被写体深度 18

《1988年 6月》

何で、笑っていられる?
お前は明日から、人殺しの教育受けるんだぞ。敵軍から見れば、ルーキーとか古株とか、関係なく、マトになるんだぞ。

……………………………………………

街で、小さな花売り娘に、アランと共にナンパされた。家族の集合写真撮ってくれって、握り締めすぎた硬貨が、暖かかった。

つい、良いよと言って、キャンプにアランのクソ重い(ニコン D1)を取りに帰る。コレならすぐプリントして渡せる。

デジタルカメラは、戦場では、マダマダ取り回し悪いし、電池持たないし、絵は、ノッペリしてて奥行き無いし……でも、ネットのスピード上がって、画素子の質が上がって、軽くて長持ちの電池が出来れば、間違いなくデジカメがメインになるだろう。

って事は、カメラマンはなくなるかも。画像すぐ見れたり、パソコンで編集出来るんだから。フォトグラファー、とかクリエータになるんだろうな。


「カメラのおじちゃん?良いよ。写真撮って。」

婆さん。爺さん。母ちゃん。男の子1人。女の子花売りを混ぜて2人。で、真ん中に笑顔の新兵…

「やっと17歳になったんです。父が戦闘で死んでから、我が家の食料の配給が減ったのです。これで、私も食べられ、家族にも優先的に配給されます。」

綺麗な、ケレン味の無い、これまでに見たことも無い、透明な笑顔。自分の命晒して得られる報酬が、配給の優先権かよ!

オレの母国では、ハンバーガー半分食って捨ててあったり、ペットボトルの飲みかけジュースが、電車の中であっち行ったり、こっち行ったり。
蛇口を捻れば、安全な水が出る。

俺から見りゃ、おまえ高校生だろ?まだ、親に甘えて突っかかってる、アホみたいなガキだよ。

貧しいだけで、こうも人は、選択肢が減るのかよ。
オレもだよ。平和ボケのボンボンだよ。殺してくれなんて、こんな背景解ったら、言えねーじゃん。恥ずかしくて。

「撮るぞ!笑え!すまーいる。」
パシャ
オレ、生きていても
良いのかな。

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「ダンナ。いい仕事出来たかい?」
地面が観察出来る、70系ランクル。又AK握った無口な男が、助手席に座っている。ガラスまだ入ってね~な。

帰ろう。パリへ…
素直にアデルの元に、帰ろう
あそこから、人としてやり直そう。

「ダンナ!手上げてください」
あれ?川じゃない?
げっ!ガバメントがこっち向いてる。
ドン ドン!

……………………………

「ふん、人の家の汚ねー所で、金稼ぎやがって。油断したな。街についてから金くれれば良かったのにな。
"荷物運び"、燃料が勿体無いからな。カメラも売り飛ばしてやる。」
薄れゆく意識の片隅で、聞こえていた最後の言葉。
シクッタなぁ~

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