被写界深度 10

感性も似ている。
沢山の本の中から写真集…しかも、エグい戦場の。みさきから聞いた話、ここ2年は図書室で、眺める人はいるけど、借りて行ったのは私とみさきだけらしい。
カメラマンの風景の切り取り方、人物だと表情の切り取り方は、個性が出る所だそうだ。私には聖川克樹が、響いてしまった。どうして?

「どうしようもない実態を、クールに撮れてると思うのです。上から目線?突き放してるというか、どーでもいいやって……」
つい本の感想を、みさきにしてしまう。初めてだ。

「そっか。まだ2冊目見てないんだっけ。変わるよ。何があったか知らないけど。」

どす。 カチャカチャ

来たよムサシ。お客の前で、メジャーで計って見せて、ガッツポーズしてるし。取皿と常温コーヒーも。

「楽しんでって。」
ミヤに、笑顔と共に言葉を貰う。アミューズメントパフェだよね~これ。

「作風かわるの?」
上から崩さないように、皿に小分けする私。みさきに任せると………ねえ。

「言ったらつまんないでしょ?てかさ、みーずきはワクワクして読んだ本有るの?みーずきの速読術、ハンディスキャナーみたい。ボクが感動した本の中のセリフ、テンション高めにしゃべってるとさ、《それ、1✗✗ページの、✗✗行目。○○のセリフだよ。》なんてスラーっというし。」

そう、ワクワク感はない。みさきと友達になって、先の見えない事は面白い!とは思える様になってきてはいますが、人の作ったストーリーは、何千と覚えていると、読めちゃうんだ。
先の読めない天然ボケのみさきは、とっても飽きなくて嬉しい。あと、あの写真集も。

「しょうがないのです。見たまま覚えちゃえるんだもの。」
「みーずきと、映画行くとうっさいし。セリフが、ニュアンスが違うって、大久保利通みたいな奴だ!」
ブーっと口の物が飛び出る。全部出し切れなくて、息を吸った時に、気管に入って苦しい。
5秒後…ゲホゲホ言いながら、肺に酸素が入ってくる。
「ナニナニ?どうしたの?」
「この人殺し!映画コメンテーターなら、森久保祥太郎だろ!ほんとに死ぬかと思った。」
「ボクのせい?」
「何で私とみさきで映画見に行って、その映画の批評を、維新三傑の1人がするの?"久保"しか合ってないじゃん!」
「ボクも知らないって。そう思ったんだから。」

このボケは、予測出来ない。

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