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散らかった部屋は創造性を高める

部屋が片付いているかいないかで創造性が変わるという趣旨の論文を読んだのでメモ(1)。

これまでの創造性の研究を見てみると,場所や行動が創造性を高め,いままでにない新しいアイデアの創出を可能性にすることが分かっています。

・落書きをすると創造性が高まる(2
・少し暗い場所では独創的な考えがしやすい(3
・大きな動きは創造的な思考を促進する(4

今回紹介する論文は部屋が片付いていないと創造性が高まり,独創的なアイデアが浮かびやすくなることを教えてくれます。

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2013年にミネソタ大学のケースリン・ボフらが部屋の散らかり具合が創造性に与える影響について調べるために実験を行いました。

実験の対象になったのは大学生48名でした。

実験参加者はランダムに2つのグループに分けられ,創造性を測るAUT(製品の別の使い方を考える課題)をしてもらいました。その2つのグループの違いは部屋の状況にありました。

<グループ1>
片付いている部屋

<グループ2>
散らかっている部屋

そして別の実験参加者を雇い,実験参加者の行なったAUTの回答が創造的であるかの評価をしてもらいました。

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実験の結果,散らかった部屋で課題に取り組んだ場合の回答が片付いている部屋で取り組んだ場合の回答よりも創造的であると評価された。

過去の研究では片付いた部屋は伝統や慣習によって正しいことと定義づけれられる,利他的行動などの倫理的に良い行動との間に関連があり,社会的に望まれる行動を促進することが分かっています(56)。

今回の結果は片付いた部屋と伝統や慣習との間に関連があるのであれば,散らかった部屋は昔から良しとされる考えとは違う革新や異例など制約のない概念との間に関連があり(7),創造性を刺激した可能性が考えられます(拡散的思考,8)。

散らかった部屋は創造性を高めるというプラスの効果を発揮する反面,マイナスの影響も持っています。

この論文では別の実験として,部屋の綺麗さが①健康的な食事の選択,②利他的な行動とどう関係が合うのかを調べています。その結果,散らかった部屋は片付いた部屋と比較して不健康な食事を選択するようになり,利他的行動を取りにくくすることが分かっています。

この結果から考えると,創造的思考をするときは散らかった部屋でするなどのように取り組む作業によって部屋を変えると部屋の散らかり具合が思考に与える両側面のメリットを受けられます。

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(1)Vohs, K. D., Redden, J. P., & Rahinel, R. (2013). Physical order produces healthy choices, generosity, and conventionality, whereas disorder produces creativity. Psychological Science, 24(9), 1860-1867.

(2)Kaimal, G., Ayaz, H., Herres, J., DieterichHartwell, R., Makwana, B., Kaiser, D. H., & Nasser, J. A. (2017). Functional nearinfrared spectroscopy assessment of reward perception based on visual selfexpression: Coloring, doodling, and free drawing. The Arts in Psychotherapy, 55, 85-92.

(3)Stokes, P. D. (2005). Creativity from constraints: The psychology of breakthrough. Springer Publishing Company.

(4)Murali, S., & Händel, B. (2022). Motor restrictions impair divergent thinking during walking and during sitting. Psychological research, 1-14.

(5)Liljenquist, K., Zhong, C.-B., & Galinsky, A. D. (2010). The
smell of virtue: Clean scents promote reciprocity and charity. Psychological Science, 21, 381–383.

(6)Mazar, N., & Zhong, C.-B. (2010). Do green products make us
better people? Psychological Science, 21, 494–498.

(7)Feather, N. T. (1971). Organization and discrepancy in cognitive structures. Psychological Review, 78, 355–379

(8)Guilford, J.P. (1959) Traits of Creativity. In: Anderson, H.H., Ed., Creativity and Its Cultivation, Harper & Row, New York, 142-161.

■CREATIVE SCHOOLS―創造性が育つ世界最先端の教育/ケン・ロビンソン (著), ルー・アロニカ (著), 岩木 貴子 (翻訳)

■NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方/フローレンス・ウィリアムズ  (著), 栗木 さつき (翻訳), 森嶋 マリ (翻訳)

■多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織/マシュー・サイド  (著)

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