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101.秋のこと

秋の気配

台風一過、翌日は朝から涼しい風が吹き始めた。今年の夏は酷暑だったこともあり、急な秋の気配の訪れを感じ、途端に気が抜けてしまった。台風と一緒に夏も連れ去ってくれたようだ。

「夏が終わった」ことに気が付くと、心の底からほっとするのは毎年のことで、今年もそれを迎えることができた。来る厳しい冬を間近に、彩り美しい秋をどのように過ごそうか。山奥の動物たちが冬眠に備えて木の実を備蓄するように、秋は私たちなりにも何かを蓄える季節だと思う。蓄えたものと共に冬を越し、きっと春に開花する。

秋は準備期間、スタート前の少しだけ穏やかな時間。
だからなんとなく、毎年この秋がやってくると、ほっとするんだなぁ。

芸術の秋

ひょんなことから、「オーブン陶土」というものに出会った。
最近ではオーブン陶土を使用したかわいらしい作品を展開されている、アルパカの兄弟さんという作家さんも有名だ。

学生の頃、どの科目よりも美術の授業が好きだった。
絵でも、版画でも、彫刻でも、粘土でも、自分が納得いくまで作業を続けたくて、作業が遅れているから補習です、と部活に嘘をついては美術室に通っていたこともある。

大人になって、創作に触れることが激減した。
「自分にはできない」と思い込んで、目を逸らしていた節もあるかもしれない。もちろん、文章を書くことは芸術=創作のひとつであるけれど、ジャンルの異なるアートと遠ざかっているような気がしていた。

ちょっと仕事に疲れて、ふぅ、となっていた頃、冒頭で触れたアルパカの兄弟さんという作家さんのYoutubeから創作動画を拝見し、瞬く間に「うわぁ、楽しそう!」と感じた。

自分も手を動かしたく居ても立っても居られなくなり、100円ショップへ急ぎ、まずは練習ということで粘土を買ってみた。

十数年ぶりに触れる粘土はひんやりと冷たく、かすかに泥のような土のような、生温かい懐かしい匂いがした。ひねれば伸びる、潰せば平たくなった。技術うんぬんは抜きにして、自分の手の中で思い通りになる物体が愛おしくて仕方なく、頭を空っぽにしながら造形に没頭することができた。

人間の生活には、交流とか芸術とか、文化的ないろいろが大切なんだと感じた。ちょっと貴重なことに気付けた気がする。

秋の味覚について

実りの秋は、美味しいものに溢れてる。
さつまいも、栗、かぼちゃ、葡萄、柿、きのこ、秋刀魚、肌寒くなってきたら鍋、おでん、シチュー。どんな食材も厳しい夏を乗り越えて、私たちの命を繋ぐためここにやってきてくれた、宝物のようなそれぞれ。素材そのものの滋味深い味わいは、食材の記憶として生きているのかもしれない。

義実家の野菜畑からさつまいも収穫のお裾分けを貰うと、まず炊飯器でほくほくに蒸したものをいただく。次に、スイートポテトや大学芋、レモンと一緒に甘露煮にしたりする。それでも何本か余ると、炊飯器で蒸したさつまいもを縦に削いで、専用のネットに入れてからベランダで乾かして干し芋を作る。

干し野菜は乾燥と同時に野菜の栄養がぎゅっと凝縮されるので、通常の味よりも濃いものになる。人参や大根、ごぼうは味噌汁に入れて楽しむ。干し芋は、オーブンで軽く炙ってから食べるととても美味しい。

素材そのものに一手間加えることで、より美味しいものをいただける。
そんな手仕事が楽しいのが、秋。

冬支度をはじめる

10月に入り、ぐっと気温が下がった。
朝晩は靴下を履いてなにかを羽織らないと、すぐに身体が冷えてしまう。夏の間はすっかり忘れてたのに、自分はちゃんと冷え性だったと思い出す。

涼しくなって気持ちがいいのは、早朝に部屋の空気を入れ替える時。
寝ている間にこもっていた空気がすぅ、っと出ていき、ひんやりと新鮮な空気が部屋に入ってくる瞬間がたまらなく好き。

ある休日、これまた更に気温が下がる日があった。
部屋の湿度計は60%を下回り、なんとなく頬のあたりに乾燥を感じる。梅雨前に鬱陶しくなり片付けた加湿器を出してきた。今年の秋冬も頼みます、とすがるように洗い、空気の綺麗にしてくれるというユーカリのアロマオイルを落としてスイッチを入れた。

加湿器のこぽこぽ、という音を聞いていたら、いよいよ冬がやってきたような気がしてきて、ちょっと早いような気がしたけど、ホットカーペットを敷いた。勢い増して、簡単な衣替えもする。更に夜には温泉の素を入れてゆっくりお風呂に入り、すっきりした気持ちにもなった。

まだ少し暑い日がやってくるようだけど、我が家の冬支度はすっかり進んでしまった。

おわり

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