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被写体深度

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カメラマンと少女のお話の 予定
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被写体深度 20(end)

《2020年5月 アデル》

『一緒に生き直したい。受け入れてくれるなら、待っててくれ。』

短い手紙……
嬉しかった。
良かった。私の感情に気が付いていてくれて。あの夜……ドアに感情を投げつけて。

そして今は…幸せよ。

もう何処にも行けないものね。
私の知らない所で、遠くに逝っちゃう
そんな、不安もない。
静かに笑顔で、車椅子に座る「アナタ」
最近、

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被写体深度 19

《2020年 4月 山茶花》

「どうも〜。今度さ寄席、見に来てよ。ふたつめになってからから、一度も来てないじゃないの。店なんて、看板出してさ~…」

青い目の噺家さん。いつものように、「店長見習い」のミヤにちょっかい出している。
この人"春風亭あっ!乱"なんて、ふざけた名前貰って、喜んでる変わりアメリカ人。黙ってスーツ着てれば、モデルと思えるルックスしてるのに、いつも和服の変な外人さ

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被写体深度 18の補足

実際は、ニコンD1は1991年発ですが、
ココで、プレス機として登場させました。

1988年には、F3の改造した130万画素のデジカメが、戦場で使われていたそうです。

フィルム〜デジタルの事が、書きたかったのです。
お話ですから。ね~許されて〜
。・゚・(ノ∀`)・゚・。

被写体深度 18

《1988年 6月》

何で、笑っていられる?
お前は明日から、人殺しの教育受けるんだぞ。敵軍から見れば、ルーキーとか古株とか、関係なく、マトになるんだぞ。

……………………………………………

街で、小さな花売り娘に、アランと共にナンパされた。家族の集合写真撮ってくれって、握り締めすぎた硬貨が、暖かかった。

つい、良いよと言って、キャンプにアランのクソ重い(ニコン D1)を取りに

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被写体深度 017

《2020年5月》

「お母さん。わたし貴女の娘だよね。」

洗い物手伝いながら、笑顔の仮面を外して、最初で最後のつもりで質問をした。
完璧な答えなんて求めてない。狼狽えて貰いたい…一緒に考えて貰いたい。同じ時間を過ごしたい。
あの写真集の最後、タダのにこやかに笑う家族の集合写真…小さな字で(この世で最も残酷な写真)って書いてあった。
真ん中に若い男性。制服?…作業着?

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被写体深度 16

《15より》

「ああ。ひねれば水が出るし、青い火も直ぐ点く。」

キラキラした目で、私を見てる。よく見れば可愛い男の子?小学校3、4年生位か…AK抱いて無きゃ、即席牢に入れられて無きゃ、頭グリグリして遊び倒したくなる様な…

「良いなー。洗濯も箱の中に入れれば、全部やってくれるって本当か?箱の中から"チーン"って音すると、食べ物が出てくるって、本当か?学校って所に行くと、ご飯が出て、

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被写体深度 15

《2020年 5月》
普通の街の写真?
道端に座ってたり、服の裾引っ張ってたり、花売ってたり……小学校低学年位の子供達。
その画面の左端に、花束が1つ……

また最初から、肉片かと思いきや?

戦争孤児。男は、貧しさから17、8歳になると軍に入る……結局貧乏が悪い?あんまり内戦が長いと、人材も疲弊するんだ〜と思う。
それはそれで、背骨から冷える様な怖さがある。教育とか文化と

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被写体深度 14

《13より》
そうか。オレに愛情向ける奴は、いないんだ。1人か……初めからそうだから、別に良いんだけど、このババアと戸籍上の父には、仕返ししないとな。

この日から、"お祖母ちゃん"でなく、心の中では"ババア"と認識する。元々テメーの息子がここに連れてきたんだろ?テメーの息子には甘くて、孫に依存するって変だろ?

ココから心を閉ざす。笑顔の仮面を被る。
無条件に注がれる愛を知らない

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被写体深度 13

《12より》

「他人様に、迷惑がよ。払っておけばよ。」
他人様…良く言ってたな。

3年仕事が続かない男。それがオレの父だった。
父は、"子供が好き"な大人だった。
よく遊んだ。"子供"と遊ぶのが好きだったのだろう。多分父親の自覚は、これっぽっちもなかったと思う。
怒られも、殴られも、泣いたり、ハグしたりが全くない。いつもニコニコ遊ぶだけ。

記憶には、母の顔はない。

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被写体深度 12

《11より》

「オヤジ!オヤジ!!」
「落ち着け。コレは爆弾テロだ。あと1、2ヶ所…遮蔽物になりそうな車とか、建物の内側とかまだあるはず。銃を持った歩兵が制圧しに来る訳じゃない。ここで、伏せてるんだ!」

ドウン!ズッパーン!
ドウン!バーン
ギャー キャー ワー

「オヤジ!オヤジ!! フグっ…」
「わかってんだろ!"外人さん"ってだけで、捕まると面倒くさい事ぐらい。まずキャ

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被写界深度 11

《1988年 5月》
ちょっと栄えてる街に、オヤジとアランの3人で出てきた。写真屋の暗室を、借りるため。
正規軍の暗室使わせてもらった時、イヤな監視の目があったので、オヤジに紹介してもらって。午前中の半日アランと折半、アシスタントにオヤジ…豪華な顔ぶれだ。色気も何もあったもんじゃない。

「色気〜欲しいのなら、5キロの塩で、一晩年頃の女買えるよ。」
「前にも言っただろ?アラン。オレは、そのた

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被写界深度 10

感性も似ている。
沢山の本の中から写真集…しかも、エグい戦場の。みさきから聞いた話、ここ2年は図書室で、眺める人はいるけど、借りて行ったのは私とみさきだけらしい。
カメラマンの風景の切り取り方、人物だと表情の切り取り方は、個性が出る所だそうだ。私には聖川克樹が、響いてしまった。どうして?

「どうしようもない実態を、クールに撮れてると思うのです。上から目線?突き放してるというか、どーでもいい

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被写界深度 09

《2020年4月》
今日も今日とて、イイコ演じてる。
最近は、スマホに手が伸びる回数が減っている。
原因はこの子?
戸籍上は男。ハートは女の子。で、可愛い女の子が恋愛対象という、複雑な"森川みさき"先輩のせいだ。

図書室の住人。職員のボランティアしながら、司書を取る気らしい。ついでに大学6年生……
「みーずき、今日もパフェいこーよー♥」
気に入られたらしい。
まあ、パッと見は男の

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被写界深度 08

《07から》
「オー!カミカゼー。まーた あえったにょー。アホ!!」

頭の痛い日本語……
コイツもいるのかよ!
わざわざ、日本語で喋るな。英語と仏語は話せるって。アラン!あだ名は…

「オイラの事ねターキーと呼ぶべきでゴザル。まーたーKaraokeいくねー。
きょうとーにいるとっきゃー!大竹とよぶべきねん!♬」

頭痛い………

「どうした?何処か痛い?ネギどこ?日本人オシリにネ

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