?」なんて聞いてくる。
ねぇ、そうじゃないんだよ。
私は約束が欲しいの。
あなたのものだっていう、約束をちょうだい?
私の願いなんて気にもせずに、キミは大して面白くもなさそうにテレビを眺めてる。
私の薬指は、いつキミのものになるのだろうか。
ホリデーシーズンにもなり、色めき立つ街を見ていると焦燥感が更に増していく。
いつまで待てばいいのかな。
私達、付き合って5年だよ。
もうすぐ、30歳になっちゃうんだよ。
サンタさん、お願いです。
私に彼をください。
その祈りは、営みが消えた夜空に静かに消えていった。
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